屈辱バネに激走、快走 「箱根」で復活!

2009.01.08

 自然と涙がこぼれる、胸の熱くなるレースだった。第85回大会は、3年生以下の選手が8人という若いチームで箱根路を激走。昨季の屈辱を乗り越えてチームが手にしたのは、総合成績8位、43年ぶりシード権獲得という結果だった。その裏には2人の1年生の躍進と、チームの底上げがあった。

明治の火付け役・鎧坂

 1月2日、東京都大手町。箱根駅伝のスタートを知らせる号砲が青空に鳴り響いた。最初に、この快挙の立役者となった第1走者の鎧坂哲哉(営1)。1位の矢澤(早大)には5秒遅れたが、区間3位の走りでチームを勢いづけた。

 鎧坂は5000m14分00秒8の世代最速ランナー。そのため多くの強豪校から声を掛けられたが、それでも明治を選んだ。「世羅高校同様、古豪と呼ばれる明治大学でも優勝したい」。自分の手で古豪明治を名門復活へ――。その思いがシード権獲得につながった。

 その勢いを受けて2区の石川(卓・政経3)、3区の北條(文3)、4区の松本(昂・情コミ3)、5区の小林(優・理工2)へと襷はつながれ、総合7位で往路を終えた。

抜群の調整力・細川(勇)

 そして迎えた復路。「往路に勝負を懸け、復路はその流れで勝負する」(西駅伝監督)と、復路は主力が手薄な状態。厳しいレース展開が予想されたが、6区の中村(文4)、7区の安田(情コミ3)が、順調な滑り出しを切った。

 するとここでうれしい誤算が起きた。それがもう1人の1年生、細川(勇・政経1)だ。「1人で淡々と走るタイプなので8区に向いていると思った」(西駅伝監督)と当日の朝に急きょエントリー。11月の上尾ハーフや1万m記録挑戦競技会では不振に陥ったが、それを感じさせないレースを展開。6位で襷を受け取ると山梨学大、中央学大を抜いて4位に。大学駅伝初出場ながら圧巻の走りを見せた。

 入学当初、「箱根のメンバーに入って、4年後に優勝を狙いたい」と語っていた細川(勇)。目標の半分はかなった。残り半分がかなう日も近いだろう。

 この貯金を生かし、9区の遠藤(文3)、10区の卜部(うらべ・営4)が健闘。アンカーの卜部が8位で大手町に帰還すると、大きな歓声が上がった。

”新生明治”の幕開け

 今回は1年生の活躍が顕著だったが、やはり全員が与えられた仕事をこなし、粘ったことがシード権獲得の根幹にある。駅伝主将の東野(商4)や松本(翔・政経2)が欠場する中で結果を残すことができたのは、選手層に厚みが増したからだ。万全の状態だったならば、どこまで順位を上げたかと思わず想像してしまう。

 43年ぶりにシード権を獲得したことにより、五大目標の最後を達成した本学。「43年前のことなんて今の僕らには分からない。でもそれ以上に、戦前から続く伝統ある明大競走部の部員として、43年間閉ざされていたものをこじ開けたということは、もっと上を目指していける第一歩になるのかな」(稲原・文4)。

 古豪明治から、新生明治へ――。来季は優勝争いに食い込むことも期待できる。明大競走部が再び常勝軍団と呼ばれる日も、そう遠くはない。