明大スポーツ第526号『アフターコロナ会話攻略法』 「MU STREET PARK」インタビュー拡大版④

明大スポーツ新聞 2023.01.22

 昨秋、駿河台キャンパスに明大初の〝キャンパスピアノ〟が設置された。御茶ノ水の街に響き渡った美しい音色の正体は、学生団体「MU STREET PARK(以下、MUSP)」のストリートピアノ。今回は、そんなMUSPで活躍する学生の声をお届けします。

(この取材は昨年12月14日に行われたものです)

 

◆10・26~12・23 MU STREET PARKプロジェクト(アカデミーコモン広場) 

・ストリートピアノの設置

・コーヒーの提供~カフェパンセコラボ~、MU WALLの設置

・くつろぎスペースの提供

 

MU STREET PARK(MUSP)とは?

 学生の自主的な活動を大学が支援するM-Naviプロジェクトの枠組みで立ち上がった学生団体。昨年10月から12月の毎週水曜日と金曜日に、駿河台キャンパスにあるアカデミーコモン前の広場におけるストリートピアノの設置やコーヒーの提供などを通して、居心地の良い空間づくりを実践した。

 

広報担当・山口さん(政経4)

人, 屋内, 衣料, テーブル が含まれている画像

自動的に生成された説明

(インタビュー中の山口さん)

 

――イベントに地域を巻き込む際、大変なことはありましたか。

 「苦労というか、私は発見が多かったです。ピアノを弾いている人について『学生さんですか』と必ず聞かれるのですが『いえ、私たちも全然知らない地域の方です』と地域の方に言うととても驚かれているので、どうしても地域の中で『学校の敷地だから学校の人しか使えない』という概念がかなり残っていると感じています。そこで地域の方に『みんなが使える広場ですよ』ということを認知させていく活動が大事だと感じています」

 

――動画などを活用したSNSの発信について教えてください。

 「動画、リールとかですね。リールに載せると拡散力が強く、意外とストリートピアノ界隈で盛り上がっている部分もあります。したがって、ストリートピアノによく通っている人や趣味にしている人に動画を撮っていただいたり、ツイートしていただいたりすると『Twitter見てきました』という別のストリートピアノに興味ある人がいらっしゃったりします。そうした感じでうまく人をつないでいける力になっています。動画も『こういう人たちがこういう音楽を弾いている』としっかり見せられていると思うので、人を呼び込む材料として担えているのかなと思います」

 

――MUSPは他の学生団体とも協力しているのですか。

 「何団体か声を掛けてみて『ぜひやりたいです』と言ってくれるところもあれば「ちょっと厳しい」というところもあって、反応はまちまちです。しかし感覚としてはあまり他の団体をうまく巻き込めていない部分があるので、またここから頑張りたいという感じがあります。あと意外とセッションをさまざまな人たちが少しずつやってくれるようになってきたので、学内の団体だけではなくて『個人でセッションをしたい人はどうぞ』ということも合わせて声を掛けていく必要があるかなと思います」

 

――『MU WALL』で印象に残っているメッセージはありますか。

 「めいじろうが『世界進出』と書いてくれて。一生懸命とてもでかいカードに書いてくれたみたいで(笑)」

 

円

中程度の精度で自動的に生成された説明

(『MU WALL』に貼られためいじろうのメッセージ)

 

――どのようなところにやりがいを感じていますか。

 「個人的なことになりますが、私は都市デザインの授業を受講していて、その後にイベントに来る流れになっています。私の中では、学んだことを1回試して駄目なら駄目で『何で駄目なんだろう』。うまくいったら『何でうまくいったんだろ』というのをみんなで共有しながら、形にできるという環境が整っているので、そこがとてもためになっている部分があります。みんなと試行錯誤するのがとても楽しいですし、やっていてやりがいを感じます」

 

――イベントを通して行っているコミュニティづくりについて教えてください。

 「社会人の方とかは忙しくて素通りされる方が多くて、逆に地域の人は明大の博物館を見に来たついでで、ゆったり時間がある人は立ち止まって見てくれます。そういうところで違いが生まれてしまいます。あとは賑わいの部分で、こちらから積極的に話しかけていっても、話すのが楽しいという人と、人と話さずゆっくり聴きたいという人もいて、私たちもプロではないのでガツガツ話しにいってしまう部分はあります。ただ、同じ空間にいる以上は同じものを共有したいなと思っているので、いかに立ち止まってくれるか。歩いているだけでも面白い空間を提供できるか、ということをこれからも考えていかなければいけないと思います」

 

――2022年度には新校舎・和泉ラーニングスクエアの利用が始まり、私たちもオープンキャンパス号の取材中、建設に携わった方々から学生が集まれる場を提供したいという思いを聞きました。今回のイベントもそういったところに通ずるものがあるのでしょうか。

 「通じるところでは、やはり家具って大事だなと思っています。ラーニングスクエアには家具でいうと、クッションや2人しか座れない椅子とかがありますよね、寝転べたりもしますし。今までのリバティタワーの家具といえば、平べったい木の椅子や寝転ばないようにボコボコしている椅子など、あまり人が居座らないようにされていて、留まっていてもお尻が痛くなってしまうような椅子が多いです。しかしラーニングスクエアは、ふかふかで居心地良くといった工夫がされているのかなとも思います。私たちも『ストリートファニチャー』と呼んでいますが、公共空間における家具にしても、居心地がいいとか立ち止まっていたいと思えるような家具をしっかり選ばなければいけないのかなと思いました」

 

(アカデミーコモン前の広場に置かれたさまざまな家具)

 

――対面コミュニケーションの機会が減っているコロナ禍において、対面イベントを開催する意義について教えてください。

 「やはり直接感想を聞けるのはとてもいいですね。『アンケートお願いします』というのは、自分でスマホを出してQRコードを読み込むというステップの負担が大きいと思います。しかし『どうでした?』と聞いた時に『楽しかったです!』と聞ける。感想をしっかり声として聞けて、さらにピアノの有識者からアドバイスを直接聞けたからこそ私たちもピアノの機能を知ることができて。生身の情報を活発に交換できるのがオフラインのいいところかなと思います」

 

――イベントに参加された方からはどのような感想が聞かれましたか。

 「地域ではなかなかピアノを聴く機会がなくて、来ていただいたおばあちゃんが座っていて『来ていただいてありがとうございます』と言ったら『お庭でこんなピアノが聴けてすごく嬉しい』と言ってくださいました。ピアノが弾けない人からすれば弾けるだけでもすごいし、しかもリクエストした曲を弾いてくださる方もいます。無料に聞けますし自由に来て聞いて帰ることできますし、地域の方からも評判ですし、私自身も一人の参加者として楽しいなと思っています」

 

――『ピアノを弾けない方でも弾いてください』というコンセプトの意図を教えてください。

 「どうしても『弾いている人たちがうまいから自分は…』と言ってハードル上げてしまうのがもったいなくて。『猫ふんじゃった』の曲しか弾けないとか、ピンって触るだけでも、何か体験を提供できればベストだと思っているので、触ってくれるというだけでも私たちはピアノを置いて良かったと思います。『弾くだけでなく触るだけでも来てください』ということだけでもやる意味はあると思います」

 

――今回のイベントの収穫と課題を教えてください。

 「収穫は、やってみようという思いとエネルギーを持ってやっていけば、形になることが分かったことです。課題は私たちがやっていることが万人受けするとは限らないなと考えています。ピアノは心地いいと思っていますが、授業をしている人からしたらテスト中とかはうるさいと思う人もいるのだな、と改めて感じさせられました。全ての人から賛成を取るのは難しく、折り合いをつけながら進めていくのは大変ですが、それも楽しいなとも思っています」

 

テーブルに置かれたピアノ

中程度の精度で自動的に生成された説明

(MUSPで使われていたピアノ)

 

――ありがとうございました!

 

[渡辺悠志郎]


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