見えた!!五輪の金 海老沼世界で復活

2011.09.28

 海老沼匡(商4)が世界選手権で見事優勝を遂げた。8月23~28日にかけてパリのベルシー体育館で2011年世界選手権が行われ、66㎏級に出場した海老沼は立ちはだかる世界の猛者を次々と撃破。終わってみれば、7戦中5戦で一本勝ちを決める圧倒的な強さを見せた。ロンドン五輪代表選出まであと半年。代表選出に向けてライバルとなるのは、昨年の世界選手権覇者・森下(筑波大)だ。今回の結果は代表の座をぐっと引き寄せるものとなった。

自身初の世界選手権優勝。世界選手権は五輪に次ぐ大会規模を誇る国際大会だ。今回の結果を振り返って、海老沼はどのように感じているのだろうか。

 優勝したこと自体はうれしいが、ここがゴールではない。この結果はあくまで通過点の一つ。周りがどう変わっても自分は自分のやるべきことをやるだけ。夢は五輪で金を取ること。何が何でも成し遂げたい夢。

 五輪代表の座は、昨年度世界選手権覇者・森下と争う。昨年の不調の影響で、世界選手権前の7月18日時点では五輪選考ポイントに514もの差があった。だが今回の優勝で海老沼は1190、森下は1016(9月26日現在)と逆転した。劇的な復活。これは昨年の世界選手権後の意識の変化から始まった。

 今までのようにがむしゃらにやるだけでは駄目ということに気付き「勝つためには何が必要か」を考えるようになった。その一環で柔道のことを考える時間とそれ以外の時間、つまりオンとオフをはっきりするようになった。自分は考え込んでしまうタイプなので、無意識に自分を追い込んでしまうことが多かった。だからオフのときには外に遊びに行ったり買い物に行き、柔道からなるべく離れるように心掛けた。オン・オフをはっきり切り替え、オンのときをより質の高いものにしようとするようになった。

 その取り組みが功を奏し、昨年12月のグランドスラム東京では3位入賞。4月には国内最大規模の大会である体重別選抜選手権において優勝を決めた。それでも不振の印象はなくならなかった。世界選手権での海老沼の注目度は、日本代表チームの中では低いままだった。

 今回の世界選手権直前合宿では他の選手の方が注目されていて、ほとんど記者から取材されなかった。「絶対に取材しなかったことを後悔させてやるからな」。そう反骨精神を持ちながら頑張った。

 今回の優勝は海老沼復活を印象づけるには十分だ。見事に不振の時期をはねのけ復活した。しかし戦いはここで終わりではない。2年前の講道館杯決勝で、当時五輪2連覇中の内柴正人選手(当時旭化成)を一本勝ちで破った時「いくら周囲の見方が変わっても自分は挑戦者」と語った海老沼。その姿勢は今でも変わっていない。夢の舞台での栄冠を目指して―― これからも海老沼匡は駆け抜け続ける。