
その瞬間、体が震え”神秘”を実感
「どう表現したらいいのかな…。体が震えるというか、武者震いみたいな。北米で一番高いところにいるんだなって。神秘的な気持ちだった。多分普通の生活では味わえないんじゃないかな」(佐々木主将)。自分の足で、マッキンリーの頂上に立っている。
「でっけー!」(佐々木主将)。今まで見たことのない世界が広がっていた。一面に続く氷河。底が見えないほど真っ暗なクレバス。大き過ぎて歩いても歩いても変わらない景色。日本にはない光景に「登山を初めてしているような感覚だった」(宮津・農3)。気候の移ろいが激しく、約20度もの急激な変化に耐えることもあった。
体に異常が表れたのは4000m地点の辺りからだった。高度障害が部員を襲う。頭痛、吐き気、倦怠(けんたい)感…。中でも「眠気がすごくて歩いたまま意識がなくなるような感じ」(小林・営2)、「鼻血が止まらない」(玉川・農2)と登山経験1年前後の下級生は体の異常に困惑した。
しかし、部員の気持ちは頂上へ向いていた。当初4350㍍地点までの登山を予定していた下級生も山頂を目指すことに決定。体はふらふらだった。たった数歩前へ出るにも息は上がり、進む速度は通常の2分の1のペース。標高が高くなるにつれ呼吸が乱れ、吸っても吸っても酸素が入らない。隊員同士をつなぐロープに体重を預け寝てしまうこともあった。それでも北米最高峰に続く道を一歩一歩重ね、見事登頂を果たした。
下山は高山病により下級生がヘリコプターで救助され、全員で行うことはできなかった。しかし、自分の足で山頂に立ったことは彼らにとって確かな事実。全員の足跡がマッキンリーの頂上に刻まれた。
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