男子舵手なしクォドルプルが連覇達成! 男子2艇が優勝/全日本大学選手権

2015.08.24
 大学ボート日本一の称号を懸けた全日本大学選手権で男子シングルスカル、男子舵手なしクォドルプルの2艇が優勝を果たした。舵手なしクォドルプルは昨年の創部初優勝に続き、創部初の連覇を達成。総合順位では男女共に2位に終わったが、12艇中9艇が決勝進出を果たし2位以上には6艇が入った。「ゼロからの挑戦」を掲げた111年目の集大成であるインカレで確かな足跡を残した。

「悲願達成ならず 男女とも総合2位に終わる/全日本大学選手権」
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 再び歴史を塗り替えてみせた。男子舵手なしクォドルプルは2位に約4秒差を付ける圧巻のレースで、連覇を達成した。スタートではライバルである日大に出られるも、決して落ち着きを失わなかった。クルーリーダー櫻井克成(法3=岐阜県立加茂)を中心に声を掛け合い、レース中盤で船を伸ばし続けた。「もし仮に出られたとしても落ち着いて自分たちのこぎをすれば勝てるから」。昨年の創部初優勝を経験している櫻井がレース前に伝えたこの言葉をクルー4人が信じ続けた。第3クォーターでトップの日大に並ぶと「日大を差せる、いける」と4人の気持ちはシンクロ。「最後は笑ってこげた」と大西佑磨(商1=関西)。楽しむ気持ちを何よりも大事にしてきたクルー4人は、トップでのゴールを決めると幾度もガッツポーズを決めてその喜びを爆発させた。
 「みんなが僕を男にしてくれました」(鳥居靖久・営4=二俣)。ストロークを務めた鳥居は4年目にして初めてインカレ決勝の舞台に立った。連覇のプレッシャーが懸かるクルーに抜てきされたが「僕は頼れる3人のために無心でリズムをつくるだけでした」(鳥居)。決勝ではストロークとしてラストスパートへつながるリズムをつくり出す。「鳥居さんを一番上に立たせてあげられたことが何よりもうれしい」と濱口稜(政経3=法政二)。表彰式では優勝トロフィーを鳥居が高々と掲げた。昨年まではエイトクルーとして敗者復活戦の壁を越えられず、3日目以降のレース経験すらなかったが「今までの3年間が無駄じゃなかったなと思いました」(鳥居)。最後のインカレで見事に有終の美を飾った。

 ルーキーが躍動した。男子シングルスカルの古田直輝(政経1=米子工)は初出場のインカレで見事に優勝。強心臓の古田も決勝では「アップ中に足に思うように力が入らなかった」。硬さもありスタートこそ斧澤(東経大)に出られたが、ジュニア世代のアジア頂点に立った古田の実力は揺るがなかった。スタートの遅れを取り戻し、500m地点でトップに立つと「相手を抑えながら、相手が攻めてきたらこっちも逃げるという感じのイメージ」という狙い通りのレースを展開。男子種目の決勝レースの先陣を切った古田が、磐石の優勝でチームに勢いをもたらした。

 男女総合優勝こそ成し得なかったが、チームとしての成長が確かに感じられるインカレとなった。そしておよそ3週間後には4年生の引退レースとなる全日本選手権が控える。「今年こそは2冠を取りたい」と濱口。昨年かなえることができなかったインカレと全日本の2大タイトル獲得へ闘志を燃やす。暑い季節はまだまだ終わらない。

[鈴木拓也]

試合後のコメント
男子舵手なしクォドルプルクルー・鳥居

「(最後のインカレはどんな気持ちで臨まれたか)舵手なしクォドルプルは昨年優勝を取ってくれて、連覇が懸かるプレッシャーはあったんですけど、本当に僕は後ろの後輩たち3人を信じて頼り切りました。僕は頼れる3人のために無心でリズムをつくるだけでした。(これまでのインカレは)僕は3日目、4日目にレースするのが初めてなんですよ。これまで2日目で負けちゃってレース出られなかったんですけど、この勝利一つで今までの3年間無駄じゃなかったなと思いました。本当に感無量です。(予選、準決勝のレースは)このままのこぎじゃダメだということは思っていました。予選やってみて、修正することはあったし、準決勝やってみて、さらに修正することがありました。でも最後の2000mは抜けることなく、こぎ切って、100%、200%の力が出せたかなと。僕自信男になることができたという気持ちですし、後ろの後輩3人はこれから明治を背負っていく3人になるだろうと確信しました。(決勝のレースは)スタートで出られることは覚悟の上で、今までのレースを見て他のクルーがスタート早いことは分かっていたので、4人ともそれで焦らずに中盤まで粘ることができました。それで中盤でのコールへの反応もすごい良かったですし、僕が思うのは必然の優勝だったと思います。(優勝できた要因とは)僕本当に3年間ダメダメで、それでいきなりクォドにぽーんと乗せてもらって、頼りない先輩だったと思うんですけど、後輩たちがそんな僕をストロークポジションに任せてくれて、ついてきてくれました。僕自信後ろの3人を頼るし、3人も僕を頼ってくれた結果だと思います。(ストロークで苦労したことは)予選と準決勝ではいいリズムで中盤につなげることができませんでした。結構身長差があって、僕と大西が170前後、櫻井と濱口が180前後なので、体格では差がある中でこぎを合わせるのが大変でしたが、最後のレースでは自分たちのこぎを確立して、中盤から後半にかけていいリズムをつくることができました。(クルーリーダー櫻井について)僕は種目のノウハウもよく分かっていなかったので、昨年も優勝の立役者だった櫻井に任せようと思って、クルーリーダーとしての仕事をクルーを組んでから今まで果たしてくれました。4年生である僕のことを立ててくれて、自分の意見もしっかりと言ってくれました。来年も3連覇に導いてくれる選手だと思います。(最後のインカレはどんなインカレになったか)みんなが僕を男にしてくれました。僕を明治大学に送り出してくれた二俣高校の先生に最高の恩返しになりましたし、今まで支えてくれてお母さん、お父さん、同期、後輩、マネジャーたち、本当にいろんな人に支えられたレースだったと思います」

男子舵手なしクォドルプルクルーリーダー・櫻井
「(決勝のレースは)前半で最初出られてしまったんですけど、試合前に鳥居さんと他二人にも言ったんですけど、もし仮に出られたとしても落ち着いて自分たちのこぎをすれば勝てるからと声を掛けて本当にその通りにやってくれたので勝てたレースだったと思います。(レース中はどんな声を)いや、覚えていないですね。自分が何を言ったか覚えていないので。でも第3クォーターで日大に並んでそこからは『勝てるよ』とコールを掛けて、それ以外は覚えていないです。(インカレ約3週間前にはポジション変更もあったそうですが)僕のこぎが割と合わなくて、僕は3番が向いているのか分からないですけど、3番でこぐことも多いので。自分に適したポジションに乗るのがいいのかなと。鳥居さんは最後のインカレですし、自分の力で勝ちを取ってもらおうとストロークをお任せしました。周りから見たらあまり良くないと言われていたんですが、試合が始まってみたら練習以上にいいレースができたというか、最終日に一番いいレースができました。(4年生の鳥居さんと乗ったことへの思いは)1年生のころに4年生と乗らせてもらって、そこで4年生を勝たせてあげられなくて散々泣いた思い出があるので、今回3年生になってまた同じように4年生と乗って今回勝てたというのは素直にうれしいです。最後僕たちと乗って一番良い結果が残せたこともうれしいです。(クルーリーダーとしては)おもしろい人たちが集まったので、そんなにギスギスすることなくこげたのは良かったと思います。どんなメニューを提示しても、まあ嫌な顔はしますけど、練習になったら一生懸命やってくれたのでそれが勝ちにつながったのかなと思います。周りからは本当に大丈夫なのかと言われましたし、おもしろいクルーができあがったなと。鳥居さんを勝たせてあげようというほんわかした雰囲気で始まったんですけど、でも試合になったらいい集中力でやってくれたんでそこは単純にポテンシャルが高いクルーだったのかなと思う。(舵手なしクォドルプル2連覇へのプレッシャーは)特にはなかったですね。やっぱり鳥居さんを勝たしてあげたいという気持ちの方が強かったですね。(昨日の準決勝終了後は完成度は良くないと言っていましたが)昨日は本当にきついレースをしてしまったので。あれ以上つらいレースをすることはないだろうと思っていましたけど、まさかこんなに良くなるとは思いませんでした。想像以上についていましたね。明治の男子クォドでブランドをつくりたいとは1年生のころから思っていたので、来年もできればクォドで乗って3連覇したいですし、大西とか優秀な後輩が受け継いでいってくれればと思います。(練習から意識されていたことは)楽しくこぐことだけですね。本当につらいスポーツなので楽しくこがないと。ということをみんなに言い聞かせながら、どんなにしょうもないこぎをしちゃった時でも明るく声を掛け合いました。決勝のレースも楽しかったですね、勝つだけだったので。(男子部は惜しくも2位となったが)そうですね。でも年々総合優勝には近づいているので、来年僕らの代で優勝できればなと思います。(来月には全日本が控えますが)昨年はインカレ優勝してからの全日本ということで、油断じゃないですけど負けてしまっているので、今年はおごることなくまた優勝できればと思います」

男子舵手なしクォドルプルクルー・濱口
「予選と準決勝は内容が本当に良くなくて不安でした。練習の時も船が全然進まなくて。昨年も同じ種目で優勝はしたが、足を引っ張ってしまって周りに助けられたことが大きかったです。今年は自分が声を出してみんなを支えて、発艇する2分前も鳥居さんがストロークで一番固まっていたので『後ろ3人がしっかりと支えるんで、何も心配せずに楽にこいでください』と声を掛けて、あとはバウを1年生の大西に任せて『お前は1年生だからって消極的になるな。ガンガン攻めろ、前3人が支えるから、絶対勝つぞ』と言って、みんな握手して気持ちをそろえてから入りました。今日のレースで一番感じたのは最後の最後まで4人の気持ちが伝わってきて、本当に船の進みも一番いいものが出て、中盤で目指していた長く船を運ぶリズムが出せた。オールをこいでかいて進むのではなくて、船を伸ばして進むリズムを鳥居さんがつくってくれて、大西も『いこう、いこう』とどんどん声が出て、どんどん離していって、最後ゴールしてみたら日大と4秒差、1艇身以上の差をつけることができて、圧倒的な勝利で2連覇を達成することができました。本当に感無量というか正直、このクルーはポンコツ扱いをされていました。鳥居さんを一番上に立たせてあげられたことが何よりもうれしいです。ストロークの鳥居さんは4年生になるまで、ずっとエイトに乗っていて決勝にもいったことがなかった。実を言うと鳥居さんをストロークに持ってきたのは自分で、それまではずっと櫻井がストロークに乗っていたんですけど、何か違うなと思って、鳥居さんなら何とかいいリズムをつくってくれると思って、コーチの言葉も無視して、鳥居さん整調やってくださいという感じで。それで昨年と同じで真ん中が櫻井と濱口を置いてミドルは二人でつくりますと。あとは1年生の大西。明るい雰囲気が出せる大西を一番後ろに置いてどんどん声を出させました。このポジションに3週間前くらいに変えたんですけど、コーチの言葉も聞かないでやっちゃいましょうという感じでした。でもそれが本当にうまくいったのかなと。鳥居さん真面目なので一回一回の練習でしっかりとやって、いいものを出してくれていたので、その真面目さが最後の決勝でいい長さをつくってくれたのかなと思います。個人的にはあと1回インカレが残されているので、この種目で出るかは分かりませんが、縁があってこの種目に乗ることがあれば3連覇をたたきこめるようにしたいです。(来月には全日本が控えますが)昨年は2冠取りたいですと言ったんですけど、結局全日本3位に終わってしまったので、口だけにしたくないので、今度こそは2冠を取りたいです」

男子舵手なしクォドルプルクルー・大西
「(決勝のレースを振り返って)スタートは出られちゃったんですけど、レース前に櫻井さんからもし出られちゃっても焦るなと言われたんですよ。それで予定通りといったらあれですけど、日大に1挺身以上出られてしまいました。でも中盤で僕たちは落ちなくて、どんどん伸びていったですよ。それで第3クォーターの途中から日大差せる、いけるという感じになってきて、本当に最後は笑ってこげたというか楽しいレースでした。櫻井さんを信じてこいで、濱口さんが前にいて安心して、特に鳥居さんが4年生で引退が懸かっていたので、鳥居さんを笑って引退させてあげたいという気持ちでした。でもレース中は頭が真っ白で、鳥居さんがいるからとかではなく無我夢中でこいで、終わった時にすべてが蘇りました。2連覇できた、鳥居さんを笑って終わらせられると思いました。(初のインカレでの緊張感は)ありました。僕が乗ってもいいのかなと思って、僕が乗るより古田が乗った方が優勝の可能性は高くなるので。でも内心古田がスカルにいって、1年生のスカル勢は古田だけじゃないということを見せられて良かったです。(バウとして心掛けたことは)みんなからコールが心配だと言われていましたが櫻井さんから『大西信じるからよろしく』と言われて、後輩だから思い切りやりました。先輩が絶対に何とかしてくれると思っていたので、僕は失敗してもいいから最初からいきました。全てが報われて良かったです。(クルーの強みは)みんなが大きい分パワーでは負けないと思います。レース見ても第2、第3と変わらなくて第4で上がっていて、それに現れているなと思います。いつもは6分16とか17秒でこれじゃ優勝できないと思っていたんですけど、順風が吹いてもタイムが出なくて、でも今日派6分5秒で、あれ5秒とかって思いましたね。(来月には全日本が控えますが)もちろんインカレで優勝することができたので、全日本でも優勝します」

男子シングルスカルクルー・古田
「(決勝のレースは)プレッシャーはありました。アップ中に足に思うように力が入らなかったです。まずいなと思って、それで追い討ちをかけられるように東経の4年生が前半から結構出てきたので足が動かなくなりました。やばいなと思ったんですけど、そこは落ち着いて最後まで何とかいくことができました。1000で出てしまってとにかく相手を抑えながら、相手が攻めてきたらこっちも逃げるという感じのイメージ通りでできました。でも自分の中では60点、70点くらい。今の自分からしたら100%かもしれないですけど、まだまだこんなこぎじゃ上にいけないと思います。優勝はしたんですけど、もっとうまかったら大差をつけて勝てたと思います。勝てましたけど、自分の実力はまだまだだなと感じました。(優勝してチームに勢いを与えましたね)とにかく僕の後の人たちにお願いしますと声を掛けました。大西も高校時代に勝てなくて、お前できるからやれと言いました。そしたら取っちゃいました。(1年目でのタイトル獲得は)うれしいですけど、まだ1年目なのでこれで満足せずに、すぐ全日本があるので頑張っていきたいです。(今回のインカレで得たものは)シングルだったので、船の上で得たものはあまりないですが、軽量級もそうでしたがその時よりも一致団結、マネジャーさんも選手もサポートしてくれてそれが支えになって、あらためていいチームだなと思いました。(課題は見つかったか)今回は1000から1500で攻めたんですけど、ラスト500で崩れてしまいました。第3クォーターで攻めて最後まで持たせる気持ちですね。メンタルの部分を鍛えながら、今体が大きく成ってきているのでそれを動かす心肺を鍛えていきたい。(来月には全日本を控えるが)まだ種目が決まってはいませんが、どの船に乗っても優勝を取りにいきます」