〝夢〟のロンドン五輪見えた!海老沼匡グランドスラムV!

2009.12.13

 「12年のロンドン五輪で優勝したい」。一心に追い続けているその〝夢〟は、もはや夢ではないのかもしれない。海老沼匡(商2)、19歳。日本を制した若き明治のエースが、世界を相手に大躍進。格上の選手たちを次々と畳に沈め、見事にグランドスラム優勝という偉業を成し遂げた。

〝世界〟を前に

  グランドスラム。世界4都市で開催されるこの大会は、五輪、世界選手権に次ぐ主要大会として重要視されている。もちろん、出場選手も実力者ばかり。海老沼の前にも、世界ランク1位のH・ツァガンバータル(モンゴル)ら強敵が立ちふさがった。しかし、講道館杯、グランプリ・アブダビ大会と連続優勝を成し遂げた勢いそのままに、切れ味鋭い技で一本を量産。準決勝では昨年敗れた韓国のアン・ジョンファンから合わせ技で一本勝利を収め、ついに決勝へと駒を進めた。相手は世界ランク8位、変則的な組み手で戦うキム・ジョジン(韓国)。中盤にポイントをリードされる苦しい展開となったが、「焦ったら駄目だと思った。いつも通り、自分の柔道をすることだけを心掛けた」。慌てることなく冷静に試合を組み立て、内またすかしで有効を奪いポイントで並ぶ。迎えた試合時間残り1分41秒、「今まで左の背負い投げばかりやってきたから、相手も警戒していた。意識させるだけでもいいから反対から技をかけてみようと思った」。一瞬のスキを突いて相手の懐にもぐり込み、右からの背負い投げで一本。狙い澄ました技で奪った鮮やかな勝利に本人からは思わず笑みがこぼれ、会場はどよめきと大きな拍手に包まれた。

求めるものは

 「優勝はうれしい。でもこれで終わりじゃない。次で勝たなきゃ意味がない」。表彰式終了後、その顔から既に笑みは消えていた。彼にとってこの大会は、五輪という夢舞台への通過点。だからこそ、ここで満足してはいられない。今大会の結果、海老沼の獲得ポイントは584点に。世界ランク10位から、あこがれの内柴正人選手(旭化成)をも抜いて一気に日本人トップに躍り出た。五輪に直結するのは来年5月以降の大会で加算されるポイントのみとなるが、新制度が導入されたその年に、きちんと実績を残したことは評価に値するだろう。「もともと五輪を目指せるだけの力は持っている。でもさらに上を目指していくのなら、もっと自分で試合を支配できるようにならなきゃいけない」(園田助監督)。勝負は来年以降。今後は期待も要求も、ますます高くなっていくことだろう。周囲の声にどう応え、これからどんな活躍を見せてくれるのか。「ロンドンまで、一つ一つ全力で戦っていきたい」。柔道王国日本の次代を担う若武者は、ただ前だけを見据えている。