(6)「部内一のマイペース男」――和田隆仁

1999.01.01
 部外大会で勝つ以前に、部内で勝たねば大会に出る権利さえ得られない、強豪・明大卓球部。その中で実力を持ちながらも出場機会に恵まれず、最終学年を迎えた眠れる獅子がいる。卓球部一のマイペース男・和田隆仁(法4)だ。

部内一の気分屋

 和田と話していると、時間が止まっているような印象を受ける。会話をしていても、一言一言がスローモーション。話す内容にも、あまり気迫や感情が伝わってくるものが少ない。それは会話だけにとどまらず、卓球も同様で「やるときはやるが、やらないときはやらない」と、ダブルスを組む大塚(商3)は言う。和田自身も、「卓球にも自分の性格が出ているのか、エンジンが掛かるのが遅い。追い込まれないとやらないし、集中できない」と苦笑いする。監督も認めるほどの、部内一の気分屋・和田。だがそんな彼にも、一つだけ「情熱」を注ぐ大会がある。関東学生1部リーグ戦だ。「自分もあの舞台に立ちたい」。いつもはおとなしい和田だが、リーグ戦の話をするときだけは目の輝きが違う。各校の代表選手が母校の看板を背負い、熱い戦いを繰り広げるリーグ戦への情熱――、それは「出たい」という単純な思いではない。そこには「卓球人生最後の年」に懸ける特別な感情がある。

最後のリーグ戦

 卓球部で過ごす最後の1年を迎えた今年、和田は一つの決断を下した。「自分の卓球人生を大学で終える」。どこか寂しげな装いを感じさせながらも、しっかりとした目でそう語る。だが卓球人生に終止符を打つ決断をした今、そんな和田には残り1年間で成就させなければならない思いがある。それがリーグ戦への出場だ。卓球人生最後の年をリーグ戦で飾りたい――。その切なる願いを実現させずに、卒業することはできない。

 「リーグ戦って、やっぱりほかの大会とは違う。勝ったらヒーローだし、そこに自分が立てたらって……。しかも4年目だと、きっとそれまでと違う感情とか味わえるんだろうな」とリーグ戦への言葉は尽きない。昨秋のリーグ戦優勝、一昨秋の優勝、そしてさらにその前の優勝……。「引退する最後の4年目に優勝を決めた4年生は、やっぱりほかの学年の選手とは違う特別な喜びみたいなものを感じた。自分もそうなりたい」。また和田自身の個人的な思いだけにとどまらず、「監督やコーチも自分を遠征に出させてくれたりと、色々チャンスを与えてくれている。その期待に応えなきゃって思う」。

 春季リーグ戦が迫った今、和田は「最近よく監督にダブルスの練習しっかりしておけよって言われる。だからもしかして出られるんじゃ、って大塚と話したりもしてます。でも、これで出れなかったら、笑いものですけどね」と、和田はいつもの笑顔を見せる。冗談のように語る和田だが、それは決して届かない夢ではない。部内一のマイペース男・和田、ラストシーズンを最高の形で飾れるか。

◆和田 隆仁 わだたかひと 法4 高知小津高出 175cm・63kg
<戦型>左・シェーク・フォア裏、バック裏・ドライブ型