『言の葉(4)』角出龍哉「角出さんを胴上げする」

2018.11.03

 夢舞台復帰の立役者となった。箱根予選会はレースの先頭集団とは別に後方でチームが一塊になって走るのが定石。その集団走を引っ張るという重大な役目を任されたのは4年生で唯一の出場となった角出龍哉(文4=伊賀白鳳)であった。秀でた才能を持たない角出が第2の要として挑んだ今大会。予選突破は周囲の支えなくして語れないものだった。
 今大会で出走した選手の中で角出の1万㍍の自己ベストは12人中8番手。「僕だけおんぶに抱っこという状態で……」。プレッシャーの中迎えた自身2度目の予選会は5㌔地点で集団をつくる作戦を予定していた。「良い所で展開はできた」と集団走においては及第点もチーム8番手でのゴールに自身の活躍を「60点」と低めの評価。だがそんな角出をチームは快く出迎えた。「今年1年、練習を引っ張ってくれた本当に優しい先輩」(阿部)と後輩思いの角出を下級生は競技内外で尊敬している。そのフレンドリーな性格からレース前に3年生らは「(本戦に出場したら)角出さんを胴上げする」と宣言。本戦出場が決定後、チーム全員に支えられ、角出は3度宙に舞った。「ここまでやってきて良かった」と今までスポットライトを当てられることのなかった角出が主役になった瞬間であった。
 やっと大舞台に立つ権利が得られた。2年ぶりの箱根の目標はシード権。「今日のレースを挽回できるようにしたい」。角出にとって最初で最後の箱根への挑戦が始まる。

【綾部禎】

◆角出龍哉(すみで・たつや)三重県出身。161㌢・49㌔