夢を力に 佐々木則夫さんインタビュー

2018.03.26

 卒業生の皆さん、明治での大学生活はいかがでしたか。4年の時を経て、日本武道館で迎えた卒業式。大学生活最後の日にお配りする本紙・卒業記念号を通して、皆さんのかけがえのない青春の日々を振り返るお手伝いができれば幸いです。1面を飾るのは卒業生の一人、なでしこジャパンの前監督で同チームを世界一に導いた佐々木則夫氏(昭56文卒)です。サッカー部の部員、そして一人の学生として4年間を全うした佐々木氏に伺ったお話をお祝いの言葉と代えさせていただきます。このたびはご卒業おめでとうございます。

――大学時代を振り返って
 高校でサッカーを一生懸命やってきて「大学でもやるぞ」と思いつつも、大学4年間は社会に出る最後の時期なので、「何か幅広くできたらいいな」と思いながら大学生活を送っていました。サッカー部のみならず、クラスの仲間とも遊んだりしていましたね。授業に出られない日はノートを見せてもらったり、卒論をサポートしてくれたりした子もいました。だから、僕が卒業できたのは、「うちのクラスの総合力だ」なんてよく言っていますよ(笑)。

――大学での4年間が社会に出て生きたこと
 高校時代も友達と接することが大事ですが、その重要性とか付加価値は大学時代の方があると思います。そういう意味では友人関係に深く関わりを持つことで、よりお互いのつながりができると学びましたね。僕は大学時代の友人とは、社会に出てもつながりがあります。

――社会人と学生の違い
 社会人というのはお給料をもらって家庭を養うだけでなく、税金も払うわけです。世の中のためにもなっている。学生までは保護者や国などさまざまなものに支えられているわけですね。でも社会人になったら、単純に自分だけが生活するとか自分の家族だけ守るわけではないです。世の中に還元している要素も何%かあって、さらに会社で働くことによって会社が利益を得て、その分国にもサポートできる。だから、社会人イコール〝自分のため〟ではなくて〝社会のため〟の行動になっていきます。そこが違いだと思います。

――変化が早い今の時代で大切なこと
 大学時代までにやったこと全てが社会で生きるわけでは決してなくて、ベースになってまだそこから学べる。大学では与えられる教育より、自分で創意工夫や、人と接しながらやってきたようなものです。でも社会人1年目なので、自分を人間として高めていこうというのが大事です。そうすると、社会でもまれながら質が上がってくると思います。これからは社会で勉強したことの方が大きい。また、社会に出ればさまざまな不合理なことがありますが、そこも含めて経験しながらより自分を高めていこうと。仕事の質も大事ですが、やはり人間同士高めていくことが大事だと思いますね。あとは焦らないこと。社会に出た時に多くの転機があると思います。そして自分を高めていくことで、さまざまな広がりが出てきます。いろんな経験をするでしょうが、ぜひ今までやってきたことを、社会の中で質を高めていってほしいですね。

――佐々木さんにとって明治はどのような存在か
 社会に出るための最後の大きな師です。社会に出ても明治の方がいろいろ助けてくれますね。

――卒業生へエールを
 大学生のゴールは卒業ですが、社会人としてのゴールは夢や、理想の実現でしょうか。社会に出た時に失敗したくないのは分かりますけど、失敗を恐れず、もっと自分を高めるんだということを信じて、ぜひ挑戦してほしいなと思います。一生懸命に挑戦して失敗したら、後から「ここ足りなかったのか」というインパクトが強くてさらにプラスになります。ただ、自分で今のミスが挑戦だったのか、ミステークだったのか、しっかりと確認しなければいけません。夢や理想の実現は、最初は程遠く感じますが、諦めない努力の継続が徐々に実現に近づく経験をしました。もちろん最初は、みんなミスが多いです。分からないことも多い。でもそれで消極的になったら全然自分を高められないので、どんどん思ったことはやってみてほしいです。

◆佐々木則夫(ささき・のりお)昭56文卒。現大宮アルディージャトータルアドバイザー。2011年女子ドイツW杯優勝監督。同年、なでしこジャパンとして国民栄誉賞受賞。