
(37)「見ていただいている方たちに小さくてもできるということを伝えたい」石田吉平 五輪代表内定インタビュー
開催が間近に迫った東京五輪。今回はチームの最年少として7人制ラグビー男子日本代表に選出された石田吉平(文3=常翔学園)にインタビューを行った。「プレッシャーをパワーに変える」。東京五輪への思いや決意を伺った。(この取材は6月22日に行われたものです)
――五輪代表おめでとうございます。今の実感としてはいかがですか。
「結構プレッシャーがかかっていた1ヶ月だったので今はとてもホッとしています。緊張もありますが、選ばれた分責任感もあります。選ばれなかった選手たちにもしっかりと任せてもらえるように頑張らなければいけないと思っています」
――五輪代表が決まってから連絡はありましたか。
「みんなから『おめでとう』という連絡をたくさん頂きました。(印象的な連絡は)高校時代の監督です。高校時代は怖かったですが(笑)報告をした時に『良かったな』と言ってもらえてすごくうれしかったです」
――五輪代表に選ばれて、一番感謝している人はいますか。
「キヨさん(田中澄憲元監督)です。入学した時からオリンピックを視野に入れていたので、明治の練習や試合に出られないこともありました。その中でも練習の面倒を見てくれて、何不自由ないようにサポートしてくださりました。『体調大丈夫か』と気にしてくださったりもしました。明治の練習に出られないときも話をしてくださったり、聞いてくださったので、とても支えられました」
――自分が代表に選ばれた理由はどこにあると思いますか。
「自分は一番若いので、元気というか体力ではないのですが、その部分で一番エネルギッシュだと思いますし、あとはステップだと思います」
――五輪に出たいと思ったのはいつごろですか。
「高校3年次にワールドセブンズシリーズの日本代表に選んでいただきました。当時の監督に『今オリンピックを目指すことができる位置にいる』ということを言っていただいて、東京五輪なんて絶対無理と思っていたのですが、目指せる位置にいるならやってみようと思いました」
――当時の自分に声を掛けられるとしたらどう声を掛けたいですか。
「そのまま目標を見失わずに頑張ってきたら目標を達成できたよって伝えてあげたいです(笑)」
――7人制ラグビーを始めたきっかけを教えてください。
「僕が高校2年次の春くらいにセブンズのユースのアカデミーに呼ばれた時が初めてだったと思います。各地から7人制の素質のある子が呼ばれる練習会みたいなものなのですが、それがきっかけでした」
――15人制との違いと7人制の魅力を教えてください。
「15人制との違いは時間の部分で、15人制は80分であるのに対して7人制は14分と短いです。人数も少ないのですが、グラウンドの広さは15人制と一緒なので走る量やきつさも全く違います。ですがその分、派手なプレーやパフォーマンスが多く見られると思います。7人制の魅力は時間も人数も少ないですが、見ていて飽きないということもありますし、スピーディーなプレー展開なのでそこが魅力的だなと感じる部分です」
――代表合宿中、周りの選手から学べたことはありますか。
「練習に対する意識や練習以外での態度や食事の部分では、やはりプロだなと思うことが多くありました。常に考えながら毎日過ごしているんだなということをとても感じられました。プレーももちろんですが、それよりも外でのプロの態度、姿勢を学ばせてもらいました」
――今回、代表候補には目標の選手とする合谷和弘選手(クボタスピアーズ)もいらっしゃいました。
「合谷さんはパスやキックが上手で状況判断が的確にできる方なので、そういった視野の広さ、一人一人の選手の見方、スペースの判断を学ばせてもらっています。今回自分が選ばれましたが、合谷さんから学んだことはたくさんありますしこれからも学んでいきたいことはたくさんあります。今はバックアップとして入ってらっしゃって盗めるところは盗んでいこうと思っています。落ちてしまった合谷さんの分まで頑張らなきゃいけないなという責任感は増しました」
――合谷選手が目標となったきっかけを教えてください。
「僕が初めて7人制ラグビーを見たのが、中3のときのオリンピックのアジア予選の決勝でした。テレビで見ていたのですが、この人小さいのにすごいなと思ったのが合谷さんで、こんなプレーをしたいと思ったのがきっかけでした」
――合谷選手とは代表が決まった後に話したことはありますか。
「背中を押してもらえて『頑張れよ』と言ってもらいました。普通は結構気持ちが複雑になるじゃないですか。でも『そんな感じだったら俺が奪っちゃうよ』とそういった風に言ってもらえたので自分的にはすごく助かりました」
――対戦が楽しみな対戦相手はいますか。
「ユースの日本代表の時に戦った僕世代のメンバーがアルゼンチンには多いので、同世代のスーパースターと戦うのはすごく楽しみです」
――将来的に7人制に専念していきたいという気持ちはありますか。
「そういったことは全く考えたことはありません。自分のモットーは目の前にあることを全力でやることです。あまり先のことは考えずに一つ一つ目の前のことをこなしていけば、結果が付いてくると思っています」
――五輪ではどのようなプレーをしたいですか。
「自分の強みがステップなので、しっかり相手を抜いて翻弄(ほんろう)して勝つということにこだわりたいです。見ていただいている方たちに小さくてもできるということを伝えたいです」
――ありがとうございました。
[宇野萌香]
◆石田 吉平(いしだ・きっぺい)文3、常翔学園高、167センチ・75キロ
ラグビーを始めた当初、FWの前列のポジションだった石田。しかし中学時代にサッカー部に所属してから「すごく体力がついて痩せていった」。そこからポジションがどんどん後ろに変わっていったという。五輪であってみたい他競技の選手はサッカーとのこと
※7月15日発行の明大スポーツ511号の1面でも石田選手を取り上げています。ぜひそちらもご確認ください。
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