(4)古俣潮里

2015.07.03
 明大のエース・古俣潮里(政経2=新潟)が女子エペ代表として日の丸を背負い世界に挑む。一発勝負の選考会を見事に勝ち抜き、手にした代表の座。小学4年生のころから世代別代表として世界と戦ってきた古俣にユニバーシアードへの思いを聞いた。(この取材は6月15日に行ったものです。)

――ユニバーシアードに出場することに対してどのように考えていますか。
 ユニバーシアードは大学生だけの試合というので、今まで上の先輩方と一緒にジュニアの国際大会に出た時に「私今度ユニバ行くんだ」というようなことを聞いてすごいなと憧れていた大会でもあったけれどその先輩たちは4年生とかだった。今回初めて自分が予選に出ることになって社会人2年目まで出れると聞いて、やっぱりすごい大会で私が出られるのはまだ先かなと思っていた。それでも今回出られることになって、憧れの大会でもあったのですごくうれしい。頑張るぞって気持ちはもちろんある。フェンシングの人たちだけでなく日本代表として他の種目の人たちとも一緒に行くということで、今まで以上に緊張して気持ちを引き締めている。正装や靴、バッグも統一されていて、今までの国際大会と違うという思いがある。

――自身の中でのユニバーシアードの位置付けはどのあたりでしょうか。
 大会のレベルや出場選手の強さとしてはシニアのワールドカップとかの方が上のイメージがあって、難易度的にはこの間出たブラジルの大会(リオデジャネイログランプリ)よりは下がるのかなと思う。でも格式のある大会でみんなが知っている大会ということもあって、私の中では高校時代のインターハイや大学でのインカレという感じ。ワールドカップはポイントを重ねるための修練場といったイメージだけど、ユニバーシアードは今までの自分の力を試すためのお祭りみたいに捉えている。まだ2年生だし次も取れるとは限らないけれど本当に時の運でつかめたようなチャンスだから楽しんで、砕けたくないけど当たって砕けろみたいな感じで行ってこようと思う。

――日本代表への意識について聞かせてください。
 そんなに数が多くないとはいえ日本にたくさんいるフェンサーの中で選ばれたということは私の中で自信にも誇りにもなるし、同時に責任でもある。ユニバーシアードは特に3人しか出られなくて2年に1回だから、私がこの権利を取ったことで6年間の内の権利の一つをつぶされてしまった人たちもたくさんいる。私は今まで海外試合であまり勝てていないので苦手意識もあるけれど、そんなことも言っていられない。行くのであれば死ぬ気で、勝つ気で行かないといけないという責任がある。

――今までも代表としてやってきていますが、意識の変化はありましたか。
私が初めて日本代表になったのは小学校4年生のとき。その時はあまりこんなことは考えていなくて海外に行けてうれしいくらいの気持ちで、親も負けてもともとという感じだったのですごく楽な気持ちで行けていた。でもカデ、ジュニア、シニアときていろいろな大会に出る中で、代表になるということがどういうことなのか自分の中で分かってきた。周りの反応もこれは勝てるからというふうに変わってきて、ずっと前からだとは思うけれど海外試合だからという精神状態からは脱却しないといけないというように変わってきたところはある。この前(2014年)の世界選手権の代表に選ばれたことでもそれは痛感して、選ばれたことは選ばれたなりの責任がある。みんなが選ばれるだけの実力があると私に思ってくれたということなので、私が「勝てないと思うけれど頑張ってきます」という気持ちでは駄目なんだなと、段々分かってきてここ数年でさらに強く実感してきている。

――敵として戦う上で意識している選手はいますか。
 私は香港人が苦手なので、香港の選手は行くと身構える。日本国内で言えば目標は高く、今年は世界選手権のメンバーには選ばれなかったけれどそれはユニバーシアードが被っているからというだけでなく、オリンピックシーズンだから私は多分選ばれないだろうと昨年から思っていた。本当は選ばれるぜって気持ちでいかないといけなくてはいけなくてそういう気持ちもあったけれど、選ばれなかったときにやっぱり私はまだ6番手だなというのがあった。だからこそ今回私が選ばれなかった大会で選ばれた人たちは、いつか超えていかなくてはいけないと思っている。日本国内で本当に強い人でなければオリンピック出場というのもおこがましい感じもあるので、まずはその人たちを超えていきたいと思っている。

――目標として意識している選手は誰でしょうか。
 今日本で突出して強い下大川綾華さん(テクマトリックス)と佐藤希望さん(大垣共立銀行)の女子エペの2選手。その2人の強みは真逆というかどちらも私に足りないものだけれど、下大川さんは練習して積み重ねてきた距離感のつかみ方やタイミングの取り方や戦略の立て方。身長も私とそれほど変わらないくらいで、それでも向こうで勝っていけるということは積み重ねてきた実力と経験がなせる技だと思う。佐藤希望さんは単純な腕力や脚力がそんなに強くないイメージもあるしはたから見ていてすごく速い選手ではないけれど、本当に相手のアタックをよく見ていてギリギリで切ってから出すというポイント精度がとても正確で試合の運び方もすごくうまい。その2人の強さを本当に尊敬していて真似できるならしたいと思うし、真似できないにしても今私がこういうふうに言っているみたいにあの人のここがめっちゃ強いと言われるように、私が持っているものでなりたいと思う。私は我慢できなくて振られると最後に必ず自分から出てしまうという悪い癖があって、それを相手にカウンターで打たれて負けてしまったりする。海外の大きい選手と戦っていくために下大川さんみたいな動きとか試合の組み立て方とか、佐藤さんみたいな距離の取り方がほしい。どっちも勝てるフェンシングとしてあの2人に共通している部分は根っこのところにあるけれど、戦い方としては違うと思うところもあって2人の強さを学んでいる。

――ユニバーシアードに向けてどのような練習をしていますか。
 今気を付けていることは自分が手を伸ばして突ける距離で突くということ。私は先に手を伸ばしてしまってそれを相手に切られてそのまま足で突っ込んでポイントを突くというようなフェンシングをしていたけれど、それだと海外だと負けてしまうということに気が付いた。だから動いて動いて相手が間合いに入ってきたなとおもったらまず足で間合いを詰めて確実に突けると思ったところで手を伸ばす。そうすると私はそんなにスピードがあるわけではないけれど、相手には体感的にものすごく速く感じる。でもそれは手を引いたまま相手の懐に入っていくということで、そこでぱっと出されるとすごく怖い。怖くて私は出してしまうけれどそこを我慢できるようになること。あとは試合の組み立て方。何回も言っているけれどあつくならないこと。

――明大としてではない試合というのも多くなりますが。
 部活の練習を休んで自分のためだけに試合に行かせてもらっているのは、そういうふうにすると言って入ってきているとはいえ申し訳ない部分もある。リーグ戦直後、入替戦までの間に私はブラジルに行ってしまったわけで申し訳ないという気持ちもあるけれど、オリンピック目指しますと言って入ってきた以上そこは避けられない。1年生の時も同期に部活の仕事を押し付けて合宿や遠征に行ってしまって後からすごく文句を言われたりもしたけれど、それを理解していいよって言ってくれる周りの人たちがいるからやっていけると思うし本当に感謝している。特に同期には1年生の時にとても支えてもらったので。ブラジルの方で考えることもあったけれど、今はまだ2年生なのでフェンシングで4年間でできるところまでいこうと思っている。11年間やってきたことだから夢と決めたところまでいってみたいし、できないにしても適当にやってできなかったよりやり切ってできなかったほうがいいと思っている。

――ユニバーシアードでの目標を聞かせてください。
 狙うなら優勝。正直私はまだユニバーシアードの難易度がどのくらいのものかよく分かっていなくて、でもジュニアとそこまでは変わらないだろうと思っているのでできることならやっぱり優勝。結果としてはそれが一番の目標でどこまでいけるかというところではある。試合の目標としては最後まで私のスタイルを崩さないこと。結構海外でも勝ちたすぎて空回って攻め急いじゃって負けるということが多かったので、今回は常に冷静に相手を見て試合を組み立てていくということを一戦一戦大事にしていこうと思っている。その結果がベスト8とか4だったらそれは私の実力が足りなかったということだし、優勝するためにもあまり勝ちたいと思わずに一戦一戦冷静にやっていくということが大事になると思うのでそこが目標」

――ありがとうございました。

◆古俣潮里(こまた・しおり) 政経2 新潟高出 165㎝

[谷澤優佳]