(9)「帝京大戦は予想を裏切られた」春季大会後インタビュー 田中澄憲監督【後編】

2018.07.07

 大学選手権9連覇中の絶対王者・帝京大を8年ぶりに破り、春季大会優勝を果たした田中澄憲監督率いるチーム。絶好調で終えた春シーズンの振り返りと夏に向けての意気込みを田中監督に伺った。


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【後編】

――6月からはトップリーグとも練習を行っていました。

「リコー、サントリー、NTT、トヨタさんとFWの合同練習をさせてもらいました。昨年度だったら『絶対やられるじゃん』っていうメンタルが、今年は『やってやろう』っていう心構えだったので、押せるスクラムもあって手応えを感じたんじゃないかな。あとはやっぱり滝澤(佳之FWコーチ)が良いんでしょうね。パッションがあって、社会人との練習でも『押されに来たんじゃないからな』っていう目的意識を選手に持たせて取り組んだりしていますね。練習の様子を見ていると学生も滝澤のことを信頼していると感じます」

 

 ――一方でBKはいかがでしょうか。

「BKに関してはもっと細かくて明確なコミュニケーションを取れるようにしていかないとって伊藤(宏明BKコーチ)と話しています。彼はラグビー理論に関しては良いもの持っています。たとえば最初のサインプレーでこの人はこう動いて、次の人はこう動いて、だからここが空くんだよっていうことまで細かくやっているんです。だからファーストフェーズでのゲイン率が上がって、次に良い攻撃ができるんです。それは去年の僕にできなかったことなので、伊藤効果ですよね。一人一人が走るコースとかタイミングとかすごく良くなってきています」

 

――それにコミュニケーションが加わるともっと良くなるということでしょうか。

 「そうですね。ファーストフェーズは決められた動きをするけど、その後カオスになってからのコミュニケーションってすごく必要です。どこにスペースがあるとか伝えるために、コミュニケーションでの判断が必要になってきます」

 

――現時点で課題はありますか。

 「ラインアウトのファーストフェーズからのアタックのサインプレーかな。ラインアウトからのサインプレーってあまり数はないけど、そのうちラインアウトからのゲイン成功率が圧倒的にうまくいっていないんです。そこがうまくいけばラインアウトからのアタックもうまくいくと思います」

 

――今年から導入したドローンの効果について聞かせてください。

 「特にBKにとってはとても良いです。チームのアタックシステムをレビューでバランス良くできているかを確認できます。だからアタックのバランスがすごく良くなって、狭いエリアに人が集まることがなくなりました」

 

――リーダー陣の成長を感じますか。

 「健太(福田・法4=茗溪学園)は変わってきているね。言うことは的得ていて考えて発言しているね。あとはどう4年生をまとめていくかが大事じゃないかな。そこは彼も考えながら苦労していくと思います。彼は何でもできちゃうから、逆に周りからしたら『健太に任せればいいんだな』ってなる。周りに協力してもらうようになるともっと良いと思います。僕の時は監督がいなかったから同期とかと面談とかしたけど、協力という点で失敗しちゃったんだよね。助けてもらうってことをもっとやっていけば良かったんじゃないかなって。井上遼(政経4=報徳学園)は安定感が出てきて、FWのリーダーらしくなりましたね。松尾(将太郎・商4=東福岡)は10番で出られるかが懸かった勝負の年だから、どんどん新しいことを吸収していっていってほしい。あとは汰地(髙橋・政経4=常翔学園)も良いプレーヤーだけど、ただキャプテンについていくだけではなくて、たとえば健太をサポートしていくとかそういう考えを持ってくれると絶対もっと良い選手になる。地元のトップリーグでやることは決まっているんだから、意識してできるようになったら日本代表を目指せる選手になると思います」

 

――監督が印象に残っている試合やプレーはありますか。

 「大東大戦は外国人選手がいなかったけど、天理大戦で学んだスクラムを改善してスコアにつなげていました。課題の出たことを次の試合で改善する能力が見られて成長したと感じました。あとは早稲田戦でも、同志社戦で出たディフェンスを改善して1トライに抑えました。2試合続けて悪い内容の試合はなかったので修正能力が上がったと思います。伊藤は課題を共有して次にどう改善するかを指導してくれているからそこは大きいです」

 

――夏合宿の対戦相手は、外国人選手を擁したフィジカルの強いチームが多いです。

 「帝京大、天理大、東海大は外国人選手をフルで使えるから僕らにとってもチャレンジですし、日本一を目指すには避けては通れないチームです。丹羽(政彦・平10文卒)さんから『帝京大はどうする』って言われたので『やったほうがいいです』って言って昨年度から始めました。大差がついても帝京大慣れすることが大事だし、試合をやらせてもらえてありがたいと思っています」

――夏合宿で主に力を入れることは何でしょうか。

 「主にチームのアタックとディフェンス、ラインアウトのところです。あとFWだったらラインアウトモール、BKはコミュニケーションでスペースにボールを運ぶ練習をしていきます。でもこの7月はすごく大事になってきます。夏合宿に入るとトレーニングではなくてゲームがメインになります。7月にチームにやるべきことをやってめりはりをつけて練習しようと思っています。7月1日のミーティングでも選手たちに『7月が大事だ』と話したし、夏合宿初っ端の帝京大戦に勝つためには大事なことです。7月21日にリコー、29日に日野自動車と試合をするので、7月にやったことがどこまで通用するか見たいですね」

 

――帝京大に勝利したことで今度は追われる立場になります。

 「それが良いプレッシャーになれば、注目されないより注目されたほうが良いと思います。ただやっぱり僕たちはチャレンジャーだから、チャレンジ精神を忘れずに日本一を目指してプラン通り続けることが大事です。夏から他のチームも成長するし、今はどういうチームになるか楽しみです」

――ありがとうございました。

木村優美