8泊9日の野営生活 チームで育む愛/夏季合宿

ローバースカウト 2019.09.15

 前期の集大成として8泊9日で約140キロの道のりを歩き抜く。岩手県で行われた今年の夏季合宿のテーマは〝愛〟。「班それぞれの個性を生かし家族のようになってほしい」(田中篤志主務・政経3=戸山)。班から家族への過程を通してチームの在り方を探った。

 

◆8・21~29 岩手県・花巻~北上~田瀬湖~遠野~茂市~宮古~浄土ヶ浜~姉ヶ崎

 

 取材はハイクとしてはゴールにあたる8日目に行った。前夜からの大雨による警報が出ており、ピストン輸送でチェックポイント2からのスタート。当初の予定よりも約10キロ縮めた20キロの実施となった。


 1、2年生6人で構成される班に班付きと呼ばれる3年生1名が見守り役として同行。筆者はチェックポイント3からゴールの6まで松下敬太(理工2=帝京大)率いる6班に密着した。

 ゴールまで部員たちは紙の地図を読みながら進んでいく。2年生が中心となって読図するが、ローバー技術の継承も重要な課題。単に道を教えるのではなく、次の世代のために1年生を指導することも必要だ。


黄色のTシャツがトレードマークの6班



 道の歩き方は班によって大きく異なる。コンスタントに歩き続けられる班もあれば緩急付けて歩く班も。6班は上り坂が大得意だ。重いリュックを背負っていると後ろに倒れ込みそうになり体に負荷もかかるが「テンションを上げていきましょう」と声を出し、一層元気を出して上りきった。「目標を捉えました!」と叫ぶなり前方のほかの班に向けて走り出したのは谷村優太(情コミ1=中京大中京)。突飛ながらも彼の無邪気な行動に班員一同笑みが漏れ、ゴールへ向けて歩き出した。

 そうはいっても連日の疲れは確実に体に跡を残している。膝のサポーターや湿布、包帯を着けた部員の姿が至るところで目についた。普段はたいしたけがにはならないまめや擦り傷も命取りになる。たまった疲労と休養の少なさで傷がふさがらず膿んでしまうことがあるからだ。そのため班員どうしでけがは悪化していないかと気を配り合っていた。

 

チェックポイント3を出発する6班


 チェックポイント4は、宮古市の有名観光地である浄土ヶ浜だ。木々の合間から海が見えると部員たちは歓声を上げ、到着するやいなやリュックを下ろして海ではしゃいでいた。長くはない休憩を終えると、待っていたのは長い長い上り坂。足を負傷している松下班長と一番重い25キロのリュックを背負う千葉陽介(理工1=仙台一高)には特に過酷で雰囲気も重くなってしまうが、ここで活躍したのが女性陣だ。明るく合唱しながら先頭を歩いてタイムキーパーを努めた。班員がかわるがわる班を引っ張る6班を見つめ「部員としてうらやましいです」とこぼしたのは班付きの遠藤裕樹主将(政経3=海城)。実は昨年度の夏季合宿の際、遠藤が班長を務めた班はバラバラでのゴールになってしまい悔いが残ったという。その班員だった松下が班長を務める班は「誰かがきついときは誰かが盛り上げる、まさに目指すべき姿そのもの」(遠藤)へと夏季合宿を経て成長したのだった。

 チェックポイント6のゴール間際、部員たちを濃霧が包んだ。もやのかかった暗闇の中、今日までの出来事を思い返すと「ゴールしたくない」と口々に話した。おもむろに手をつなぎ始めると、遠藤も呼ばれ一番端に並ぶ。3年生の幹部や先に到着した部員たちに囲まれてゴールテープを切るとみんなで肩を抱き合った。「去年の自分の班長だった先輩が、自分が班長を務める班で一緒に手をつないでゴールしてくれてぐっときました」(松下)。遠藤にとっては「3年間の中で一番のゴール」となった。

                    

〝全員〟で一列に並びゴール


 部員から家族への道は険しい。合宿を通して「理解の一歩先、共感のステージには達した」。しかし「何も言わずとも分かり合える〝家族〟にはまだなれていない」(遠藤)。ここ岩手で培った愛とこれから経験する100キロハイクなどの活動を通して、家族のような最高のチームをつくっていく。

 

[田崎菜津美]

 

完歩後のコメント

平良仁志監督

――今合宿の目的を教えてください。

 「今年度から通年班なので班柄を深め班を充実することです。また、プログラム的に遠野の文化を学び、知ってほしいということです」


遠藤

――主将として合宿を振り返っていかがでしたか。

 「最終日が近づくにつれ、班員は何が得意なのかという個性を班長が理解し、それぞれが一番生かせる場所に配置して最高のパフォーマンスをするように動かしている感じがしました。一つずつ歯車が噛み合っていきました」

 

――6班の班付きとしていかがでしたか。

 「昨年、写真撮影の時に、自分が班長をした班の班員だった松下が、泣いている2年の女子部員を優しく抱きかかえて写真を撮ました。その顔を見たとき大人になったと思いました。少し子どもっぽく楽しむところもありますけど、辛い経験を経て優しく包み込むところに成長と班長らしさを感じました。班長としての松下敬太になっていました」

 

田中

――この経験を生かしてどのように活動していきたいですか。

 「自分の都合ばかりで行動していると必ずどこかでつまずいてしまいます。それにいち早く気づいて、自己主張しすぎず相手に合わせて調整していくというのが一番の肝です。ちょっと違うなとかイライラすることがあったとしても、グッとこらえて他の人と合わせてやっていくという経験が今後、社会人になって役に立つと思います」


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