今わたしたちにできることとは? バーチャレインタビュー(後編)

明大スポーツ新聞 2020.07.22

 今回は横田真人さんと楠康成選手への”バーチャレ”取材・後半をお届けする。

(この取材は、7月14日に行われたものです)

*前半はこちら

 

「記録を記憶に残す夏。」

 

 記録申請だけではなく、動画を提出することが必要。”バーチャレ”という名前とは裏腹、記録測定や動画撮影とアナログさが垣間見える。その意図は何なのだろうか。

 

「僕自身も、仲間やライバルと何かをやって、一つのものを作った経験を大事にしていたと思うんです。だから小規模でもいいから、その選手1人の走りに関わる人を増やして上げたい。動画を撮影する人、応援する人、クラウドファンディングで協力してくださる人たちも、結局はその”1人”の中高生の走りにつながります。そのつながりを僕たちが作ってあげて、そこに思いっきり中高生はチャレンジしてくれたらいい。その盛り上がりを見て、やってよかったと思ってもらえれば、僕たちも嬉しいです」

 

 また取材を通して印象に残ったのは”99%”というワードだ。全国大会の基準を突破することはできないが、青春を陸上競技に捧げる選手たち。インターハイ中止に伴い、ニュースで話題に上がったのは上位1%=全国レベルの選手がほとんどの中、バーチャレは全ての中高生という対象を発信し続けている。

 運営に携わるのは皆世界で活躍する一流のアスリート、ではなぜバーチャレは”99%”にこだわるのか。

 

「純粋に応援して欲しいから、ですかね。全国大会に出る選手ってピラミッドのたった1%くらいなんですよ。じゃあ残りの99%の話はどこに行ったんだろうと。スポーツって(数%の)彼らや僕らのためだけにあるのではなく、社会に根付いているからこそ価値があると思うんです。誰のためにスポーツがあるのかという視点が欠けていると、どれだけ強い選手が出ても、持続的に盛り上がれるとは僕は思えないんですよ。99%のためにスポーツはどうあるべきかが今回の議論の中ですごく抜けていると思った。その人たちが一番ファンになってもらうべきで、彼らに応援してもらわなかったら陸上競技はどうなっていくんだろうという危機感はあります」

 

 「僕らは、中距離という陸上競技の中では人気がなく人口の少ない競技をやっているので、よりその危機感があります。いくら言葉が先行していても、実際に何をやっているかが紐づかない限り、人ってついてこない。ただ、今みたいな危機的な状況こそ、僕は陸上競技ってなんだろうと、定義づけられるチャンスだと思ったんですよ。憧れというより、身近なかっこいい存在みたいなポジションがすごくいいなと思っていて。そう言った意味で地域に根差すとか、いろんな人が気軽に参加できることが大事だと思っていたんです」

 

――大学生という立場に、何かできることはありますか。

「立場が近いからこそ、ボランティアとか、この大会についての思いを語るとか、後輩に参加を呼びかけるとか、僕らがやるよりも響きやすいのかなとも思います。きちんと仲間との時間を形に残す大事さだったりとか、参加することで見えてくる何かというものを、大学生の立場だからこそ伝わることってたくさんあるのかなと。(僕らの)思いに共感してくれたら、存在をまず知ってもらうために少しでも動いてくれたら、それだけでも参加してくれることに価値があるなと思います」

 

「経験したから本当に大事な経験だと気づく、ということを、再確認してほしいというのはあります。『誰に憧れているの?』と聞くと、やっぱり中学生は高校生に、高校生は大学生に憧れている選手が多いんですよ。なので、僕に言われるより、昨年まで同じ部活でやっていた先輩に『こんなのあるよ』と言われた方が絶対出たいと思う。やりたいって思うし、一緒に盛り上がりたいって思うと思うんですよ。パワーを持っているからこそ一緒に盛り上げてほしいです。もともと立ち上げメンバーにいなかったけど、いろんな形で動いてくれる人がいる、それこそ真のバーチャレになっていくのだとと思っています」

 

 走るのは中高生だけ。しかし関わる人全員が大会を作っているんだーー。この夏、いつもとは違った方法で、誰かの記憶を作る1ピースになれるかもしれない。

 最後に。これからいよいよ大会が本格的に開始する上で、お2人の率直な思いを語っていただいた。

 

「正直何が起こるかよくわからないです。蓋開けてみたら3人かもしれないし、1万人かもしれない。ただその中で、中高生に参加してもらって思い出をしっかり作ってもらう、そういう時間を大事にするのが軸なのでそこはブレずに行きたいです。まあいろいろ始まってからの方が大変な気がしますね(笑)」

 

「小規模でいろんなところでたくさんの人が関わってくれるのが理想的です。横田さんら運営の方々が向いた方向に対して、しっかり裾野を広げるのが僕ら選手にできること。華があるうちにしっかり下にパワーを伝えていきたいです。あともう一つは終わってからですね。スポーツは集まって競うこともそうだけど、こういうあり方もあるんだよと、今後も継続して伝えていくことが、僕たちの仕事かなと思います」

 

[仁科せい]

 

◆横田 真人(よこた まさと)

 日本選手権800メートルで6度の優勝を誇る元日本記録保持者。

 2012年のロンドンオリンピックにも出場、日本中距離のトップを担ってきた。

 現在は『TWOLAPS TC』の代表を務める。

 

◆楠 康成(くす やすなり)

 阿見アスリートクラブ SHARKS所属。TWOLAPSの所属アスリートである。

 2017年には単身でアメリカでトレーニング。

 2019年からは3000メートルSCに挑戦、日本選手権優勝とオリンピック出場を目指している。

 

◆担当記者から◆

 なぜ明スポが”バーチャレ”を取材するのか。取材を経て考えたのは、スポーツはつながっているということです。中高生は未来の大学生であり、誰もがかつては中高生だった。その決して切っては考えられないその関係を大切にしたい。お2人のお言葉を詰め込んだこの記事が1人でも多くの人に届きますように。そして、1人でも多くの人にバーチャレが広がりますように。


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