試合後インタビュー 山隈太一朗(1)/東京選手権

フィギュアスケート
2020.10.27

 東京選手権シニア男子で、見事初優勝を飾った山隈太一朗(営2=芦屋国際)。相次ぐ大会中止により今シーズン初戦となったが、SP(ショートプログラム)5位から逆転劇を見せた。試合後に行った山隈のインタビューをお届けする。

(この取材は10月15日に行われたものです)

 

――SP5位から最終順位は1位となりました。山隈選手にとってSP5位は悔しい結果だったと思うのですが、翌日のFS(フリースケーティング)までにどのように気持ちを立て直しましたか。

 「気持ちがまずSPの時は入らなかったというかすごく中途半端な気持ちで本番に入ってしまって、それが中途半端なミスに直接つながっていました。SP5位という結果は自分にとってすごく重たかったし、受け入れきれなかった部分はあったんですけど、とにかくまだFSが残っていて、FSで逆転するというよりかは自分の練習でできてることをしっかり本番でもやるっていうことだけにフォーカスしました。試合に入るときのメンタルティーや、モチベーションをどうやって上げるか。やっぱり観客の方がいたら歓声を受けてグッと引き締まったり、テンションが上がっていくんですけど、今年はそれがないのでその中でどうするかというのをSPではできなかったので、FSでしっかりモチベーションと緊張感を持つということをどうしようか考えていました。あまり結果に囚われすぎずに、どうしたらもっと集中できるんだろうというところにフォーカスしてFSに臨んで、そこにフォーカスしたから切り替えられたのかなと思います」

 

――どのように集中力を高めましたか。

 「アップの段階からSPの時はリラックスして入ろうと思っていて、リラックスして入ったらリラックスしっぱなしのところがありました。いつもウォーミングしながら気持ちを作るんですけど、FSではウォーミングアップしながらいつもより気持ちを早めに作りました。あとは、自分の中でウォーミングアップしながらずっとイメージトレーニングをひたすら切り替えること。あと6分間で入った時になるべく自分に歓声が聞こえているように思い込むじゃないですけど、自分で今こう入ったら名前をコールされてみんなに歓声をもらえるというのを全部イメージしながら入りました」

 

――観客の方がいらっしゃるのといらっしゃらないのでは、かなり差がありましたか。

 「滅茶苦茶影響は大きかったなと思います。ただやっぱり僕たちは見られる競技をしていて、自分が一つアクションを起こしたときに、それに対してお客さんが『ワーー!』と返してくれると自分の中でのテンションが上がるし、表現に対してももっとやればもっと歓声が大きくなるという、お客さんとのキャッチボールが一切なかったので、それが寂しいし自分の気持ちを作る上でものすごく難しいなと思いました」

 

――今回、FSの演技構成としてはどのような予定だったのでしょうか。

 「一応最初のルッツに3回転―3回転のコンビネーションジャンプをつける予定だったんですけど、今大会を通じてというか、試合の週からルッツが特におかしかったです。ルッツがすごく大きく乱れていたので、練習でもルッツだけがそんなに良くなくて、アクセルからの3連続はもともと結構いい確率で降りていました。構成通りにはFSをできなかったんですけど、構成を上げたことはなんとか伝わったと思います。大会を通じて3回転―3回転が綺麗に入らなかったことは悔しかったです」

 

――なぜルッツの調子が良くなかったのでしょうか。

 「いろんな原因があると思うんですけど、靴を変えてからまだ馴染まないというか、自分の思った通りにコントロールできていなかったです。本来であればそこを技術で埋め合わせることができるんですけど、まだルッツに対して細かい技術が掴みきれなかったので、技術で補えきれなかったです。おそらくそこが原因ですし、そんなすぐに靴が馴染むわけではないので、ルッツを技術でしっかり補えるように細かいところまで突き詰めた練習をしたいです」

 

――靴はかなり直前に変えたのでしょうか。

 「なるべく交換したくなかったんですけど、一つ前に使ってた靴が結構長く使っていて、それが急激に柔らかくなってしまって、この先東日本選手権、全日本選手権と考えるとブロックの前に変えることが自分にとってベストなタイミングだと思って変えました。正直もうちょっと早く馴染むと思っていたので、あまり試合直前に変えたわけではないんですけど予想よりも時間かかっているなという感じですね」

 

――靴はどのくらいの頻度で変えているのでしょうか。

 「昨年はすごく壊れるのが早くて2ヶ月とか3ヶ月持ったら自分の中で喜んでましたね。なのでそこからちょっと工夫して、自分の靴に補強してもらったりとか、そういうふうにして、1個前の靴は10ヶ月くらい持ったんですよね。僕はスケート選手の中でも身体が大きい方ですし、なおかつ身体の使い方がもう少し柔らかければいいんですけど、ちょっと硬い部分や力に頼る部分が強いので、その負担が僕の場合は全部靴にいってしまいます。その力の使い方がうまくいかなくて靴にどんどん頼っていって、早く靴がダメになるというのが結構ありました。昨年1年かけて柔らかい身体の使い方を、スケートを滑るにしてもジャンプを降りるにしてもそこを心がけて練習した成果でだいぶ身体が柔らかくなったので、1個前の靴は長く持ったのだと思います」

 

――昨年1年間で身体の使い方を柔らかくするためにどのような練習を行ってきたのでしょうか。

 「やっぱり朝練ですかね。朝トレーニングの中身がもっと良くなれば練習量自体もまず増えるし、クオリティの高い練習ができればそれだけ自分のためになるので、朝しっかりスケーティングを今までよりもより緻密に、今日の身体の感覚に対してどう使えばうまくエッジに乗れるんだろうという地味な練習をひたすら続けてきました。それがおそらくクロスが変わるとか、スケートのポジティブな変化につながっていると思います。何かメニューを劇的に変えたわけではないです。すごく地道な基礎練を朝ひたすらやってきた成果だと思います」

 

――演技からも練習の成果を感じましたか。

 「後から自分のプログラムを動画でも見たんですけど、細かい部分もそうですし、大きな部分だとプログラム全体の滑りで去年あった雑な部分がだいぶ消えてて、どういう風に足に力を伝えているかを外で見て自分でもわかるようになってきて、クロスも滑らかになってました。ステップもしっかり踏めるようになってましたし、ジャンプも特にアクセルとか綺麗に決まったジャンプは飛距離とか降りた時の流れとかの部分もすごく良くなってると思うので、目に見えて少しずつ進歩が出てきてると思います」

 

[中澤美月]

(2)に続きます。