前人未到インカレ4連覇 西野物語完結
この試合を最後に競技引退が決まっていた西野友毬(ゆうき)(政経4=武蔵野)が、女子フィギュアスケート界において史上初となるインカレ4連覇を果たした。SP(ショートプログラム)ではジャンプのミスが出て2位も、FS(フリースケーティング)で自己ベストを更新する演技を披露し、逆転。自らの引退を最高の形で飾った。
自己最高得点
誰も見たことがない景色が、そこにはあった。首位と0・42点差で迎えたフリー。会場にいた観客、選手ら全員の視線は、最後の演技を迎える西野に向けられていた。誰もが固唾(かたず)をのんで見守る中、幕は開いた。
冒頭のトリプルルッツはSPでミスがあったジャンプ。直前の6分間練習でも念入りに確認してうまく着氷し、連続ジャンプにつなげた。この成功で気持ちに余裕ができると、その後もジャンプをきれいに決めていく。2本目のトリプルルッツが抜け1回転になったが、ミスはここだけ。スピンやステップでも高いレベルを獲得し、持ち味の表現力も存分に見せつけた。演技が終わると、会場はスタンディングオベーション。割れんばかりの歓声が西野を包んだ。
「演技が終わった時に、ルッツでミスをしたので悔しさはあった。でも声援とか仲間の声がすごくて涙が止まらなかったです。スパイラルの前に『ラスト頑張って』と言われた時にああ最後だ、と思って涙が出てきました。実感があるのかないのか分からなくて、周りの声援で終わったんだなと。『ありがとう』と言われた時に込み上げるものがありました」。
最後のリンクの感触をかみしめるように、中央をゆっくりと一周してから深々とお辞儀をした。自己最高得点を出し、逆転での4連覇。これ以上ない結果が西野を待っていた。
未来でも輝く
「スケートだけで終わる人生にしたくない」。文武両道を掲げ入学した西野。大学4年間での引退は決めていたが、近年はジュニア世代の勢いに押され、練習もつらく、大学3年の昨シーズンで「やめようと本当に思っていた」。しかし、転機はそこで訪れた。コーチを樋口豊氏に絞り「練習から楽しく」滑ることができるように。「自分が感じることが変わった」とシーズンを通して好調を維持。「笑顔で楽しく」をモットーに、悔いなく競技人生を終えた。
「いい経験ばかりではなく、つらいこともたくさん乗り越えてきたスケート人生。つらかったけど、それを乗り越える経験とか乗り越えたときの達成感とか、うれしさとか、そういうのを経験できてよかったなと。いっぱいいろんな人に応援されて幸せな競技生活だったなって思います」。
卒業後はスポーツ関連の企業に就職する。「スケートでの経験を生かして人の役に立てたら」。世界で戦い、悩み抜いて決断し、最後まで滑り切った。西野が人生の分岐点でしてきた選択は、多くの人に勇気を与える。次の舞台でも西野らしく、輝く。
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