小川 一年生王者
世界への第一歩だ! バルセロナ五輪メダリストで世界選手権を4度制した小川直也氏(平2営卒)を父に持つ小川雄勢(政経1=修徳)が100㌔超級で優勝。大学入学時から目標としてきた大会で、父と同じく1年生で学生王者となった。父の直也氏は翌年世界選手権で優勝したが、小川も世界への大きな一歩を踏み出した。
成長
世界へつながる必殺技だ。ゴールデンスコアまでもつれた決勝戦。小川の大外刈りが5分40秒にも及ぶ激戦に終止符を打った。優勝の瞬間、倒れ込むように仰向けになりガッツポーズを決めた小川。その表情はやり切った満足感にあふれていた。この大会、小川の入った山は各地区優勝者、入賞者がひしめく最難関。決勝戦までの5試合中4試合で5分間フルに戦うという厳しい戦い となった。「決勝前は座っててもしんどかった」というほど既に疲労困憊(こんぱい)。決勝ではその疲労からか技がなかなか決まらず延長戦までもつれた。しかし、この日の小川はここからが違った。優勝を果たした東京地区大会、全日本ジュニアの決勝ではいずれも指導差での優勢勝ちだったが、この日は大外刈りで有効を奪い勝利。試合後は「できることを精いっぱいできた」と疲れた表情ながらも笑顔を見せた小川。先月の決勝戦とは異なり、相手を投げての勝利に確かな成長が見えた。
特訓
ぎりぎりの攻防の中で出てきた大外刈りの裏には恩師との特訓があった。高校時代、全国高校選手権優勝、全日本ジュニア優勝と華々しい成績を残した小川。その才能にほれ込み明大に勧誘したのが猿渡琢海監督だ。 小川を明大に導いた恩師の下、大学に入学してから真っ先に得意技の習得に取り組んできた。これまで小川は身長190㌢、135㌔という恵まれた体格を武器に相手に圧力をかけて攻めていく柔道スタイルで勝負してきたが、得意技がなく指導差で勝つこともしばしば。猿渡監督から「ジュニアでは通用してもシニアでは通用しない」と言われていた。そこで、まだ代名詞となるような技を持っていなかった小川が取り組んできたのが内股、大外刈りなどといった王道技だ。さまざまなOBから技の指導を受けてきたが、中でも大外刈りは猿渡監督直伝の技。「頭で考えなくても反応できるように」(猿渡監督)なるまで反復を続けるというスパルタだ。決勝戦ではふらふらになりながらも大外刈りが出てきたのは この練習があったからこそ。監督とのマンツーマンでの特訓が優勝につながった。
世界
学生の頂点は取った。父の直也氏は「俺はもっと苦労して取ったんだけどなあ」と苦笑いしながらも、息子の成長ぶりには目を細めた。その成長を促している猿渡監督とは、当時、日本中央競馬会(JRA)所属の直也氏が直接家にまでスカウトに行ったというエピソードがある。そしてその監督が息子をスカウトして指導しているのだから、運命を感じずにはいられない。「不思議な因果関係じゃないけど。いい意味のね」(直也氏)。父から監督、監督から息子へと、その思いは脈々と受け継がれている。11月には昨年1回戦敗退に終わった講道館杯も控えるが、今回の優勝で「シニアでの手応えもつかめた」と自信は十分だ 。学生一から日本一、そして世界へ。父のように飛躍を目指す。
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