王者の誇り胸に明早戦へ 武井組25年ぶり全勝対決に挑む

2019.11.28

 全勝優勝へ、最終関門を迎える。フッカー武井日向主将(商4=国学院栃木)率いる明大は、これまで関東大学対抗戦(以下、対抗戦)6戦全勝。前節の帝京大戦は40―17で2年連続の勝利を挙げた。「積み上げてきたものを信じて、早大を倒す」。全勝同士の明早戦は田中澄憲監督が1年次以来、25年ぶり。勝者が優勝を手にする大一番。昨年敗れた雪辱の思い、優勝の悲願を胸に秘め、早大に挑む。


根幹の輝き

 円陣の中心にはいつも彼がいた。2年連続で勝利を果たした前節・帝京大戦の試合前、武井は円陣の中でチーム全員に呼び掛けた。「自分たちに、やってきたことに自信を持って。チャレンジャーとして戦おう」。

 武井の主将就任は必然だった。「日向はチームに落ち着きと余裕を与えてくれる存在」(ウイング山﨑洋之・法4=筑紫)。真骨頂は、どんなときでも欠かさないハードワーク。帝京大戦では試合開始のファーストタックルを決め、鼓舞するように前へ。前半20分にはディフェンス3人を押しのけ突破。自ら走り抜き、トライを挙げた。「チームがきついときにきついプレーをする。それが僕の流儀」。中心でチームに安心感をもたらす主将。〝日向〟のようにピッチをさんさんと照らしてきた。

二つの決勝

 幾多の大舞台を乗り越え、今がある。「あの日からやること全てを変えた」。転機は2年前の全国大学選手権(以下、大学選手権)決勝だった。相手は当時8連覇中の絶対王者・帝京大。「下級生らしく全力でやるしかない」。そう意気込んでいたが、手渡されたジャージーには〝16〟の背番号。セットプレーを不安視され、スタメンから外された。試合は前半を終え、10点のリード。武井は後半初めから途中出場を果たしたが「新たなインパクトを与えるべきだったのに、ボロボロだった」。スクラムやラインアウトでミスを連発。10点のリードは泡のように消え、わずか1点差での惜敗。「本当に自分のせいで負けたという感覚」。残ったのは後悔だけだった。

 自責の念が成長の糧に。以降は練習に臨む姿勢から一変させた。大切にしたのは〝紙一重〟の意識。「細かい積み重ねが最後に強い意志を生む」。課題のセットプレーを中心に猛練習に励んだ。

 それから1年。武井は同じ大学選手権決勝の舞台に〝2〟を背負って帰ってきた。「同じ試合で借りを返すしかない」。22年ぶりの日本一を懸けて臨んだ天理大戦は、22―17で勝利。武井もトライを奪うなど躍動。「やってきたことが間違いではなかったと証明できた」。〝紙一重〟の努力は1年の時を超え、新章を紡いだ。

勝利の文化

 常々口にしていた言葉がある。「連覇を目指しているわけではない。今年のチームで優勝をつかみ取る」。4年生は1年次の準々決勝で敗退した年内終戦から、3年次の日本一へ多岐にわたる経験をしてきた代。だからこそ、後輩たち、そして部に残していきたいものがある。それは価値を上げ続けるため、常に勝利を追求する文化。「日本一は全てを超えたものをくれた。積み上げてきたものを崩さず、さらにさらに積み上げて」。長い低迷期から脱し、新たな基礎はできた。あとは勝利の歴史を刻み続けるだけだ。

 「1年前とはチームの置かれた立場が違う」。日本一を取っても、昨年の明早戦の敗戦はこの試合でしか返せない。「ただ目の前の早稲田に勝ちにいく」。待ち受けるは史上最高の大舞台。25年ぶりの全勝同士の明早戦。宿敵からの勝利が栄光の歴史をさらに前進させる。

【上松凜助】


◆武井 日向(たけい・ひなた)栃木県出身。小学3年次にラグビーを始める。中学は栃木ジュニアに所属。この頃は医者を志し、中学校の成績はオール5。高校入学に当たり、医者を目指すかラグビーを続けるかの選択に迫られる。明大OB・石井雄大氏(平31政経卒)の影響もあり、ラグビーの道を選び、強豪・国学院栃木高に進学。3年連続で花園に出場し、3年次には主将を任された。明大入学後は1年次からAチームを経験する。世代ごとの日本代表に召集され、2年次にはU20(20歳以下)代表やジュニアジャパンにも選出。今年は関東大学オールスターゲームで対抗戦A選抜のゲームキャプテンを務めるなど大学屈指のフッカーとして活躍している。171㌢・97㌔

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