手嶋杏丞 下剋上の物語の続き

2019.09.17

 優しい人柄と熱い思いを持つ男が明治に上昇気流をもたらす。高校から本格的に陸上を始めた手嶋杏丞(情コミ2=宮崎日大は高校時代インターハイで10000メートル9位に入るなど実績を挙げる。高校当初の目標であるこの場所で、さらなる活躍を目指す。

 

挑戦

 手嶋の陸上人生は〝下剋上〟から始まった。中学まではサッカー少年だったが、高校で周囲に才能を見いだされ、陸上を始める。しかし入部当初、大会や駅伝で走ることはできなかった。その現実が彼の負けず嫌いの性格に火を付ける。普段の練習から先頭集団に付くことを意識。走るたびにタイムが伸びる陸上の魅力に取りつかれた。

監督の存在が手嶋を全国レベルに押し上げた。よく監督が口にした、「速さよりも強さを求めろ」。この言葉を体現した試合がある。3年次の南九州総体5000メートル。苦手なスローペースの展開に後れを取っていた。しかし順位だけを意識した結果、最後は0.01秒差の勝負に競り勝ち、自身初のインターハイ出場を決めた。「お前はできる」。いつもそう声を掛けてくれた監督の期待に応えたい気持ちが手嶋の成長につながった。また、大学と同じ、自主性を重んじる練習が明治進学を後押しした。

 

変革

 大学に入っても手嶋の成長は止まらない。その裏には阿部弘輝主将(政経4=学校法人石川)の存在がある。昨年の夏合宿ごろから彼のジョグの方法を取り入れた。ただ一生懸命走るわけではない。毎回の調子や体調に合わせたジョグに変えた。すぐに結果が出る。11月の上尾ハーフ。苦手だったロードのレースで、チーム上位のタイムをたたき出した。大きな自信を胸に初の箱根を目指した。

 迎えた箱根駅伝当日。3区にエントリーされていたが当日変更で補欠に回った。1年生で走ったのは手嶋が「絶対負けられない」と最も意識する鈴木聖人(政経2=水城)。入学以来負け続けてきたライバルにここでも後れを取ってしまう。陸上人生の中で、一番の悔しさ。その思いをすぐに切り替え、練習に励む。「練習を継続した分だけ結果が出る」。陸上を始めて4年、ここまで毎年自己ベストを更新し続けてきた。近い将来明治のエースへ駆け上ってみせる。 

 

◆手嶋 杏丞(てしま・きょうすけ) 情コミ2 宮崎日大高 168センチ、48キロ 宮崎県出身。好きな芸能人は今田美桜。特に髪を下ろした姿がお気に入り。

 

[入野祐太]