
金メダリスト内柴から一本!海老沼
五輪連覇の内柴正人(旭化成)が畳に沈んだ。再起を懸ける金メダリストに投げ勝ったのは海老沼匡(商2)。弱冠19歳の若武者が肩車禁止の逆境を乗り越え、講道館杯優勝を成し遂げた。
失った生命線
足をすくって担ぎ上げ、豪快に畳へたたきつける。自身の代名詞である『肩車』。この技に傾倒し、試合を組み立ててきた。7月のユニバーシアードでも肩車で金メダルを獲得した。
だが突如として国際柔道連盟が打ち出した、足取り技禁止令。国際化した『JUDO』でタックル技が横行する中、肩車まで反則技とされた。柔道の妙味である組みからの展開を増やすための苦肉の策であったが、肩車を生命線とする海老沼にとっては青天のへきれきだった。
海老沼の柔道は崩れた。技が出ない。優勝候補筆頭と目された9月の全日本ジュニアでは名も知れぬ相手にまさかの3回戦敗退。消極的柔道による反則負けだった。一本勝ちを信条とする海老沼にあるまじき柔道だ。敗者復活戦を含めた、日に2度もの敗北は海老沼の心を深くえぐった。
肩車なくとも
肩車がなければこんなものか――周囲から漏れるため息に「悔しくて仕方がなかった」。だが心は折れることはない。もう一度はい上がろう、今度は正攻法の柔道で。練習に打ち込んだ。それはこだわりの肩車を忘れ去る稽古。引き手・釣り手、体さばき、技の入り、リズム。丹念にすべてを一新した。
迎えた講道館杯。正統の柔道で試合のすべてを一本で決した。そこに肩車はない。あこがれの五輪覇者からも、小外掛けで技ありを奪い、返す刀で腰車一閃。「肩車がなくても勝てることを証明したかった」。得意技を封じられたことで、その才能は開花した。あこがれの存在をも超越した気概に満ちた柔道に、底知れぬ可能性を感じた日だった。
◆海老沼匡 えびぬままさし 商2 世田谷学園高出 170㌢・68㌔
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