浸透する澄憲イズム 選手第一貫き常勝復活へ

2018.11.28

 全ては選手のために――。昨年度からチームに加わった田中澄憲監督。春夏秋3度の帝京大戦で勝利へ導き、大学ラグビーの〝一強時代〟に風穴を開けた手腕家だ。監督として初めて迎える明早戦。1年間かけて築いてきた〝澄憲イズム〟を宿敵・早稲田にぶつける。


田中改革

 「明治史上一番のチームへ」着実に前進している。昨年度はヘッドコーチとして〝マインドセット〟を合言葉に意識改革を行った。そして今年度、新たに着手したのが〝ラグビーの理解力向上〟だ。練習中、田中監督はあえて口出しをせず選手同士の話し合いを促す。「『やらされている』と思ったらうまくなれない」昨年度は首脳陣内で収めがちだったデータを選手に共有し、練習メニューを理解させるようにした。「監督はヒントを出しながら、答えは出さずに考えさせてくれる」(スクラムハーフ福田健太主将・法4=茗溪学園)。


こだわり

 田中監督の信条は「どれだけ小さなことにこだわれるか」。昨年度はウエート場やお風呂場へ行くと、使ったものが放置されていた。「本当に日本一を目指すチームなのか」。きれいな状態の写真と比べさせ、どちらが本当に強いチームになれるか問い掛けた。「意外と小心者なんだよね」と笑って言うが、細かいことにも手を抜かない姿勢はチームを締まりのある雰囲気に変えた。私生活でもこだわりを見せ、常勝軍団の礎を築いた。


敗戦糧に

 ほぼ敗戦を経験しなかったチームにとって慶応戦の黒星は転機となった。試合後、遅くまで寮にいた田中監督を福田健が訪ねてきた。「入りを練習から意識できるようにしたい」(福田健)。相談の末、それまで練習の最初に組んでいた円陣をウオーミングアップの後に回し、試合と同じ状況をつくった。そして帝京大戦では「立ち上がりから良い緊張感で臨めた」。慶応戦とは一転して積極的な攻撃を見せ王者を撃破した。

 帝京大から金星を挙げ「昨年とは違うステージに来た」が、どこが相手でも自分たちのプレーにこだわることは変わらない。この重圧を乗り越えて、まずは2年連続で早稲田を打ち破る。

【木村優美】