長友以来の現役明大生Jリーガー FC東京 室屋

2016.04.01

 ここから始まる新たな伝説に誰もが熱視線を送る。明大に在学したまま今シーズンからFC東京でプレーをする室屋成(政経4=青森山田)。サッカー部を退部し、プロの舞台に飛び込む決断を下した大学生Jリーガーは、大きな期待を背に進化と恩返しを誓う。

英断
 慣れ親しんだ紫のユニホームに別れを告げた。2月8日、明大駿河台キャンパス紫紺館でFC東京への正式加入を発表。室屋は明大に在学したまま、プロ選手となる英断を下した。
 1月に行われたリオデジャネイロ五輪アジア最終予選では6試合中5試合に先発フル出場。準々決勝では決勝点をアシストするなど、日本の6大会連続五輪出場に大きく貢献した。「五輪の最終予選に出てもっと上を目指してやってみたいと思ったし、実際に五輪のことを考えると時間がないとすごく感じた」(室屋)。大舞台で手にした自信と同時に感じたのは一種の焦り。五輪出場を目指す熱い思いがさらに火力を増した。

誇り
 「彼を五輪のメンバーに育て上げたい」。これが栗田大輔監督をはじめとするサッカー部スタッフの総意だった。最終予選の23人から18人に絞られる五輪本戦メンバー入りを目指す室屋にとって、プロ入りはこれ以上ないチャンス。スポーツ推薦入学者であり、本来ならば4年間、部を退部することはできない。しかし「一選手のわがままを許すとかそういう話ではなく、日本サッカー界を背負う人材を目指し、選手としての成長を促す環境に早く身を置かせたいという、サッカー部の前向きな意向を受け送り出すことにした」と永島英明スポーツ振興事務長。大学側の全面的な後押しも受け、誇りと希望を一心に背負うプロ生活が始まった。

克己
 FC東京・室屋に待っていたのはいきなりの試練だった。春季キャンプ合流直後に左足をジョーンズ(第5中足骨基部疲労)骨折。手術は成功したが、復帰は5月中旬と見込まれる。
 「疲労骨折みたいな感じなので、どこかで折れるタイミングがあったと思います。明治の選手もお見舞いに来て、ユニホームにメッセージを書いてくれたので励みになりました。今は焦らずに自分がやるべきことをやっています。復帰してから五輪本戦はぎりぎりになるので、まずはコンディションの部分が一番重要です。代表でプレーする機会も少ないと思いますし、まずはFC東京で試合に出ることがアピールになると思っています。そしてピッチで活躍することで、支えてくれた方への恩返しをしていきたいです」。
 昨年からJFA・Jリーグ特別指定選手としてFC東京に身を置いたが、公式戦出場はなし。室屋はレギュラーを奪うために、もう一度この場所を選んだ。「逆境の方が燃える」。自他ともに認める負けず嫌いは、常に己と向き合い、過去を超えてきた。これが「室屋成」だ。今までの輝きは、この男が紡いでいく伝説の序章にすぎない。
【鈴木拓也】