山本耕生 敗戦を糧に 目指すは重戦車の一角

2018.09.10

 重戦車に新風を吹き込む。プロップ山本耕生(商1=桐蔭学園)は、東の横綱と称される名門・桐蔭学園高で2年時からレギュラーで出場し、高校日本代表にも選ばれた逸材。100キロを優に超える巨漢のひしめくプロップ陣の中で173センチ、98キロと小柄だが、ドライブ力とプレーの柔軟さを武器に紫紺を〝前へ〟と押し上げる。


大舞台での悔しさを胸に

 早くも期待度の高さを示した。関東大学春季大会東海大戦。山本耕は後半25分からの出場だったが「コンタクトでは負けなかった」と初出場で手応えを得た。「未来の重戦車を担う」という周囲の期待の裏に、忘れ難い経験があった。最高学年で迎えた花園。優勝候補の一角であった桐蔭学園高は持ち前のFW陣を武器に勝ち進んでいく。しかし迎えた準決勝・大阪桐蔭高戦。前半、相手BKにスキを突かれ先制トライを献上してしまう。リードを許したまま迎えた後半ロスタイム。「精神だけでやっていた」という逆転を懸けた連続攻撃は、驚異の63フェーズを数えた。8分間武器のFWで攻め続けたが、インゴール直前でレフェリーの反則の笛。あと一歩及ばず無情のノーサイドを告げた。くしくも反則を取られたのは山本耕だった。「最後にチームを終わらせるのはお前かもしれない」。指導を受けていた金子コーチに掛けられていた言葉が頭をよぎった。「築き上げてきたものを一瞬で終わらせることは簡単なこと」だということを痛感した。

「大学ではこんな辛い思いはしたくない」。花園での経験を生かし、あと数メートル届かなかったゴールラインまで想いをつないでみせる。


何でもこなせるプロップ

 小柄な体を長所に変える。相手のスキを突くプレーの柔軟性に加え、タックルされても前に出続けるドライブ力が山本耕の武器である。一方で目標も明確だ。「オールマイティーに何でもこなせるプロップ」。ただ当たりにいくだけではなくステップで相手をかわし、バックスに展開する〝中継地点〟としてのプロップを目指す。目標とする選手像へ向け歩みを止めない。

〝明治の山本耕生〟へ。その名をとどろかせるため、まずは課題のスクラムから。「自分の組み方を見つけてみせる」。山本耕の日本一への戦いは始まったばかりだ。

 

◆山本 耕生(やまもと・こうせい) 商1 桐蔭学園高 173センチ、98キロ 神奈川県出身。1年生の間ではムードメーカー。趣味はヒップホップを聴くこと。

 

[上松凜助]