松元 日本の自由形エースへ

2018.06.13

◆4・3~8 第94回日本選手権(東京辰巳国際水泳場)
▼男子200㍍自由形❶松元 1分45秒93

速過ぎV
 とにかく速かった。日本選手権の3日目。200㍍自由形で松元が日本一に輝いた。レースは序盤からリオデジャネイロ五輪銅メダリストの江原騎士(自衛隊)との一騎打ちに。一時リードを許したが、残り50㍍で抜き去った。タイムは1分45秒93の自己新記録。高速水着の時代を除き、萩野公介(ブリヂストン)に次ぐ日本人歴代2番目となるタイムをたたき出し、文句なしの日本代表入りを決めた。
 立ちはだかる壁を、一気に乗り越えた。公式戦で江原に勝つのはこれが初めて。「お前には負けない」と言われ続けてきた長年の宿敵を破り「この大舞台で勝つことができて本当にうれしい」と喜んだ。さらに、世界大会で合計10枚以上のメダルを獲得した憧れの松田丈志氏のタイムも0・03秒上回った。「本当にびっくり」。レース後は自らの大記録を信じられない様子だった。

初志貫徹
 今年の2月中旬から、メキシコシティーで高地合宿に参加。標高約2300㍍という低圧低酸素の厳しい環境下で、体をいじめ抜いた。ウエートトレーニングでは周囲から「少し抑えた方がいい」と言われたが「抑えるのは好きじゃない」と、あえて強度を落とさなかった。合宿終盤、疲れから練習でばてることもあったが「ウエートをしっかりやった分、ひとかきで進む距離が伸びた」。泳ぎ込めなかった不安も、決勝メンバー最長の大きなストロークでかき消した。本番の日本選手権では自己新記録を0・82秒更新。自分を貫き通したことで、またしても誰もが想像できないほどの進化を遂げた。

期待の星
 好タイムで日本一に輝いた松元への期待は大きい。日本の競泳界をけん引してきた松田氏も「東京五輪で活躍が期待できる。特にリレーでは金メダルを狙ってほしい」と太鼓判を押した。「その期待に応えたい」。初めて日本の頂点に立った松元だが「ここが世界と戦うスタートライン」と、決して慢心はない。東京五輪まであと2年。メダルを目指す上で、国際大会での経験はマストだ。まずは8月のパンパシで「海外でメダルを取ったという事実をつくりたい」。日本の自由形のエースとして、上位進出を狙う。
【日野空斗】


◆松元克央(まつもと・かつひろ)福島県出身。昨年度は世界選手権に出場。185㌢・85㌔