日本一のサポートに ~食事から競技まで選手支えるマネジャー
7回目は寮での食事作りから、練習中のタイム取りまで、幅広い分野において選手たちの活躍を支えるマネジャーについて特集する。体育会屈指のサポート体制でインカレを戦い抜く。
毎日、おいしそうなメニューが食堂に並ぶ。メニュー係のマネジャーが、知り合いの栄養士からアドバイスをもらい、1週間ごとに献立を作成する。旬の食材を生かしたメニューや、クックパッドから考案した新メニューなど、それらは実に多種多様。それぞれの献立には「持久力」「疲労回復」などのコンセプトがあり、栄養面にも抜かりがない。「ジャーマンポテトが好き。メニュー係の同期に頼むと入れてくれる」(中尾真琳・農3=熊本学園大付)と選手の意見も柔軟に取り入れる。また、選手たちの身体を気遣い、最近では脂の少ない肩肉を使うようにするなど、食材についても工夫を凝らし、日々改良を重ねている。それでも、昔から変わらない伝統もある。大会最終日の夕食は必ずカレーライス。魚は週に1度、水曜日。イチオシのメニューは、レース後の納会で食べる空揚げだ。
端艇部は明大体育会の中で唯一、マネジャーが主体となり選手と協力して食事を作る。「業者にお願いするのではなくて、普段一緒に過ごしている身近な人が作るご飯。それだけのことでも、親元を離れて寮生活をする選手たちにとっては人の温かみを感じられることだと思う」(岩本慶子マネジャー・政経4=浦和西)。中でもこだわりは味付けだ。選手の出身は北海道から九州まで、東西南北津々浦々。そのため、どんな好みにも合う平等な味付けを心がける。当番制で、マネジャーの2~3人と、1年生の選手数人とで作る食事はその時々のメンバーの好みが反映され、同じ味はひとつとしてない。朝晩40~50合の米を炊き、6kgの肉を大鍋で炒めることは想像以上の大仕事だが「愛情いっぱい」(岩本マネ)と笑顔。そのうちに自然と選手の好みも分かるようになっていくのだという。「2年生の山吹くん(啓太・営2=今治北)はもやしが苦手。結構もやしを使うメニューって多いんですけど『えー、今日もやしっすか?』って言われちゃいますね(笑)」。週に1度の当番の機会だが、マネジャーと選手との重要なコミュニケーションの場になっている。
一方で疑問も抱えていた。食事は、いわば私生活とボートの中間のような位置づけ。「釜(寮での食事作り)とビデオ撮りだけが仕事でいいのだろうか」と考える時期もあった。そんな中「よりボートに特化したサポートができないか」と考えたマネジャーと「もっと船に関わって欲しい」と考えた選手の間で意見が合致。5月、軽量級選手権を終えてから新しい試みを始動した。マネジャーが1艇にクルーマネとして就き、練習前後のクルーミーティングに参加する。船やオールの出し入れや、タイム取りを行うようになり、船に対する壁がなくなっていった。「選手たちが競技面でどんなことをしていたのかがよくわかるようになった。わからないことが多かったボートの方にも目を向けるようになって、選手たちとの距離が縮まった」(岩本マネ)。一度ボートに関するサポートへの隔たりがなくなると、他にもできることを探すようになり、部全体に好循環をもたらした。常に選手のためにできることを考え、できることから取り入れていく姿勢は食事面でも競技面でも変わらない。岩本マネは「種目数が多いぶん、サポートも重要になってくる」とインカレを見据え、小林剛大副将(商4=岡谷南)は「選手の意識にマネジャーがついてきてくれた。本当に日本一になるためのサポートをしてくれる」と信頼を寄せる。悲願の総合優勝へ、選手とマネジャーが二人三脚で挑む。
関連記事
RELATED ENTRIES