迎え撃つ紫紺の壁 桶谷主将

2016.11.30

 全て勝つためにやってきた。チームスローガン〝MUST WIN〟を掲げ、部の先頭に立つ桶谷宗汰主将(営4=常翔学園)。高い仕事量で重戦車の顔として体を張り続けてきた。花園優勝、世代別日本代表と、誰もが憧れる王道のラグビーエリート人生。大学1年次から紫紺に袖を通し、2年以降は学年リーダーを務めた。主将として迎える最後の明早戦。4年間の集大成を早稲田にぶつける。

「7番」の鑑
 寡黙に、愚直に動き続ける。「きつい時間帯にどれだけ頑張れるかって、才能とかじゃない。当たり前のこと」。桶谷のプレーはごくシンプルだ。80分間ポイントには必ず顔を出して密集に突っ込み、ボールに絡んで争奪する。「自分の売りはそこだと思っているので」。1試合当たりの走行距離は7㌔を超え、チーム随一の仕事量を誇る。
 「ディフェンスが好きな人なんていない」と笑うが、タックルは数にも質にも定評がある。2年次の帝京大戦ではグッドタックル賞を受賞。帝京大の素早い展開に対し、早め早めのタックルでピンチを抑え込んだ。試合こそ敗戦も、確かな手応えを感じた。「プレーで引っ張っていきたい」。主将像の軸となるのは背中で見せることだ。

主将の言霊
 もともと決して口数は多くない。「言霊を感じないっていわれたこともある」。主将として求められる役割と、自分の性分との溝に困惑した時期もあった。しかし、ケガでやむを得ず欠場した慶応戦と帝京大戦で変化があった。出場できなくともチームに貢献したい。その一心で、できることを探した。帝京大戦では自らウオーターボーイを志願。「グラウンドの中に伝わらないと意味がないから」。声を張り続け、円陣に駆け寄りチームと戦い抜いた。「ゲームには出ていないけど喉はからからになった」。プレーで引っ張れないときは言葉で。今までになかった、新しい主将の姿だった。
 出られなかった2試合は今までのどの試合よりも身にこたえた。だからこそ「早稲田には勝ちたい」。思えば出場した明早戦で勝った経験がない。ラストイヤー、このまま終わるわけにはいかない。「全部勝つためにやってきている」。明治の〝MUST WIN〟を貫く。

【荒井希和子】