
明大アスレチックマネジメント 設立経緯や事業内容を聞く
2022年3月10日、明大競走部は「一般社団法人明大アスレチックマネジメント」(以下、MAM)を設立した。競走部への支援はもちろん、大学スポーツへの新しいアプローチを試みる目的で始動し、既に様々な事業を展開し始めている。
明大競走部にとって転機となる社団法人の設立。当然応援するファンもその内容が気になるところだろう。そこで今回はMAMの今後の方針や具体的な事業内容を、理事の1人として運営に携わる競走部の園原健弘総合監督に話を伺った。ファンはもちろん、明大生やOBOG、陸上競技に関わる全ての方に見てもらいたい。
社団法人設立の意図
競走部への支援に関しては競走部との業務委託契約というかたちになります。まず法人設立の目的の一つは、法人化しないと契約できないものがあるためです。大学陸上も一昨年からスポンサーをつけられるようになり、それまでは中川秀一部長個人名で契約していました。他にも部で使う車のリースなど、何かを契約するにしても監督や部長の名前を借りたりしていて、保証人を付ける必要があったりと不都合が多くありました。そのマイナス面をゼロベースに戻して、プラスの部分を創出していくつもりです。
具体的には、法人設立によって税務上の問題なども解決できるようになることで、スポンサーをはじめとした先方からのリクエストにもお応えすることができるようになります。また、あくまで学校の部活動ですので、今までは収益事業にならないという契約しかできませんでしたが、それが競走部に代わってできるようになるので、契約上の代理店業務みたいなところを行っていきます。
また、現在競走部のサポートチームはボランティアレベルで参加してもらっています。そこに対して収益事業からスタッフへの人件費なども補助できるようにしていきます。ファンクラブ会費などを通して、現役競走部への支援として合宿の備品や環境整備、新しく建設中の八幡山寮の準備物など、お金のかかることがあるので、そういうところを金銭的にアシストしていきたいと考えています。
収益事業に関して
様々な支援を実現していくためにいくつかファンクラブなどの収益事業を展開しています。今までは大学の方針で、競走部が一般の方から直接寄付をいただくのではなく、大学側のサポート資金のほうにお願いしていたり、OB会経由でお願いしていたので、一般の方からも直接支援を募ることができるようにしました。ただお金を出していただいている以上、さまざまなリスクも予想されますので、そういうのは社団の方でしっかり守りながら運営していきたいと思います。
また、スポンサーシッププログラムというものもあり、我々の活動理念に共感していただける企業様がもしいらっしゃれば、そこからのご支援も視野に入れています。明大生のお子さんを持つ保護者からも「明大競走部に協賛したい」という声を募集しています。こうした収益事業のために、税理士の方にもMAMの理事に入っていただいています。
運営にあたっての思い
プレスリリースでも出した通り「皆の競走部」というのを掲げています。明大競走部は1907年から歴史があって、明治大学のものではありますが社会の公共物であるという認識もしています。大河ドラマの『いだてん』が放送された時にNHKが部のホームページを見て「この記事、参照してもいいですか」と声をいただいたり、他大学が記念誌などを作成する際にも「ここ抜粋してもいいですか」というお話もいただいたので、こうした経験を経て日本の大学スポーツ史においても大きい存在だなと認識しているところです。箱根駅伝というビッグコンテンツもあり、一般のファンの方からの反応も含めて、公共性も兼ね備えた皆の競走部であるという認識を踏まえて運営していきます。
キャリア形成の手助けに
もう一つの事業として、キャリア支援を考えています。長く陸上をやってきた人たちもほとんどが一般企業に就職して、ここで陸上人生を断ってしまいます。しかし、今まで積み上げたキャリアを無にする必要はなく、技術も知識があるので、もし時間に余裕があるのであれば陸上を趣味的に続けていく応援もしていきたいです。自分の人生を豊かにするための趣味的なキャリアとして、例えば後ほどお話する地域貢献事業や講演会の講師として来ていただいたりしたいなと。こうしたことを望んでいたOBOGもいたかもしれませんが、個人ではやりづらい面もあったと思うので、この社団をプラットフォームにしてそういう情報を発信したり、選手としても講師としてもサポートできればと考えています。
明大生を巻き込んでのビジョン
明大サッカー部と同じようにはなりますが、明大生にここの社団活動に取り組んでもらうインターンみたいなかたちも取っていきたいと考えています。明治大学も教育としてとても良いプログラムがそろっていますが、やはり半分社会と関わりながら学んでいく場を提供していきたいです。競走部のマネジャーとしてだと、その業務に時間を多く使ってしまいますが、部員というかたちではなく競走部を支援する事業に関わってくれる人がいたら募集したいなと考えています。それこそ明大スポーツ新聞部さんが今肩代りしてくれている広報活動はもちろん、ファンクラブの運営などですね。若い世代のほうが社団スタッフよりSNSの使い方や情報発信の方法にも長けていると思うので、そういうのもサポートしてもらえる学生がいたら、現役学生、ひょっとしたらOBの中からも参加していただける人がいるかもしれませんが、この社団をキャリア形成のプラットフォームにしてもらえたらと思っています。
体育会の部に入って注力するのではなく、他のことにも関わりながら「私の持っているノウハウを競走部の促進につなげたい」という人の力も貸してもらえればと思います。力を貸してもらう代わりに大学の勉強だけでは得られない、社会と関わった実践的な経験を積んでもらいたいです。ある程度ビジネスライクな関わり方をしてもらいつつ、学校で培ったものをアウトプットする場をつくっていきたいです。
地域貢献活動も視野に
大学との話し合いがあるので少し難しいですが、せっかく八幡山という良い立地にあるので地域交流も実施していきたいです。明大競走部は町内会の打ち合わせに参加させていただいているのですが、グラウンドを開放して何かイベントを行うみたいことを実現できていませんでした。これだけ良いグラウンドがあるので、早朝散歩したり、マラソンブームのなかで見るだけでなく走りたいという方もいらっしゃいますし、そういう場の提供と、走り方や歩き方についての軽い講演会だったり、そういったことをやっていきたいなと。ただ、ここはあくまで大学の施設ですので、一般の方への開放はもう少し慎重に考えていくつもりです。
いずれはサッカー部はもちろん、他の明大の部活動と連携した活動もやっていきたいですね。これも学生、OBOGも関わりたいという声が上がればいいなと思っています。
グッズ販売に関して
MAM のTシャツをテスト的に販売したのですが、そしたら結構売れまして(笑)。そこも収益事業になりますし、明大サポートさんも協賛して競走部のグッズを販売してくれていますので、トレーナーなんかも選手が着て走るみたいなプロデュースをしていきたいと思っています。ゆくゆくは、毎年シーズンごとにラグビー部のようなスローガンを作って、それをTシャツのデザインに使うなどして、皆さんの日常の中で使っていただけるグッズの企画にしたいなと思っています。
これも、若い人のほうが情報を取りにいったりするのが早く、学生と同じ目線の意見、視点が必要になると思うので、学生の皆さんにもぜひ関わってくれたらと思います。とはいえ、お金の絡むことなので教育の場をしっかりサポートするツールとして、大学からの監督、指導もいただきながら実施していきたいです。
大学からも「収益活動に学生をコミットさせすぎないように」と言われているので、そこはうまく調整していきたいところですね。今後インターンに関わってくれる学生も「どこまでやっていいのか」「どこまで関わっていいのか」など分からないことが増えると思います。我々も手探りのなかで運営しているところなので、一緒に取り組んでもらえたらいいなと考えています。
※取材日 3月23日 (聞き手、書き手:金内 英大)
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