副将特集(1) 小林剛大

2015.08.16
 5回目は中村裕喜とともに副将を務める小林剛大副将(商4=岡谷南)。1年間のチームをけん引してきた小林は、舵手付きペアに乗り優勝を狙う。チームへの思い、最後のインカレに懸ける思いについて語って頂いた。

――現在のチームの状態はいかがですか
 男子部はクルーも決まって練習している状態なんだけど、今年は4年生の就活があって夏合宿に行けなくなったから戸田で毎日練習している。みんなやっぱり日本一になりたいからすごい頑張っているし、スピードも速くなっていると思うけど、優勝するにはまだ何か一つ足りないのが現状かなと。と思うけど、一つ一つのクルーの雰囲気はすごく良くて、みんなが言いたいことを言って、クルーを良くしていこうという雰囲気があるのでいいかなと思います。

――雰囲気がいいというのは、具体的にどういうところですか
 付きペアに限ったことじゃないと思うんだけど、大竹(崇寛・商3=東濃実)は言いたいことをがんがん言えるし、コックスの秋山(紘洋・法4=明大中野)も気づいたことをどんどん言えるし俺ももちろん言うんだけど、誰かが遠慮するとかはなくて、みんなが勝つためにここはこうした方がいいと、みんなで歩幅を合わせて体現したいことに近づけているのかな。船の上では上下関係はなく、フラットな関係でいれる、そんな関係が明治大学には続いていると思います。

――まだ何か一つ足りないというのは、どういうところですか
 やっぱり、今の現状でインカレに出ても優勝は難しいと思っていて、足りないものは各クルーで違うと思うんだけど、俺たちに足りないものとしてはレースの中盤。前半は出られるようになったから、中盤のきついところでどれだけ前半のいいこぎを継続できるか、そこだと思うんだよね。今までならずっと回転数を増やしてスピードを上げていこうとしていたんだけど、それだとこぎが小さくなっちゃうから、3人で話し合ってレートを意識するよりこぎの大きさでスピードを出していこうと決めた。そういうことを意識はしているんだけどまだなかなかできないから、そこを完璧にしないと優勝するのは難しいかなと思っている。他のクルーもきっと今の現状維持だと駄目で、一つ壁を超えないと勝てないポイントがあると思う。昨年の優勝したクルーを振り返ってみると、夏合宿で課題をクリアできているので、そこを追求していかないといけないかな。

――新チーム発足後、力を入れて取り組んできたことはどんなことですか
 俺たちの学年の軸としては、4年生の自分たちが後輩に指示を出すというより、全学年一人一人が主体性を持って自らが問題解決の打開策を考えて実行できるような組織にしたいと考えていた。そのために週に一回全学年を合わせたミーティングを作ったんだけど、自分たちの求めたところまでこれたのかなと今は疑問に思っている。ただ結果として、後輩たちが少しでも自分たちのやってきたことに対して気付いてくれれば、きっとこの1年は無駄ではない。自分たちで何が課題でどうやって課題を解決するかと考えられる力を徐々につけられるようになってきたならば、ボートの話に戻るけど、自分たちの課題をたたき出してその上で修正する力が身についていると思う。

――そう取り組んできた目的は
 自分たちが上から言われたことに従ってきて、結果としては優勝するクルーもあったけど目標のインカレ総合優勝はできていなかった。だったら何か変えないといけないんだろうなというふうに考えたときに、最上級生だけが考えるんじゃなくて45人いるメンバーで一番いい案を考えてそれに向けてやっていった方が絶対にいいんじゃないかということになった。一人一人が主体性を持って考えてほしいなという俺らの思いを込めてやったという感じかな。

――そういうところが先ほどの雰囲気の良さにつながっていますか
 そうだね。そこは前の代から言いたいことは言えるようになっていたけど、俺たちからこぎを矯正するとかはなくて船が速くなればそれでいいと思っている。後輩からの意見も言ってもらったうえで、一番船を進ませる方法を突き詰めてやってきた。今年は特に。

――舵手付きペアに乗ることになった経緯を教えてください
 明治はなしフォア(舵手なしフォア)となしクォ(舵手なしクォドルプル)が昨年優勝していて、その2つはまた今年も優勝させたいというコーチたちの思いがあった。付きフォア(舵手付きフォア)も毎年いいところまでいけるから、その3つにメンバーを配置していく中で、どうしても付きペアに乗れる体の大きいメンバーがいなくなってしまう可能性があった。だったら俺と大竹は体もでかいし春もエイトに乗っていてのでそれだけの力はもっていて、なおかつ付きペアは出艇数が全体的に少ないから確実にいい順位をとらないといけない。だから俺たちが付きペアに乗って、明治のインカレ総合優勝のために得点を持ってこようということになった。今年は選手層が高めで、やっと何年か前からやってきたチームの底上げができていて、今年こそはっていうのは思うね。

――昨年までは2年連続でフォアに乗っていました
 もちろん今年もフォアに乗りたかったけど、自分の立場として、明治を男女でインカレ総合優勝させたい。それを一番やりたかったから、自分がフォアに乗りたいという思いより明治を勝たせるという思いの方が強いから、自分の乗るべき場所で必死にやれることをやるだけ。付きペアに乗ってもフォアと変わらず優勝を目指すだけかな。

――ここまでの明治でのボート生活はいかがですか
 一番うれしかったのは自分が2年生のときの新人戦のエイトで、去年は優勝したけどそれまでは良くて3位だったんだよね。俺たちの代になって、スイープに慣れていない選手もたくさんいて、正直決勝に残れたらいいのかなっていうレベルだったんだよね。でもそのレースで2位になったんだよ。これまでの3位の壁を突破して、期待もされてなかったと思うんだけど、その中で2位になれたのがめちゃくちゃうれしくてあの時はドヤ顔してたね(笑)。

――話は変わりますが、ボートを始めたきっかけを教えてください
 中学まで野球やってて、6月に引退してそこから受験勉強に入るでしょ。そこから塾に行くようになって夜も勉強してめちゃくちゃ夜食を食べてた。あんまり食べてはいけなかったんだけど、めちゃくちゃ食べて体重が95kgまでいった。一回やべーなと思ったのが、心臓の鼓動がめっちゃ速くなることがあって、病院に行ったら異常はなかったけど痩せないと生活習慣病になりますよと言われた。高校に入学してやりたかったのがボートとラグビーのどちらかがきついときいてやろうと思っていて、高校はラグビー部がなくてボート部しかなかった。実際は痩せるために入った。入って1ヶ月で10kg痩せて、最終的には20kg痩せた。結果的にここまで来れたからやって良かったよね。

――明治に進学を決めた理由は
 今はみんなスカウトされていて、コーチが明治でやらないかって全国的に言っているんだけど、俺に限っては全国大会の最高は5位でメダルを獲ったことがなかったんだよね。大学でやるならメダル欲しいなと思っていて、あわよくば日本一になりたいと思っていた。明治に長野県の先輩がいて、その先輩にいろいろ取り繕ってもらった。高3のときに熊本でJOCという大会があって、そのときに角監督がいて直接「どうしても明治でボートをやりたいです」と直談判しに行った。そのとき「分かった」と言われて、入ることになった。先輩が監督にだいぶ言ってくれて、結果入れた。大学でボートをやるのはきつい選択かなと思っていたけど、ここまでくれば無我の境地。

――明治大学端艇部の良さはどういうところですか
 大学の体育会は上下関係が厳しくて、後輩はゴミのように扱われるのかなと思っていたけど、入ってみたらすごく仲良いんだよ。生活する上である程度はあるんだけど。あんまこんなとこはないなと思って。他の部活動を見ると仲の良いところはあるんだけど、縦の関係がしっかりしているところが多いかなと思う。その面、端艇部はいい意味で縦の関係があまりない。今年からなんだけど、今まで1年生がしていた仕事も全学年でやるようになった。それも監督の意見なんだけど、いいか悪いかは別としてみんなが協力してやるというのはいいことだと思う。他の大学を見てもここまで仲の良い部活は珍しいと思う。後輩が生意気だからね(笑)。そういうのを考えるとこのぐらいがちょうどいいのかもしれない。

――明治で成長できたところは
 4年生になるまであまり周りの意見を聞いてこなかった。人に何か言われても否定から入っていた気がする。それは違うだろうなと思いながら聞いていた。最上級生になって人の話をよく聞くようになった。その中で自分の中で正しいのか、間違っているのかを客観的に見られるようになった。昔はすぐにキレてた。今はまず話を聞いてから。大人になったのかもしれない。そういった面で成長できた。副将という立場になったからかな。主将、副将、主務で話す中でぶつかったこともあったけど、今はお互いの意見をちゃんと言い合ったうえで、いいふうにできていると思う。本当に4年間で成長できたと思うな。

――副将になったときのお気持ちは
 中学、高校とずっと主将やってきたから、大学でもこのままいったら主将になるんだろうなと思っていた。ずっと主将をやるのは男子部で、今年は111年目で初めて冨田(千愛主将・法4=米子東)がなった。最初は納得いかない部分もあったんだけど、今になっては副将だからできることもあるし、主将にはできないようなことも副将ではできる。その辺は副将になって良かったと思う。最初はやっぱり悔しいなと思ったけど、副将を任されたからには自分のやるべきことはやっていかないといけないと思ったので、むしろ自分がいいふうに持っていこうと思った。なんだかんだ今はうまくやれているのかな。

――今年はマネジャーの役割も大きく変わったと伺いました
 今までの明治の端艇部の体制はマネジャーさんをめちゃくちゃ手厚く扱っていた。例えばマネージャーが洗いものをしていたら選手が率先的に変わったり。基本的に漕手ができることをマネジャーさんにさせたらいけないという歴史があった。今年から変えたのは、マネジャーのみんなも「日本一になりたい、サポートしたい、自分たちに仕事を下さい」と言ってくれたからこそ、じゃあ俺たちが練習に集中できる環境をつくっていこうということで、料理をつくるのもマネジャーさんでやってくれているし、各クルーにクルーマネがいて、自転車で伴チャしてタイムをとったりこぎを見たりと、新しい仕事を取り入れた。マネジャーさんが本当に日本一になるためのサポートをしてくれるような環境を今年はつくった。仕事量はこれまでと比べて増えたけど、選手の意識にマネジャーさんが追いついてくれた。いつもはマネジャーさんはサポートすればそれでいいのかなという人が多かったと思うけど、今は違って、みんな勝ちに行きたいから何かできることはないかと探してくれるようになった。

――選手の方は競技により集中できるようになったんですね
 マネジャーさんが熱い思いでやってくれたからこそできたことかなと思う。

――4年生の代は高校まで無名の選手が多いですが、今はインカレ優勝を狙えるところにいます
 俺たちの代はあんまり表には出さないけど、負けず嫌いで努力家が多いのかな。みんな練習に取り組む姿を見てきたけど、真剣にやっているし努力を拒まないというか。この代の姿勢はいいと思う。今までの最上級生でも練習がきつくなったりするとモーションを休む人がいるけど、あんまり俺たちの代は休む人は見ないんだよね。みんなきつくても顔出して練習に取り組んで、後輩を引っ張っていける。そういうみんなを尊敬しているし、すごいと思う。そういったところだと思うな。ボートに真剣に取り組むから、無名でも他の大学に負けないぐらい強くなったんじゃないかな。冨田は高校時代からある程度実績はあったけど、今は日本代表にもなっててその一番決定的な理由としては、自分強いのに人の倍以上練習を頑張っていて、そのひたむきなところがつながっているんだろうなと思う。終わったあとも常に陸トレしている。

――それはやはり監督が真面目な人を集めているのでしょうか
 そうなのかな。俺らの代までは監督が全国に飛んでスカウトしていて、一つ下からコーチがスカウトするようになってだいぶ変わったんだけど、監督がやっぱり真面目な人を取るのかな。寮生活に適応できるような。上の代も真面目な人が多かったし、多分そうなんだろうね。逆に今はボートの実力はあるけど結構馬鹿なやつが多いから(笑)。

――最後に改めてインカレの意気込みをお聞かせください
 一人の部員としての目標は、もちろん付きペアで優勝すること。5月から3ヶ月間乗ってきて大学では長い方だと思うから、優勝したい。副主将としての目標というのもあって、インカレの男女総合優勝はまだどこの大学も成し遂げたことがない。俺たちの代でそれができたら歴史に残る。男子部は今年狙えるところにいて、女子部も力が付いてる。今年こそ狙えると思うからそこを目標にしてやっていきます。

――ありがとうございました。