大山博、圧巻の新人戦V! /東日本学生秋季新人選手権
得意技を武器に優勝つかむ

アンクルホールドを繰り出す大山博
86㎏級を制した大山博。準優勝に終わった春季新人戦から技術面、精神面ともに大きな成長を見せた。今大会を通じてさえていたのが持ち前のパワーを生かしたグラウンド勝負。その中でも特に機能していたのが全試合で繰り出したアンクルホールドだった。「練習からグラウンドではアンクルばかりやってきた」(大山博)。その言葉通り今年から本格的に取り組んできた自身の強みを前面に発揮。低い位置へのタックルから相手の片足をホールドすると決して離さず攻撃を展開、確実に得点へとつなげた。さらに冷静な試合運びも光った。今までは「がむしゃらにやりすぎていた」(大山博)ためスキを突かれて逆転勝利を許すこともあった。だが今大会は違った。アンクルホールドから先制ポイントを奪うと、その後は攻め急ぐことなく相手の動きを落ち着いて観察。攻守にわたり柔軟な対応をしながら最初のリードを保ち、安定した勝利を重ねた。
その今大会の大山博を象徴していたのは決勝戦。開始30秒にタックルから相手の片足を捉え、持ち上げる。その状態のまま様子をうかがい、相手が逃れようとした一瞬のスキを突いて足をかけた。相手がバランスを崩して倒れたところですかさず両足を奪いグラウンド勝負へ。得意のアンクルホールドからローリングを繰り出し一気に7点を奪った。「先にアンクルをかけられたので結果につながった」(大山博)。最初に奪ったリードを最後まで譲ることなくカウント9―2で勝利。念願の大学初タイトルに「目標でもあったのでとても嬉しい」と思わず笑みがこぼれた。多賀垣雄副部長も「大山博はやればできる。よく攻められるようになった」と賛辞を惜しまなかった。そして「まだスタミナが足りない」とさらなるレベルアップに期待した。自身も「来年はリーグ戦の順位を上げたい」とチームの主力となることを誓った。今回の優勝は来年以降のさらなる飛躍の布石に過ぎない。
悔しさを糧に来シーズンへ
大会前から肋骨を骨折していた70㎏級の寺田靖也(農2=八千代松陰)は準優勝に終わった。春季新人戦で2位に終わったリベンジとして臨むも、

骨折しながらも健闘した寺田
またも優勝に一歩届かなかった。相手にバックを取られると肋骨が痛み身動きがとれなくなってしまうため、相手の動きを見極めて「一つのチャンスで決めよう」(寺田)と考えていた。決勝戦まではその自身の作戦通りの動きで勝ち上がった。しかし、迎えたインカレ2位の実力者の木下(山梨学大)との決勝戦ではやはり骨折の影響から大敗を喫した。開始1分に片足タックルからポイントを奪い2―0で第1ピリオドを折り返すも、最後はバックを取られそのままローリングで試合を決められた。試合後には「やっぱり勝ちたかった」と一言。しかし、今大会で得た収穫にチャンスが見極められるようになったことを挙げた。攻撃のタイミングを今まで以上に慎重にうかがっていたため「攻めるところがわかるようになったし、逆に落ち着いてできるようになった」(寺田)。手負いの状態ながらも準優勝を果たした今大会。これまでの攻めの姿勢に加え、研ぎ澄まされた感性を武器に来年度のインカレでは上位進出を目指す。
グレコローマンスタイルでは75㎏級の曽根川樹(農1=小倉商)と71㎏級の宮口大輔(法1=焼津中央)の1年生2人が3位入賞を果たした。しかし、入賞にも試合後の2人には慢心など一切なかった。春季新人戦に続いての3位の曽根川は「来年は優勝できるようにやっていきたい」。入学後初の表彰台となった宮口も「今回の入賞でフリーに向けても弾みになれた」と今後の飛躍の足掛かりとすることを誓った。来年度も出場する2人からますます目が離せない。
ほとんどの選手がこれで今シーズンの大会を終えた。残す大会は社会人も出場する天皇杯。明大からは新主将の秋元優介(政経3=足利工)、2年連続出場の藤山徳馬(営3=池田)、そして今大会優勝の大山博が出場する。古豪復活へ向け、非常にハイレベルな戦いにも臆することなく挑んでいく。
[小田切健太郎]
![]() 優勝の大山博 |
![]() 準優勝の寺田 |
![]() 3位の曽根川 |
![]() 3位の宮口 |
![]() ゴールデンホイッスル賞を獲得した寺尾 |
試合後のコメント
多賀副部長
「(大山博が優勝したが)あいつは技術的に難点があって、今までとんでもない動きをしたりすることがあったんだけど今回はそれがなかったね。慎重にやってた感じがした。ただ、あいつは力はあるんだけどやり方がまずいところがある。この大会でもまずいところがいっぱいあった。そこを一つ一つ直していかないと上には行けないよ。今回も優勝はしたけど、まだまだ課題がいっぱいある。あいつはこんなもんじゃない、もっと伸びるはずなんだよ。あいつはスタミナが足りないんだよ。足を止めて力勝負をするとばてるから、もっと足を使って動きながらやっていけといつも言っている。今回はそれが少しできてたかもしれない。(決勝は序盤の大量リードを守っての勝利だったが)国体のときに今回の決勝と同じような場面があったんだけど。9-0で勝ってて。それから決めにいこうとして、最後ばてて逆転負けしたんだよ。それが頭にあったんじゃないか。一気に決めれば楽かもしれないけど、何かあるかもしれないからしっかり守ってやっていた。そういう意味では冷静だったな。(試合運びについてのアドバイスは)とにかく序盤は足を使えと。絶対力勝負はするなと言っていた。あと、フリースタイルは足を取らないと勝てないから足を攻めていけと。決勝では足を攻めてて良かった。片足から取って、それからアンクル(ホールド)にいけてたから。決勝の相手は強かったんだよ。高校の時は1、2を争ってた選手。きちんと構えないとごまかされる相手だから分が悪いかなと思ってたんだけど、きちんと構えられてた。(課題は)スタミナに波がある。いい時はいいんだけど、悪い時はすぐばてる。本当の意味での体力というのがまだついてない。走り込みとかスパーリングとかで、疲れてからまたやるみたいな。もう立てないというようなところから始めるぐらいのところからやらないとだめだね。(夏の韓国遠征では)ナショナルチームで派遣されたけど、あれは良かった。やっぱり得るものは大きいと思うよ。ただ、それが生かされてるかはまだ分からない。韓国チームのように練習をピシッとやって集中するように言ってるんだけどまだだね。ああいう経験の中で、何か得てくれればいいんだよね。漠然とやってるだけで、何にも感じないまま帰ってくるのではだめ。(今後の目標は)インカレの上位、優勝とかになってくるけど、大山(博)はきちんとやればできるんだよ。よく攻めれるようにはなったから、あとはディフェンスだな。かわすんじゃなくて、攻撃をつぶすような形を身に付けないとトップの奴とは戦えない。つぶす力があってかわすんならいいけど、かわすだけじゃだめ。(寺田は)まだ志が低いというか、2位でいいやというようなところがある。(決勝の)木下も負けるような相手じゃない。今度は勝つよ。来年は絶対勝つ。(ケガを負っての大会だったが)あれは自分の責任。あいつはレスリングが好きなもんだから、ついやっちゃうんだよ。我慢するときは我慢しないと。(寺田の課題は)大山(博)と同じだけど、あいつもディフェンス。ディフェンスは腰の使い方だから、その動きをきちんとできるようにしないと。(大山博は天皇杯に出場するが)優勝する意気込みでやってもらわないと。ベスト4でいいなんて思ってるようじゃだめだ。相手の実力を過大評価すると動きが縮こまっちゃってだめになるから、思い切ってやってほしいね」
大山博
「(優勝には)目標でもあったのでとても嬉しい。いつもは点差が開いてから試合を決めにいく癖があり、そのせいで体がばてて試合をひっくり返されたりしていた。でも今回はリードしてからしっかり守れたのが勝因。自分の形をしっかり作って勝利できた。今まではがむしゃらすぎたが、今回は考えてレスリングできた。先に点を取れていたのが冷静になれた要因でもある。技術的にはアンクルホールドを全試合かけることができて、そこが点につながった。アンクルは自分の中での強み。春からは試合運びが変わったと感じている。勝負どころはしっかり考えてやれた。スタンドとグラウンドではグラウンドの方が得意。タックルだったり、グラウンドにいくまでの崩しが苦手なのでがんばりたい。決勝に上がってきた相手は予想通り。決勝前は勝てるかどうか五分五分と思っていた。先にアンクルをかけることができたのでああいう結果になったが、それがなかったら厳しかったと思う。アンクルは本当に今大会でさえた。自分の強みであるアンクルを伸ばすために、練習からほとんどアンクルしかしていなかった。グラウンドになったらアンクル。春から自分の中で練習から変えたのは、相手をよく見るようになったということ。前まではがむしゃらにやっていたが、相手をしっかり見てからやるようになった。冷静にやってきた。(精神的にも技術的にも伸びたか)あまり実感はないが、こうやって成績を残せたのでいいかなって感じ。今後の課題は守るなら守るで守り方があやうい場面もあったので、そこを身に付けたい。具体的にはがぶりと組手。そして攻めも種類を増やしたい。タックル、崩しをしっかりやっていきたい。今年がんばったのはやっぱりアンクル。春先にかかったかなって思った時からやってきた。アンクルは高2ぐらいまで少しやっていたが本格的にやり始めたのは今年から。(来年以降は上級生として)リーグ戦の順位を上げたい。(天皇杯は)もちろん勝にいくが、自分の力試しとも捉えている。楽しみという気持ちが強い」
寺田
「(決勝を振り返って)JOCとかインカレ初戦で戦ってぼろ負けした相手だったんですけど、手負いの状態で前半はよく戦えたかなと思います。骨が折れてる中でここまで戦えたというのは、インカレの時よりも差が縮まったという点で収穫でした。ただ、4-2のときにもう2点取れそうだったところで取れなかったのは、そこで取れていれば勝てたかもしれないので悔しいです。(骨折した状態での大会だったが)バック取られたら終わりなので、一つのチャンスで決めようかなと。折れてたので強引に(攻めて)いかなくなってチャンスが見極められるようになりました。攻めるところが分かるようになったと思います。逆に落ち着いてできました。(春季新人戦に続いて2位という結果については)良いとも悪いとも言えないですね。春の決勝がインカレ1番で、今回がインカレ2番だったので、学生のトップレベルと戦えたという点では良かったですけど、やっぱり相手が誰であっても勝ちたかったですね。あんまりプレッシャーとか感じるタイプではないんですけど、あと一つのところで何か勝てないですね。天皇杯は目標なので出たかったんですが。来年は来年は新人戦ではなくて、インカレで上を目指す」
曽根川
「フリーは優勝する気だったんですけど、準々決勝で最初に4点取られたのが自分の中ではやらかしたなというか、後悔してるんですけど。あれが無かったら勝ててる試合だったので、すごく悔しいです。それに勝てば、次の相手は相性がいい相手だったので、もしかしたら決勝でもいい動きできて優勝できたかもしれなかったんですけど。自分の技術不足もあるので、来年の春季新人戦では優勝できるようにやっていこうかなと思います。(グレコローマンスタイルでは3位)そんなに専門的にやってるわけではないし、人数も少なかったので。でもやっぱりグランドの弱さが出たかなと思います。課題が見つかった試合だったと思います。来年のリーグ戦ではレギュラーで出て、今回の大会でできなかった技術、グランドとか片足の処理とかをしっかり究めてからポイントゲッターとして活躍できるようになりたいです。あと、来年は新人戦は優勝して天皇杯に出たいですね」
宮口
「(今回の大会を振り返って)初戦が何も動けなくて。フリーではそのせいで何も考えずに突っ込んでしまって負けたので、グレコは気合入れてやろうと思ったんですけど、逆に力が入ってしまってまた初戦が動けませんでした。なんとかグレコの2回戦は自分の思うように動けたんですけど、それでも何にもできてなかったなと思います。(グレコローマンスタイルでは3位入賞したが)グレコは本当はあまり好きじゃないというか、苦手意識があったんですけど、今回の入賞でフリーに向けても弾みになったかなと思います。(冬季は)自分は足が使えないので下半身を鍛えることと、動きが遅いので俊敏に動けるようにしていきたいです。その上で、攻めれるように技の数を増やしていけたらなと。自分は今守りが中心のスタイルなので、自分から攻めていけるスタイルをつくっていきたいです」
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