(2)明大拳法部 府立連覇の軌跡

2014.11.16
 駅伝、野球、ラグビー…。明大の体育会には全国規模で活躍する部活動が数多く存在する。1954年創部、今年60周年を迎えた拳法部もそんな名門の一つだ。一昨年、昨年と府立連覇を果たした明大。他大にも一目置かれる存在であり、試合会場に行けばどの大学よりも先にウオーミングアップを始め「明治ファイト」の声を響かせる。王者としての貫禄は十分だ。第2回では府立連覇を果たした2年間を振り返る。

2012年度主将・岡部力樹也 決して優勝候補の筆頭とは言えなかった。でも「流れはできていた」(岡部力樹也元主将・平25文卒)。6年ぶりの府立制覇は部員全員の悲願であった。宿敵・中大との決勝戦。榊原亮(文4=大阪桐蔭)や石田圭吾(文3=大商大堺)など当時の下級生が善戦を見せる中、副将・大貫洋平(文4=東海大相模)の白星で優勝を決定づけた。最後に大将としてマットに立った岡部は重みのある一本で4年間を締めくくり、全員で喜びを分かち合った。
 5月の東日本リーグ戦で連覇を果たし、順調なスタートを切った岡部メイジ。しかし1カ月後の全国大学選抜では中大に敗れ、まさかの3回戦敗退となった。リベンジに燃えた後期最初の団体戦、東日本大学選手権でも再び中大に優勝を阻まれてしまう。個人インカレでも上級生の結果は振るわず、さらにはポイントゲッターの加藤竣一郎(平25文卒)が直前にケガで出場不可能に。不安をぬぐい切れないまま府立の日を迎えた。それでも「全員の目から優勝したいという気持ちが伝わってきた」(岡部)。徹底した中大対策と勝利への執念が栄冠をもたらした。
 この年、石田が東日本リーグ戦で最優秀選手賞を獲得する鮮烈な大学拳法デビューを飾るなど、1、2年生の活躍が目立った。日本一のキャプテンになった岡部は引退を控え、言う。「自分が4年生になった時に3、2、1年のメンバーがこいつらで良かった。強いキャプテンではいられなかったけど常にこいつらが支えてくれた」。7人制の大会では4年生の活躍はもちろん、下級生がどこまで上級生の相手に食らい付けるかがカギとなる。部を引っ張る最上級生と、サポートする他の部員とが一丸となって歴史を切り開いた。

<2013年度 大石メイジ>
2013年度主将・大石健作 準決勝の関大戦が勝負の分かれ目だった。連覇を懸けて臨んだ府立。ベスト4に甘んじるわけにはいかない。この一戦のヒーローは、何といっても副将の原田優介(法2=朝倉)だ。3―2と劣勢で明大は後が無く、相手は当時3年生で現在主将の水瀬。残り1秒、原田の面突きが勝負を決めた。1年生にとっては大きすぎるプレッシャーから原田を救ったのは、試合前の大石健作元主将(平26文卒)の一言。いつも厳しい主将から笑顔で「緊張していないか」と声を掛けられた。
 この年の拳法部は大石抜きには語れない。絶対エースの大石は2年間団体戦無敗。折り紙付きの実力でチームをけん引した。また、唯一の4年生プレイヤーとして、下級生との距離感にしばしば悩みながら、厳しく部を追い込んだ。学生王者の看板を背負い、出場する大会全てで優勝することを目標に掲げた大石メイジ。しかし東日本リーグ戦で早大に敗れ、3連覇を逃してしまう。5人制の全国大学選抜で雪辱を果たすが、秋の東日本大学選手権では再び早大に2―5で完敗。大石の考える練習メニューも府立に向けて熱が入った。そんな練習や試合を通して、チームワークが生まれた。とにかくストイックな大石だが「実は優しい先輩」と下級生は声をそろえる。誰よりも拳法部のことを一番に考えていることは、どの部員にも伝わっていた。
 原田の劇的勝利と、大石の安定の白星をもって、府立決勝に駒を進めた明大。同大との決勝戦は6―0の圧勝を収めた。「大石先輩に華をもたせられたから良かった」(原田)。府立連覇は大石から下級生への置き土産であると同時に、下級生から尊敬するキャプテンへの贈り物であった。