『言の葉(3)』福島宇美「自分次第で強くなれる」

2018.09.26

 この春、レスリング部から明大史上初の東日本女王が誕生した。福島宇美(営1=安部学院)は総勢25人中唯一の女子部員。女子の入部は7年ぶりだ。

 女子校から一転、男子しかいない環境へ飛び込んだ。母校・安部学院高は世界女王も輩出する名門。卒業後は女子育成の環境が整備された大学への進学が規定路線だ。しかし、あえて「力のある男子に交じることで、女子のトップ選手に追い付きたい」といばらの道を選んだ。平日は母校の練習に参加し、明大での練習は土日の週2日。ウエートもスパーリングも、他の部員と同じメニューをこなす。「大変です、本当に(笑)」。体重比で表した成人女性の筋肉量は、男性の約50%といわれる。それでも限界は決めず、必死に食らいつく。「最初は男子の力強さに圧倒されたけど、ちょっとずつ対抗できるようになった」。ハードな練習で得た手応えを笑顔で語った。目の前には常に道しるべがある。一つはリオ五輪金メダリストの土性沙羅(東新住建)、そしてもう一つは高校の同期・森川美和(日体大)だ。昨年12月の天皇杯では、土性に0―10のテクニカルフォール負け。「森川は土性さんからでもポイントを取れるのに」。インカレ決勝も森川に0―7の完封負け。共に汗を流した同期に、水をあけられてしまった。

 「周りに女子がいなくても自分次第で強くなれる」。自分以外にも女子部員がいたら。こぼれ出そうになる弱音をぐっとこらえる。「環境を言い訳にはしたくない」。男子に負けない力を付け、次は学生女王の座をつかんでみせる。

【谷山美海】