卓球部・水谷が激白 明治、卓球そして世界
卓球界で「若き至宝」との異名を持つ水谷隼(政経2)。今年の全日本選手権では史上最年少で単複3連覇を達成、この春の世界選手権ではダブルス3位入賞、そして今月7日にはITTFプロツアー・中国オープンで、自身初のプロツアーダブルス優勝を遂げるなど、まさしく日本卓球界をリードするプレーヤーだ。日本を飛び越え「世界で勝つ」ことを目標にする水谷。その高い志の裏にあるものとは……。
強さを支えるもの
世界で勝つためには、ただ実力があるだけでは足りない。プラスアルファの何かが必要だ。
高山監督「技術、身体能力はもちろん高い。でも、勝ちへのこだわりは日本一。そしてものすごく冷静。ほかの選手と違って、得点したときに声を出すのも〝ここ1本〟というときだけ。試合中にも、対戦相手に合わせて自分の頭で考え、戦術を変えたりしている」。
大学生離れした冷静さと集中力、勝ちへの強いこだわり……。技術だけでなく、精神的強さを持つことが世界で名を残すためのカギとなる。ではその〝強さ〟を、どのように培ってきたのか。
世界で培ったもの
日本卓球協会の強化策で、水谷は中学2年時にドイツに渡った。世界トップレベルのドイツ・ブンデスリーガに参戦し、実力を磨く一方、身に付けた多くの事があった。
水谷「日本ジュニアナショナルチームのコーチをしているマリオというコーチが元ドイツのクラブコーチだったので、その人の指導を多く受けるためにドイツへ行った。そこでは格上の相手と練習できたし、試合もできた。ただ、分からないことだらけだったのでやっぱり過酷でつらかった」。
厳しい環境に身を置き、つらいと感じながらも努力を続けてきたのは、そのころから日本の代表としての自覚と責任があったからなのではないだろうか。
また、昨年10月からは世界最高峰の中国超級リーグに参戦。ドイツでの経験があったからこそ自分の目指すべきもの、海外で得られるものを分かっている。
水谷「中国リーグに参戦した理由は中国の強さを自分の目で見たかったから。またあえて過酷でつらい経験をして自分自身を鍛えたかった。練習方法が日本やヨーロッパとも少し違ったので日本に帰ってきて取り入れたりした」。
海外でのつらい経験が実を結び、試合での緊張やプレッシャーにも屈しない強い精神力を手に入れたのだろう。日本国内にとどまっていては世界で勝てない。早くから世界に目を向け、さまざまな経験を積んできたからこそ、今の水谷がいる。また右も左も分からない異国でのつらい生活、世界トップレベルの実力を早くから目の当たりにしてきたからこそ水谷は、感謝の気持ち、謙虚な心を持っている。日本一になっても決しておごることはない。
水谷「その経験があるからこそ今、日本語が話せる、日本食が食べられるというような、みんなにとっての当たり前を、僕は幸せだと思える」。
学生としての水谷
〝学生のオリンピック〟ともいわれているユニバーシアードの、日本代表選手団主将に水谷が選ばれた。
水谷「出場を決めたのは、出場したくてもできない人がいるのだから自分が選手に選ばれて幸せに感じなければいけないと思ったから。とにかくどの種目でもいいので優勝したい。主将としてほかの競技の選手に注目したい」。
世界で活躍する一方、常に〝明大所属〟で大会に出場する水谷。彼が明大生として感じていることとは……。
水谷「監督やチームメイトの力がなければ全日本3連覇や世界卓球でのメダルもなかったと思うしとても感謝してる」。
日本の、そして明治の学生として、世界で闘う水谷。ただ強いだけじゃない、真の実力者といえる彼は、日本選手団主将の最適任者といえよう。卓球競技に限らずとも、きっと日本を勝利へと導いてくれるはずだ。
これまで海外で培ってきた実力と精神的強さ、そして学生スポーツ界の主将としての責任――。それが、卓球選手・水谷隼の今を支えるものだ。「もっと上を目指したい」。世界銅メダルに満足せず、こう言ってのける水谷。彼が世界の頂点に立つ日はすぐそこにある。
<途切れぬ集中力と冷静さ>
水谷隼(政経2)・岸川(スヴェンソン)組が日本待望の世界選手権銅メダルを獲得した!! 劇的だったのは準々決勝だ。対戦相手はシンガポールのガオ・ヤン組。セットカウント3―2で迎えた第6セット、8―9。ヤンのサーブを水谷がレシーブ。台上から相手のバック側に返し、台のエッジに入ったかのように見えた。しかし審判の判定は、サイド――。「あり得ない」。2人は猛抗議した。会場の大型ビジョンに何度もリプレイが映し出され、試合を5分以上中断して審議が行われた。だが結局審判はこれを認めず8―10に。相手にマッチポイントを握られ、2人は追い込まれてしまった。
そんな中でも水谷は「5―10から8―10に追い付いてきたと思って試合しよう」と冷静に岸川を励ました。そこから驚異的集中力で連続得点。デュースに持ち込み、13―11で水谷・岸川組が試合を制した。
メダル確定のこの瞬間、水谷は岸川と抱き合い、喜びをかみ締めた。「一番期待されていたしメダルが絶対だった」という2人。会場の割れんばかりの祝福の声に、両腕を大きく振り上げた。
<主将としてユニバーへ>
水谷をユニバーシアード主将に選んだ日本オリンピック委員会の柳谷氏。その理由を「水谷選手は、北京五輪団体5位、09年世界卓球ダブルス第3位など世界大会でも好成績を挙げている。また今大会でもメダルを狙える候補だと思ったからです」と話した。
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