
王者帝京下した 福田組対抗戦王手
勝って3年ぶりの優勝を決める。スクラムハーフ福田健太主将(法4=茗溪学園)率いる明治は関東大学対抗戦(以下、対抗戦)をここまで5勝1敗。前節の帝京大戦では対抗戦8年ぶりの勝利を挙げた。次の明早戦は優勝の懸かる大一番。カギを握るのは福田健の積極果敢なゲームコントロールだ。「挑戦者の気持ちで厳しく攻める」。決戦に向け気合は十分だ。
赤壁突破の要因
ボールを蹴り出した直後、ノーサイドの笛が鳴り響く。対抗戦8年ぶりの帝京大撃破の瞬間だった。福田健はスタンドオフ松尾将太郎(商4=東福岡)に飛び付き高々と右手を突き上げた。「春からの積み重ねは間違っていなかった」。歴史的勝利にも真っすぐに言葉をつないだ。
先制したのは明治だった。前半4分、相手ボールスクラムでのコラプシングを誘発。PG(ペナルティーゴール)をフルバック山沢京平(政経2=深谷)が落ち着いて決めた。「前半から得点力を発揮してくるチーム」である帝京大の出鼻をくじいた。リードして迎えた後半もFWの強さを軸に攻め続け最終スコアは23―15。春夏に続き今年度3度目の帝京大撃破を成し遂げた。
劇的勝利の要因となったのは「試合開始10分間の意識」だ。明治は5戦目で慶応に敗戦。試合後、今年度から新たに導入したリーダー制を中心に課題を分析した。その際、立ち上がりの攻めの姿勢が足りないという結論に。そこから2週間、試合の入りから果敢なアタックを狙うチームをつくり上げた。
強気で前向きに
わずかなスキも見逃さない。福田健のプレーの特徴は積極的で強気なサイドアタック。ゲームコントロールで生じた相手のスペースを50㍍6秒3の足とチーム随一を誇る豊富な運動量を武器に突く。「相手のスキを80分間通して見ている」帝京大戦でも相手ゴール前でのスクラムから持ち出しセンター渡邉弐貴(営4=国学院栃木)のトライをアシストしてみせた。
強気なプレーの根底にあるのはストイックな性格。「プレッシャーに強くて弱音も吐かない」。ハーフ団を組む松尾は福田健をこう評する。「練習から常に100%を心掛けている」という福田健。朝早くの練習から小さなごみ拾いまで。「自分をつくってくれたもの」であるラグビーでは何一つ妥協しない。小さい頃から始めて育んだ勝ちへの思いと培った負けず嫌いな姿勢。その二つが誰よりも真摯(しんし)にラグビーに取り組む1人の戦士の根幹として成り立っている。
対話で日本一へ
持ち味は強気なプレーだけではない。重視するのは試合中の密なコミュニケーション。試合の流れが悪いとき、チームの雰囲気が良くないときはコミュニケーションの不足に陥る。そこで福田健はトークのかじを取る。「修正するポイントは僕が話をリードして見つける」。言葉をぶつけることでチームは何が悪かったのか、次はどんなプレーをすべきかを考える。こうした豊富なコミュニケーション能力も欠かせないキーとなる。
この決戦を日本一への糧とする。相対するは創部100周年の早稲田。今年度も80分間の死闘を制してみせる。「最高の試合を見せられるように」。最後もやはり真っすぐな言葉で語った。
【清水康佑】
◆福田健太(ふくだ・けんた)埼玉県出身。小学1年次に父親の勧めでラグビーを始める。茗溪学園高3年次には主将を務め花園へ出場。明治入学後は1年次からAチームを経験する。今年度は関東大学オールスターゲームに出場を果たすなど大学を代表するスクラムハーフとして活躍している。173㌢・80㌔
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