矢島 200バタ金 五輪メダリスト抑え初代表

2018.06.13

◆5・24~27 JAPAN OPEN(東京辰巳国際水泳場)
▼男子200㍍バタフライ 矢島 1分54秒72


 ラストチャンスをモノにした。4月の日本選手権から約1カ月後に行われたジャパンオープン。8月9日から開催されるパンパシフィック選手権(以下、パンパシ)、アジア大会の追加選考を兼ね行われた。矢島優也(商4=春日部共栄)が200㍍バタフライを制し、初の代表入りを決めた。世界トップレベルの強豪を抑えた優勝に、拳を突き上げ喜びを爆発させた。


勝ち取った〝3枠目〟
 失意の底からはい上がった。本選考の日本選手権では予選、準決勝と1位通過で決勝に進んだが「単純に3レース泳ぎ切る力がなかった」と終盤でスタミナ切れ。結果は3位に終わり『1種目につき1国2名』という国際大会における代表2枠は、幌村尚(早大)と瀬戸大也(ANA)で埋まってしまった。予選のタイムで泳げていれば、代表入りは確実だっただけに「直後の2週間は悔しくて、全く練習に打ち込めなかった」。残された代表への道は、世界水準の選手がそろう種目に限り、例外的に設けられる〝3枠目〟。追加選考となるジャパンオープンで「このまま終わるわけにはいかなかった」。2週間のブランクもあり、選手権前ほどベストな状態には戻せなかったが「楽に臨めた」と、決勝では序盤から落ち着いたレースを展開。課題だったラスト50㍍でも、リオデジャネイロ五輪銀メダリスト・坂井聖人(セイコー)の猛追をかわし、今年度国内2位に相当する1分54秒72の自己新記録で優勝。申し分ない結果で〝3枠目〟をつかみ取った。


貫き通した〝矢島流〟
 並外れた推進力を武器に持つ。ひとかきで平均約2㍍進む選手が多い中、矢島は驚異の3㍍超え。体を大きくうねらせたダイナミックな泳ぎが持ち味だ。元々「バタフライ自体習ったことがなかった」という矢島。専門としていた平泳ぎの強化の一環として小学4年次からバタフライを始めた。だが「あくまで平泳ぎのため」と、前への重心移動や水中で長時間伸びる姿勢に特化。当時から主流は抵抗の少ないフラットな泳法だった中であえて〝普通〟を取り入れなかったことが〝矢島流〟の原点となった。一方で葛藤もあった。ストローク数が極端に少ない矢島の泳ぎは、テンポが上がらずスパートがかけにくい。「あの泳ぎではこれ以上速くなれるわけがない」と中学時代から周囲は厳しい声ばかりだった。そこへさらに追い打ちをかけたのが、おととしの日本選手権準決勝。他の選手より深く潜る動作が泳法違反と見なされ失格。リオデジャネイロ五輪出場が懸かった決勝の舞台に立つことさえできず「自分の泳ぎ全てを否定されたような気持ちになった」と苦杯をなめた。それでも、自分の泳ぎに徹した。失格を機に、頭を固定しキックのタイミングを早めることで上下動を抑えたが「何を言われても自分の泳ぎを変えるつもりはない」。トップで戦い続けるためには〝矢島流〟なしでは考えられなかった。微調整を重ね、ようやくつかんだ日本一。これまで向けられた心ない言葉にも結果で見返した。


〝衝撃的デビュー〟へ
 次は世界に証明する。今大会のタイムは昨年度の世界選手権4位に相当。「自信を持ってやっていける」と意気込む。だがパンパシで決勝に進出できるのは、どんなに速くても『1種目につき1国2名』まで。まずは予選で幌村、瀬戸の少なくともどちらかを上回らなければならない。中学生の頃から秘めてきた「自分の泳ぎで世界を驚かせたい」という思いを胸に、ライバルたちを退け、太平洋を制す。
【横手ゆめ】