明大卒「ドラゴン桜」作者 三田紀房氏インタビュー

 「お金があれば幸せになれるか」。その問いに『インベスターZ』や『砂の栄冠』をはじめ、〝お金〟を絡めた作品を多数手掛ける三田氏は、こう言い切る。

 「なれますね。お金がない状態は何一つ良いことがありません。断言します」。

 そう考える背景には、大学卒業後の苦労がある。1980年に本学の政治経済学部を卒業後、一般企業に就職。2年ほど勤めるも、父親が体調を崩し、実家の衣料品店を継ぐ。しかし、経営は軌道に乗らず。借金を抱えた三田氏は、賞を獲得すれば賞金が手に入る〝漫画〟に着目。30歳の時に講談社の『ちばてつや賞一般部門』で入選しデビュー。その後、東大受験をテーマにした『ドラゴン桜』をはじめ数々のヒット作を打ち立てた。曲折を経て、名をはせたからこそ思う。

 「お金があれば余計な心配をしなくていい。世の中の最大の心配事は健康状態。次にお金です。支払いに関して何も心配がない、つまり大きなストレスがない状態です。ものすごく他に考える余裕ができます。それってハッピーじゃないですか」。

 お金の存在が自由をもたらすと分析。そしてここ数年声高に叫ばれる〝若者のお金離れ〟に疑問を呈する。

 「今の若者がお金離れだとかは、商品を売り付けるためにマスコミが考えたキャッチコピー。昔から学生は貧乏です。世間一般にあるものを、簡単に信用してはいけませんよ。昔なんて部屋にお風呂すらなかった。むしろ今の学生の方がお金を持っていると思います。学生はお金と縁のない4年間を送るものです」。

 ではお金持ちになるにはどうすればいいのだろうか。

 「まず、数字に強いということ。数値化した客観的事実から目をそらさず、しっかりと向き合い、自分なりにどう取り入れるか。そして何に使うか自分なりに見極めることです。貯める人間ではなく、使う人間にならなければなりません」。

 お金に関して鋭い考えを語ってくださった三田氏。人工知能(AI)の発達やグローバル化などと先行きの予測できない世界を生きていく私たちに、強いメッセージを送ってくださった。

 「結局大事なのは行動です。今の若い方は目的を考え過ぎている。考え過ぎるとそこで止まり、何も得られません。『何のために』とかあまり考えず、行動するのが良いと思います。そして今の学生さんたちはわれわれの頃より、100倍くらい優秀です。よく考えていますし、真面目で熱心。『自分たちイケている』というのを意識しないと駄目です。社会に出れば今まで予測つかなかった世界が待っています。上から目線で社会に出て勝負してください」。

 お金に関しても、それ以外の分野でも、何事もまずは行動を。学生という身分に縮こまらず〝前へ〟進んでいこう。【古賀章太郎】