出雲卓斗 未完の大器

2018.04.01

 常勝軍団の新たなピースとなる。出雲卓斗(政経1=遊学館)は、常に世代トップを走り続けてきた。高校では届かなかった頂点を目指して。名門・明大卓球部で大輪の花を咲かせる。

史上最年少勝利
 強くなるためならどんな努力も惜しまない。卓球を始めたのは3歳のとき。両親に勧められラケットを握り「遊んだ記憶がない」というほど練習に打ち込んだ。小学5年次には「早く強くなりたい」一心で、遊学館高の植木監督の下を訪れ、住み込みを直談判。小学校も転校し、実家にはほとんど帰らなかった。その一年後、全日本選手権一般の部で史上最年少勝利を達成。快挙にメディアが騒ぐ一方「負けた試合の悔しさの方が覚えている」と浮かれなかった。単身オーストリアに渡り、武者修行も経験。日本人が一人もいない中、洗濯から食事も自分で行うホテル生活。〝スーパー小学生〟と呼ばれた少年は桁違いの強心臓と人一倍の探求心を持っていた。

どん底の3年間
 苦難の3年間を糧にする。天才少年を予想だにしない未来が待っていた。高校に入学してから続いた勝ち切れない日々。「向かってくる相手が怖かった」。プレッシャーという見えない敵にも苦しめられた。「練習を辞めたい」。練習の虫が、卓球から心が離れそうになるほどだった。その中で、主将として挑んだインターハイ。団体戦決勝では、愛工大名電高にまたも敗戦。「大学では日本一になりたい」。苦しんだ分だけ頂点への思いは強くなった。
 〝卓球界で北斗七星のように輝いてほしい〟。両親が卓斗という名前に込めた思い。得意のバックハンドを駆使した攻撃的な卓球に磨きをかけ、まだ見ぬ輝きを探す挑戦が始まった。
【福永智隆】

◆出雲卓斗(いずも・たくと)石川県出身。早朝練習のおかげで朝が強い。寮で同期の目覚まし役に就任。166㌢・61㌔