
(8)「帝京大戦は予想を裏切られた」春季大会後インタビュー 田中澄憲監督【前編】
大学選手権9連覇中の絶対王者・帝京大を8年ぶりに破り、春季大会優勝を果たした田中澄憲監督率いるチーム。絶好調で終えた春シーズンの振り返りと夏に向けての意気込みを田中監督に伺った。
【前編】
――まず初戦の帝京大戦を振り返っていかがでしたか。
「春季大会で6年間勝っていない中で勝てたことは素直にうれしいです。でも帝京大に対して特別に準備したことはなくて、日本一に向けてやってきたことがしっかり出せた試合でした。でも、帝京大に勝ったことは良い意味でこっちの予想を裏切られました。春は細かい戦術をやっていなくて、逆にもっと取られてもおかしくないと思っていたので、秋シーズンのような試合内容ができて良かったです。選手の可能性や勝ちたい気持ちが出た試合で、逆にそういう選手の良さを引き出すことが大事だなと感じた試合でした」
――昨年度の大学選手権敗戦も勝利の糧となりましたか。
「はい。今持っているような自信が昨年度にはなかったから、リードしていても『追いつかれるんじゃないか』って自分たちでプレッシャーをかけていました。でも自信があることで楽しんでプレーできて『絶対守り切る』という余裕が生まれたと思います。昨年度は昨年度で終わらすのではなく、負けた次の日から始まっているんだと感じさせられました」
――現時点での選手の自主性はどのように感じますか。
「昨年度の春に比べたらすべてにおいて基準は上がっています。でも帝京大を倒すことは並大抵のことじゃないし、まぐれで勝てるチームではありません。チームとしてレベルアップするためには、こっちが提供するものに対して『やらされている』って思っていたら強くなれない。本当に自分事になって『今年はどうするんだ』と真剣な話し合いを学生同士がし合うのが出てこなきゃいけないんだけどその点がまだまだ足りない。試合中の悪かったところをコーチから言われるんじゃなくて、遠征だったら帰りの新幹線で『こうしたほうがいいんじゃないか』と選手同士が話し合えるようになるともっと良いチームになります。求めるものは高いかもしれないし社会人でやっているチームも少ないけど、そういうチームを目指してチームの良き文化になってほしいです」
――春はディフェンスに特化した練習をしていない中、帝京大戦から良いディフェンスが出ていました。
「ディフェンスの練習はほぼありませんが、習慣づけるようなメニューを入れています。昨春はタックル成功率が69%だったんですけど、今春は79%と改善されてました。79%が良い数字ではないし目標は85%以上だけど、昨春に比べたら個人のタックル成功率が上がっている証拠です。この数字は昨秋の平均と同じくらい。つまり、昨秋から落としてないってことです。ベースができたから勝てるチームになってきたんだと思います。あとはポゼッションが圧倒的に多いです。タックルする機会が少ないので、成功率を上げているんだと思います」
――そのメニューは、全体練習前によく行っている四隅からタックルする練習のことですか。
「そうそう、よく知っているね。〝フィジカルプレップ(フィジカルプレパレーション)〟と言って、2、3分しかやりません。でもタックルの必要性を理解してくれるようになったので、練習後に自主的にタックルの練習をする選手が多くなりました。昨年度に来た時は、タックルの練習をしている人は一人もいなかったです。明治の選手ってアタックが好きでディフェンスはあまり好きじゃないチームだったんです。そういう意味ではタックルやディフェンスの重要性を理解するようになって、タックルのスキルを上げないとって思う子が増えました」
――そのメニューはどのように思いつきましたか。
「たまたま桐蔭学園の練習を見に行って、高校生がそういう練習をずっとやっていました。それを見て『こういうのをやっていたから明治でも取り入れよう』とコーチたちに提案しました。もちろんトップリーグから学ぶこともありますけど、高校生から学ぶことも多いです。もしトップリーグでやっていることが難しいんだったら、ジュニアや高校生のプレーを見て『こういうのが良いんだ』って考えることもできます。2月にイングランド行ったけど、その時もフィジカルプレップをよくやっていてすごく重要だと思いました」
――ありがとうございます。引き続き後編もよろしくお願いします。
[木村優美]
関連記事
RELATED ENTRIES