明早戦で春開幕 札幌で接戦を制す/第11回関東大学春季大会Aグループ
北の大地で紫紺と燕脂(えんじ)の宿敵同士が火花を散らした。第11回関東大学春季大会Aグループ(以下、春季大会)の初戦の相手は早大。15人制では新チーム初めての公式戦となった春の明早戦は、接戦となったものの明大に見事軍配が上がった。
◆5・1 第11回関東大学春季大会Aグループ
▼対早大戦
○明大26{14―5、12―14}19早大
「ラグビーを楽しもうと話していた」(左ウイング石田吉平主将・文4=常翔学園)。注目の一戦は、選手も観客も最高潮の盛り上がりを見せた。
試合を最初に動かしたのは早大だった。早大の素早い攻撃にスキを突かれトライを許してしまう。その後はパスをつなぎ、何度も敵陣に攻め込むも早大の力強いダブルタックルを前にトライを奪うことができない。しかし、その流れを変えたのは明大の重戦車たちだった。前半26分、敵陣ゴール前でのマイボールラインアウト。明大に大きなチャンスが訪れる。モールを組み、相手の守りが薄くなったところにフッカー松下潤一郎(法3=筑紫)が飛び込みトライ。「前の人たちがモールを押してくれたおかげ」(松下)。今年度もセットプレーの強さは健在だった。一方でBKも負けていない。前半終了間際には、敵陣でのマイボールラインアウトから左右に展開し、パスを受けた左センター廣瀬雄也(商3=東福岡)がハンドオフで相手をかわしながら走り切ってトライ。「耕太郎(伊藤・商3=国学院栃木)がスペースに仕掛けてくれてギャップを突けた」(廣瀬)。廣瀬は難しい角度のコンバージョンキックも決め、14―5で前半を終えた。
後半2分、早速会場を沸かせたのはやはりこの人だった。相手のゴールラインドロップアウトから、右センター齊藤誉哉(文4=桐生一)のパスを受けた石田が自慢のスピードを生かし、走り切りグラウンディング。「取った瞬間に誉哉(齊藤)とあのように攻めるというのは決めていた。長い付き合いなのでアイコンタクトを取った」(石田)。リーダー陣同士の見事な連携プレーを見ることができた。そのまま明大ペースで進むかと思われたが、宿敵・早大の攻略は容易ではない。早大BK陣の素早い攻撃を前にトライを献上すると、なかなか攻め込むことができない時間が続く。互いに攻めては守る、まさに互角の戦いぶり。後半33分には相手に同点トライを許してしまう。しかし、「守備は問題なく、アタックも継続しすぎただけなので切り替えてやろうと話した」(ナンバーエイト木戸大士郎・文2=常翔学園)。明大は最後まで勝利を追い掛けていた。試合はロスタイムに突入。相手のペナルティーでマイボールとなり、タップでプレーを開始した。そしてFW陣でゴールラインまで突っ込み、富田陸(政経1=大阪桐蔭)がグラウンディング。「先輩が前につなげてくれて、ボールが自分に来たのでここなら取り切れると思った」(富田)。デビュー戦となったルーキーの活躍もあり、勝利を掴んだ明大。大学日本一奪還に向けて、順調な船出を切ることができた。
接戦を制したのは明大であったが、最後まで予想ができなかった今試合。約8000人の観客を前に、〝北海道ラグビーの日〟にふさわしい戦いぶりを見せてくれた。「コロナ禍でも、ファンの皆さんの拍手などがありとても楽しんでラグビーすることができた」(齊藤)。素晴らしい試合を届けてくれた両チームの選手たちに、大きな拍手を送りたい。
[豊澤風香]
試合後のコメント
石田
――新チームの初陣は白星発進となりました。
「初めの試合でうまくいかないこともあるという話はしていたのですが、自分たちが普通に勝てた試合を難しくしてしまった試合なのかなと思いました。勝って反省できるという意味では良かったです」
――主将として初めての試合でしたが、今までと試合の振る舞い方は違いましたか。
「レフリーとコミュニケーションを取ったり、主将の立場でチームとしてどういう判断をしていくのかということを考えました。(主将は)初めての体験だったので、そういう部分では少し苦戦しましたが、いい経験になったと思います」
松下
――セットプレーはいかがでしたか。
「ラインアウトはいつも通り自分のスローができて良かったと思います。スクラムは相手に合わせてしまったところがあるので、明治のスクラムをしたかったです」
――久しぶりの紫紺でした。
「試合前や前日はものすごく緊張したのですが、試合になったら楽しんでプレーできました」
木戸
――昨年度はフランカーでの出場でしたが、ナンバーエイトの難しさはありましたか。
「ナンバーエイトは初めてなのですが、FWのリーダーという感じがあって、みんなをまとめることや試合のマネジメントもやらなければならないので少し難しいと思います」
――意気込みをお願いします。
「春季大会は帝京大とも当たるので全勝で終えたいと思います」
廣瀬
――今日のテーマを教えてください。
「毎試合テーマを決めていましたが、今日はチームの中では決めずにいました。春シーズンのチームテーマは競争というのを掲げていて、チーム内でもライバルに勝つし、相手にも勝つという話をしています。早稲田には勝たなければいけないということはメンバーと話していたので、それは今日達成できたので良かったと思います」
――トライシーンの振り返りをお願いします。
「個人的にトライをすることはめったになく、紫紺を着てトライをしたのは1年生の帝京大戦以来だったので、久しぶりにトライをできてとてもうれしいです」
齊藤
――今試合はどのような戦略を持って臨みましたか。
「昨シーズンが終わってから積み上げてきたことをやっていこうということで、一人一人ワンブイワンで勝つことであったり、コミュニケーションを取ってディフェンスをしていくことを掲げてやっていました」
――チームの戦いぶりを振り返っていかがですか。
「勝ち切ったことはいい収穫だと思うのですが、まだまだ細かい部分で反則が多かったり、一発で抜かれてしまったりというところがあったので、そこを修正していきたいです」
富田
――トライを決めた時の心境を教えてください。
「紫紺のメンバーになって初めてボールを持ったときにトライを取ることができ、FWでトライを取り切ることができたので、先輩たちもたくさん駆け寄ってくれました。トライを取ることができて良かったです」
――今後の目標を教えてください。
「自分の持ち味を生かして、大学でも通用するフィジカルをつくり上げてこのままメンバーに入り続けられるように頑張りたいと思います」
関連記事 RELATED ENTRIES
-
笑顔で終わった廣瀬組/卒部試合
ラグビー 2024.02.054日、八幡山グラウンドで廣瀬組の卒部試合が行われた。グラウンドには大勢の関係者やファンが駆けつけ、朝降っていた雨も昼には止み、笑顔の絶えないにぎやかな試合となった。選手、スタッフ含め4年生29名が紫紺のジャージに袖を通し各学年との試合に臨んだ。 第1試合の1年生戦ではウイングに入った学生スタッフの児嶋基(情コミ4=明大中野)と大宮修平(理工4=明和)が躍動する。また、不京大也(営4=明大中野八王子)がラインアウトでジャンパーとなりチャンスを演出。選手、スタッフが一丸となって勝ち星を挙げた。トライを決めようとする児嶋 第2試合の2年生戦ではスクラムハーフ中山律希 (政経4=天理)が巧みなボールさばきをみせ、右ウイング山本嶺二郎 (法4=京都成章)が2トライ。「今シーズン初めてのトライだったのでうれしかった」。その後中山、山本が見事なコンバージョンキックを見せ観客を魅了した。コンバージョンキックを決める中山 最終試合の3年生戦では3年生が円陣を組み、1、2年生の花道を抜けて登場。会場の空気を上手につかむと全員ラックや、千手観音という奇策を講じ、4年生を苦しめる。それでも地力で勝る4年生がリードしラストワンプレー。廣瀬主将が4年生ベンチに声を掛けるとベンチにいた全選手がグラウンドに駆け込んだ。全員がラインアウトに参加し、心を一つにしたモールを体現。ハイブリッド重戦車の名に恥じぬ押し込みでトライを挙げた。最後のコンバージョンキックは4年生全員が次々とキックをする振りが繰り広げられ、最後に廣瀬主将が蹴りノーサイド。「最後キャプテンが蹴るって決まっていたけど、こういう形で終われたのは僕たちらしかった」(林哲平・文4=東海大相模)試合終了直後3年生たちに廣瀬主将は盛大に胴上げされ、無事卒部試合は終幕した。 全員ラインアウト 「もうとにかく楽しかった」(廣瀬)。試合を通して、ユーモアが溢れるプレーが見られ、部員はもちろん観客を笑顔にさせた。試合後には部員全員が整列し、廣瀬主将が挨拶。最後はグラウン内でそれぞれが記念撮影をするなど、各自が残りわずかとなった八幡山グラウンドでの時間を惜しんだ。『ONE MEIJI』を体現した100代目ラグビー部の悲願の夢は後輩へと託された。最後のコンバージョンキックを決める廣瀬[保坂啓太郎]READ MORE -
【瓦版】廣瀬組 悲願の日本一逃すも示した『前へ』/全国大学選手権
ラグビー 2024.02.045年ぶりの日本一奪還を目指し挑んだ全国大学選手権(以下、選手権)決勝。挑んだ相手は選手権2連覇中の帝京大。落雷や大雪など厳しい天候の中、激しい攻防を見せ奮闘するも、悲願の優勝には届かず。だが最後まで『ONE MEIJI』を体現し、2年ぶり13度目の準優勝で幕を閉じた。 「ファンと選手が一つになって日本一の集団を目指す」(左センター廣瀬雄也主将・商4=東福岡)。年内終戦に終わった昨年度から『ONE MEIJI』をスローガンにチームをつくり上げてきた。経験豊富な選手たちが多く「ここ数年を見てもレベルの高いチーム」(神鳥裕之監督・平9営卒)と期待値も高かった。だが、決して順風満帆な1年だったわけではない。春シーズン後にはネガティブな練習態度を指摘され「4年生でミーティングをした」(左ロック山本嶺二郎・法4=京都成章)。秋シーズンは感染症による選手たちの体調不良、廣瀬のケガによる欠場など予想外の問題がチームを苦しめた。しかし、その度に全員でカバーし合い『ONE MEIJI』となることで困難を乗り越えた。 迎えた決勝。落雷による試合中断や激しい降雪など厳しい環境となる。試合も先制を許し、苦しい展開に。それでも前半35分以降立て続けにトライを決め、王者・帝京大に詰め寄った。後半は、主導権を握られ劣勢に。最後まで『ONE MEIJI』となり諦めない姿勢を見せ続けるも、目指し続けた頂には一歩届かなかった。悲願の優勝とはならなかったが、試合を通して明治コール、試合後には廣瀬コールが国立競技場をこだました。また、部員席で試合を見守っていたノンメンバーたちが、涙を浮かべグラウンドの選手たちに手を振る姿も。「スタンドを見て悔しさと申し訳なさがこみあげた。だが、コールをされるともう後悔しようがない。明治を選んで主将をやらせていただいて、本当に幸せな瞬間だった」(廣瀬)。廣瀬組が最後に見せた80分間の死闘は、ファンからも選手からも愛された‶日本一のチーム〟であることを示した試合だった。 「(先輩たちは)明大の『前へ』という言葉を僕たちに明確に示してくれた。しっかり引き継いで『前へ』を体現したい」(ナンバーエイト木戸大士郎・文3=常翔学園)。4年生が残した思いは次の世代へ。この先も明大ラグビー部は皆に勇気と感動を与え続けてくれるに違いない。 [安室帆海] READ MORE -
帝京大に完敗 5年ぶりの日本一ならず/全国大学選手権
ラグビー 2024.01.145年ぶりの日本一を懸け挑んだ帝京大との決勝戦。前半は序盤こそ相手にリードを許す苦しい展開となるも終盤に2トライを立て続けに取り、12―14と反撃ムードで折り返す。しかし、後半はペナルティーも重なり流れは帝京大に。リードを広げられる中、最後まで反撃の糸口をつかむことはできず。最終スコア15―34で敗れ、2年ぶり13度目の準優勝で今年度の明大の戦いは幕を閉じた。 ◆1・13 全国大学選手権(国立競技場)▼対帝京大戦 明大15{12―14、3―20}34帝京大○ 開始早々、試合が動いた。前半3分、帝京大の左サイドへの展開とステップワークに対応できず、先制点を献上。直後のコンバージョンゴールも決まり、7―0とリードを許してしまう。その後は両者チャンスを作るもディフェンスが粘りを見せ、得点にはつながらず。前半22分には落雷の影響により選手がグラウンドから退くと、結果的に55分という長時間の中断となる。異例の状況下となり、コンディション維持が難しい中、試合再開直後にはラインアウトモールから追加点を許し、リードを広げられる。相手に流れが傾いたかのように思われたが、前半35分に反撃開始。敵陣5メートルのラックからパスで左サイドに小刻みに展開すると、最後は大外に構えた右センター秋濱悠太(商3=桐蔭学園)が3人のタックルをかわし、トライ。「前半の大事な1本目のトライを取れて良かった」(秋濱)。さらに39分、帝京大のノックオンで敵陣深くのスクラムを獲得。セット後、スタンドオフ伊藤耕太郎(商4=国学院栃木)からのパスを受けた左ウイング海老澤琥珀(情コミ1=報徳学園)が抜け出し、グラウンディング。「4年生のおかげで取れたトライだった」(海老澤)。12―14と両者譲らぬ展開で試合を折り返す。 「ハーフタイム中には、問題ない。大丈夫だと話した」(中山律希・政経4=天理)。確かな手応えをつかみ迎えた後半も雨と雪が降り続ける悪天候の中、開始。ところが、そのようなグラウンド状況の影響からか明大は立て続けにペナルティーを犯してしまい、ペナルティーゴール2本を決められ、点差を広げられてしまう。その後も必死の攻防を続けるも、相手の攻撃を止められることができず、点差が徐々に拡大。「簡単にボールを手放してしまった」(スクラムハーフ萩原周・商4=大阪桐蔭)。23分に左センター廣瀬雄也主将(商4=東福岡)がペナルティーゴールを決め、3点を返すが反撃もここまで。その後も相手の追加点を阻止できず、最後は15―34で無情にも終わりを告げるホーンが鳴り響いた。 明大の伝統に誇りを持ち、日本一奪還を掲げひたすらに走り続けた今年度。しかし、王者・帝京大の壁は高く、すぐそこにあった栄冠にはまたも届かなかった。それでも、試合後帝京大が歓喜の輪を作る中、国立競技場には廣瀬コールが巻き起こった。「本当にたくさんの方が応援してくれていたんだなと。明治を選んで主将をやらせていただいて、本当に幸せな瞬間だなと思い、いろいろな感情が込み上げた」(廣瀬)。「間違いなく100年で一番いいキャプテンだったと思う。副将として隣でラグビーができて幸せだった」(左ロック山本嶺二郎・法4=京都成章)。100周年という節目に優勝という記録は残せなかったかもしれない。だが、間違いなくチーム廣瀬の1年間は感動を与え続け、多くの人々の記憶に残っただろう。そして、その姿は次の明大の100年間を担っていく後輩たちの目にも色濃く映ったと同時に思いをつなげたに違いない。4年生が成し遂げられなかった日本一という夢を追いかけ、これからも明大ラグビー部は〝前へ〟と進み続ける。 [廣末直希]READ MORE