新チーム最初の公式戦へ HC・監督インタビュー

 新たな戦いが始まる。昨年は6月にエースが渡米。厳しい試合が続きながらも、最後はリーグ戦5位、インカレ6位と意地を見せたシーズンだった。今年はHC(ヘッドコーチ)、監督らスタッフ陣が一新。戦術や練習方針も大きく変わり、長谷川聖児新HCのもとでチームは再出発となった。本特集ではそんなバスケットボール部の1年を追う。2回目の今回は、トヨタ自動車アルバルク東京などでの指導歴を持つ長谷川HCと、明大バスケットボール部OBで監督に就任した小川淳一郎氏にインタビューを行った。

<長谷川聖児HC>
――就任の経緯を教えてください
「OB会からの依頼があって、それを自分が引き受けた形です」

――これまでの経歴は
「高校は京北で、今で言うウィンターカップ準優勝、インターハイは3位になりました。20歳まではノミネートされた試合は全部出ました。ジュニアとかユースとか。大卒後は当時はプロも無かったし、企業人としてしっかりやっていきたいということで、当時2部だったトヨタ自動車に進みました。当時は仕事がメインだったから仕事が終わってから練習という形だったけど、工販合併とともに社内の雰囲気づくりの一環で運動部が頑張りなさいということで、自分の意思とは反してバスケに専念して、現役として8年、それからコーチや部長、ゼネラルマネージャーなどをやりました。その後は1度明治の手伝いもやりましたが、仕事一筋という感じでしたね」

――大学生を本格的に指導するのは初めてですか
「何をもって本格的と言うのかというのはあるけど、本格的にやるにはやっぱり時間が足りないですね。それをメインでやっているコーチの人たちに比べれば自分はまだまだなので」

――学生を教える上で大切にしていることはありますか
「大学生っていうのは1つのプレーをするにしても、気持ち次第でそれがすごく左右される。高校生くらいだったら、指導者がとにかく徹底して、徹底して、徹底してその人の言うことを聞かせるということがあるかもしれないけど、僕はそういう指導はしたくない。選手が考えてやって、それがきちっとできるようになれば結果にもつながると思います」

――指導をしていて難しいと感じることは
「僕自身も厳しさが足りなかったのかもしれないけれど、選手の中の自分の甘さというのが良くない結果につながっているかなというところがある。いかにしてモチベーションを上げていくかが難しいですね。29人が僕のチームということで分けずにやってきているけど、試合前になるとどうしても試合に出るメンバーと出られないメンバーが出てくる。そこで出られない人たちが、頑張ろうと思ってやれる雰囲気をいかにしてつくるかが僕の中の課題です」

――バスケットボールにおいて信念はありますか
「バスケットボールだけじゃなくて、人生そのもので思っているのが“信頼”ですかね。1人1人がチームのために何をすればいいのか、逆にチームは1人のために何ができるのかを考えることが必要だと思っています。それを築くのが信頼だと思います。それはバスケットだけではなくてね」

――現チームの武器は
「伊澤(実孝・政経4=愛知産大工)にしても一応3Pを打てるということを考えると、やっぱりどこからでも打てるのはうちの長所かなと思います。走って、ファーストチャンスで思い切って打つということができる、可能性のあるチームだし、そういうチームにしたいです」

――反対に短所は
「出ている5人の気持ちが乗っているときはいいんですけど、じゃあ乗らせるためにフロアリーダーっていうのが誰か、そこが今何となくいないのが短所かな。フリースローの時にみんなを集めたり、声を掛けたり、そういうことができる「この人」っていう存在が必要だと思いますね」

――就任から3カ月ほどですが、ここまでのチームの成長はいかがですか
「徐々にではあるけど、オフェンスにしてもディフェンスにしても一応形の上ではできているのかなとは思います。やっと見えてきたという感じですかね。進歩したというより、選手がもともと持っていたものを出してくれるようになってきたという感覚です」

――最終的に目指すチーム像は
「このサイズだから、ファーストブレイクが大事。とにかく強い当たりをして相手のミスを誘って、マイボールにしたら5人全員が走っていくと。速攻だけではなくて、セットオフェンスにしたって相手を出し抜くプレーはスピードだと思う。ベスト4常連のようなチームにはどうしたって高さでは負けるからその分では不利だけど、逆にスピードでは相手が付いていけないくらいのプレーをしていく。小さいことを長所として取れるくらい、スピードがあってスタミナのあるチームにしたいですね」

――最終的な目標は
「やっぱり目標としてはインカレ優勝ということを挙げたいですね。やったことしか成績には表れないと思うので、それに値することをやっていきたいです」

――関東トーナメントはどんな大会にしたいですか
「まずは春先から積み上げてきた形を見せられるようにすることです。もちろん勝負にこだわりたいところはあるけれど、選手にもそれは言ってあります。当然課題がどんと見えてくるんだろうけど、やれていたことがやれないで負けちゃうようなことだけはしたくないです」

――チームのここを見てくれというところは
「ディフェンスでシュートを落とさせ、ファーストブレイクからのアーリー、モーションという形で攻める。そして最後は相手を抜き去る1対1の能力を見てほしいですね」

――ありがとうございました 

<小川淳一郎監督>
――チームにおいて、監督という役割はどの位置付けになるのですか
「基本的には気付いたことを言うくらいのものです。長谷川HCに全て任せています。監督が直接指導する大学もあると思うけれど、明治の場合は最初からそういうふうに役割を決めてスタートしました。練習は基本的には長谷川HCが、メニューから指示から全部組み立ててやっていくので」

――監督自身の指導方針はありますか
「とにかく走らないと。HCと、明治はサイズの大きい選手がいないので、このサイズで勝つためにはどういうオフェンス、どういうフォーメーションでいこう、というのはお互いに話しています。ディフェンスから厳しくいかないといけないし、走るオフェンスでないといけません。以前から外からのシュートが得意な選手はいっぱいいるので、それは生かしつつ。それでも、強いチームもいっぱいあるので、相手が来た時にシュートだけではなくドライブとか盛り込んでいかないと厳しいかなと思っています。前のスタッフにもやり方があって、今までは大きい選手も後ろに控えていられたからほとんど速攻は出てなかったし、それも戦術の一つだけど、今年は動けて速攻が出せるチームにしたいと思っています」

――監督自身の経歴を教えてください
「明大のバスケ部OBです。卒業してからは、スポーツメーカーのアシックスに入って今もずっと務めています。社会人になって強いところではやっていないし、学生時代もプレー自体は3年生までで、4年生の時はトレーナーとマネジャーをやっていました」

――OBとして選手を見ていて、どういう思いがありますか
「まだ3カ月くらいしか見ていないけど、最初はケガ人が多くて驚きましたね。前は、今より走る練習とかもっときつかったと思うんだけど、ケガはあまりなかったと記憶しています。姿勢や技術面で言えば、たぶん昔よりも選手はバスケのことをよく知っていると思います。だから、僕がそれに合わせて修正するのにも時間がかかる。長谷川HCは社会人でやって経験もあるから、今のバスケットはどういうものか見て分かっているので、どちらかと言うととにかく僕はその指導を見て、勉強しています」

――関東トーナメントも目前ですが、カギになる選手は誰になりますか
「いろんな角度から言ったら、うちのエースは伊澤。点を入れる、エース格というのはやっぱり彼です。あとはどれだけガード陣がしっかり指示出して、ゲームをコントロールできるかというところ。今の段階では、齋藤拓実(営2=桐光学園)。吉川治耀(情コミ2=京北)とか會田圭佑(法3=市立柏)のガード陣が、どこまで動けるかがカギになると思います」

――ありがとうございました