9年ぶりの団体戦ベスト8 武政も個人戦で健闘/全国学生選手権

2014.11.11
 大将・名和闘志(政経2=埼玉栄)の活躍が光った。予選初戦の中大戦は2―2で、埼玉栄高時代の同期・矢後(中大)との大将戦へ。互いに投げを打とうとするなど一進一退の攻防が続くも、粘りの相撲で最後は寄り切った。続く東洋大戦も2―2という状況で、元高校横綱の新保(東洋大)をすくい投げで下した。「意地でも勝とうと思っていた」と名和。埼玉栄高時代に国体で団体優勝するも、明大入学後は膝のケガに苦しんだ。今年8月の全国選抜十和田大会は、直前の合宿でケガを負い欠場。復帰戦となった9月の東日本リーグ戦も不調で途中交代させられた。それでも今大会には間に合わせ「出たいという気持ちが強くて、辛抱強いので大将にした」(小川清彦総監督)という期待に見事に応えた。
 初戦で中大から勝利を挙げ、波に乗った。6月の東日本学生選手権、8月の全日本大学選抜十和田大会で対戦した際は0―5で敗れ、歯が立たなかった相手だった中大。それでも先鋒・濁川太宏(政経4=向の岡工)、二陣・武政進之介(政経3=埼玉栄)が白星を挙げる。中大も意地を見せて大将戦に持ち込まれたが、名和が勝負を決めた。今年何度も出稽古へ行き胸を借りてきた相手に大一番でリベンジを果たした。続く東洋大戦でも勢いは止まらない。濁川は敗れるも、武政、中堅・西浦準樹(政経4=和歌山商)が果敢に相手に挑んで勝利。大将戦の末に前回優勝校から金星をつかみ、決勝トーナメント進出が決まった。専大にも危なげなく勝利し、予選3試合は全勝で3位通過。守重佳昭監督は「今までずっとやってきたことの積み重ねが実った」と選手を称えた。
 だが、上位の壁は厚く決勝トーナメント1回戦で拓大に敗戦。濁川が一時は勝利を挙げるも、立ち合いを指摘され取り直しに。結局先鋒戦を落とすと、1―2の状況で副将・小山貴雄主将(政経4=向の岡工)が押し出しで敗れ、明大の敗退が決まった。部員全員が初めて経験するインカレ決勝トーナメントという舞台。「場慣れしていないので、勝ち切るところに弱さが出てしまった」(守重監督)という新たな課題も見つかった。

 武政がベスト8
 勝負強さを発揮した。決勝トーナメント2回戦は橋本(日体大)との対戦。下から押し上げられて、土俵際で体が起きた不利な体勢に。だが、武政は落ち着いて相手を見ていた。とっさに身をかわし相手を崩すと、際どく足を残してベスト8を決めた。
 準々決勝で埼玉栄高時代の先輩で、今大会準優勝した中村(日体大)に敗れたものの、明大としてベスト8は久しぶりの快挙だ。決勝トーナメント進出に「あの緊張感の中でできたのは良かった」と喜んだ。武政は166㎝、116kgという小柄な体格ながら、勝ちにこだわった相撲で手堅く勝利を収めた。
 学生横綱を破った。団体戦予選、東洋大との二陣対決は大道(東洋大)との対戦。正面から立ち合い、押し込まれる中でつかんだ左のまわしを起点に回り込むと、土俵際ですくい投げを決めた。前日の個人戦で優勝した大道を破ったのは、今大会を通して武政のみ。武政は「運が良かった」と繰り返したが、結果で実力を証明してみせた。

 優勝には届かなかった。それでも予選で全勝し、9年ぶりのベスト8という結果に「一つ壁は越えられたかな」(小山貴雄主将・政経4=向の岡工)。昨年からチームの目標を「インカレ優勝」と明確に設定。練習量を増やし、毎回の練習後は監督を含め全員で円になって「インカレ優勝」と10回声に出してきた。今年は平日の練習時間を調整し、なるべく部員が授業で欠席することがないよう工夫した。「夢だと笑われていたけど、みんな優勝するという気持ちを口に出してやってきて、今日は少し頂上が見えた」と小川総監督もチームの成長を実感する。「僕らの分まで頂点を目指して頑張ってほしい」(西浦)。思いは来年へと託された。

[坂本寛人・渡辺由理佳]

試合後のコメント
小川総監督

「優勝するという高い目標を持ってやってきてそんなのは夢だと笑われていたけど、みんな優勝するという気持ちを口に出してやってきて、今日は少し頂上が見えました。簡単には手に入らなかったけど、見えるところまでは今日は残れました。あとはどんなことをしないといけないのか、何が足りないのかを考えていきたいです。みんなも優勝したいと思ったんじゃないかな。予選で3勝して、その勢いでいけると思いましたけどね。最後は負けましたけど、勝負なので仕方がないです。橋本が亡くなってから踏ん張って、次の日から稽古してきました。ここを目指して、橋本もレギュラーになりたい一心で頑張っていましたから、出られる喜びを感じて精一杯いけと言いました。名和はずっとケガで相撲を取れていませんでしたが、2―2の大将で勝ってくれました。出たいという気持ちが強くて、辛抱強いので大将にしました。4年生が4年間で成長してチームの柱になりました。代表として土俵に上がっていくわけなので、中途半端なことをするな、力を出し切れと言ってきて、そういった意味ではチームとしてまとまって予選を勝ち抜いたことは大きいと思います。それは褒めてやりたいですし、もっと力を付けないと上にもいけないというのが分かったと思います。予選を3位で通過して昨年の優勝校も破って、本当に優勝できるかもしれないと感じたと思います」

守重監督
「決勝トーナメントというところに場慣れしていないので、勝ち切るところに弱さが出てしまいました。予選3勝は、私が知っている限りではなくて上のOB先輩の方であったのではないかと思います。昨年のインカレ3位の中大とインカレ優勝校の東洋大に勝って予選3勝で3位通過できたことは、今までずっとやってきたことの積み重ねが実ったからだと思います。あとは気持ちを強く持っていったということです。みんなが橋本のために頑張ろうと思っていたのではないかなと思いますね。中大には今年何回も出稽古に行っていて、中大には何とか勝とうとやってきた中で初っ端から勝てたのは大きいです。あとは東洋大を食ってやろうと言って、結果勝てたのは良かったです。(大将の名和選手が予選全勝だったが)もともと気持ちの強い子で、2―2の大将戦で必ず取っているので、まだ2年生でケガが多いのですが来年、再来年とさらに成長してくれるのではないかなと思います。(今年を振り返って)春先はまだまだということをずっと言ってきて、9月のリーグ戦でもまだインカレ優勝なんて言えないチームという話もしましたが、この1、2カ月でみんな気持ちが前へ出てきて、変わったなと思います。(その要因は)一人一人が強い気持ちを持って、4年生がチームを引っ張って下級生がそれに応えたからだと思います。来年こそはインカレ優勝を達成して、今の4年生や橋本にやったよという報告をしたいです」

小山
「いつも団体初戦は良い雰囲気で臨めていなかったですが、今回は初戦から気持ちが入っていて良い相撲が取れて良かったと思います。そこから良い流れで2、3戦と連勝して予選をしっかりと勝ち上がることができました。それでも、勝ちを決めないといけないところで自分が負けてしまったのは仕方がないですが、しっかりしていきたかったです。でも、全部の試合でチームで3点を取れたのは良かったです。(大将の名和選手が全勝だったが)もともと勝負強い選手で、勝ってくれたのは良かったです。(団体戦のメンバー5人中3人が4年生と、最上級生がチームを引っ張ったが)当たり前のことですが、稽古や普段の生活の段階から自分たち4年生がみんなを引っ張ってやろうと思ってやってきました。今までなかなか結果が出せませんでしたが、予戦だけですが最後のインカレで結果をしっかり残せたのは良かったと思います。ただ、目標はインカレ優勝だったので、来年は達成してほしいです。拓大戦の後に全員で集まって、インカレベスト8という結果を残して少し良い形が見えてきたから、(3年生以下は)目標のインカレ優勝に向けて来年はやっていこうという話を全体でしました。最後の1年間、主将になっていろいろなことがありましたが後輩たちがしっかり付いてきてくれてベスト8になれて、一つ壁は越えられたかなと思います。来年は自分たちの分もインカレで優勝して、笑って終わってほしいです」

濁川
「自分が1勝していたら3位だったので、悔しいです。後輩に助けられました。これをバネにして来年優勝してくれれば。みんな戦えていたと思います。これで引退ですけど実業団で続けるので、2月ぐらいまで稽古をつけて、来年も頑張れるようにサポート側に回りたいと思います。この悔しい思いを忘れないでやっていきたいです。やっぱり優勝したかったです。流れは良かったと思うんですけど。それでも楽しかったです。いろんな人に支えられました。特に自分はケガがたくさんあって何回も挫折しかけましたが、諦めないで最後まで頑張れて良かったと思います」

西浦
「4年間で一番良い成績なのでうれしいですが、最後の相撲は悔しかったです。勝たないといけないところで自分が勝てなくて、勝っていればもう一つ上にいけたかなと思います。予選は3勝できたので満足しています。4年間の最後で同級生と戦えて良かったです。新チームが始動してから全然勝てていませんでしたが、最後にこうして結果を残せたことはうれしいです。やっぱりキャプテンがしっかり引っ張ってくれて、主務の福田がサポートしてくれて、それだけの話だと思います。総監督、監督がしっかり練習を教えてくれて、力を付けることができました。(後輩たちに向けて)最後は情けなくて自分は何とも言えないのですが、あの子らはできると信じているので、僕らの分まで頂点を目指して頑張ってほしいです」

武政
「シナリオ通りでした。2-2でまわして、大将名和が決めるっていう。まあよかったと思います。予選の東洋大戦で先鋒が負けて自分が勝った時に、これはいけると思いましたね。中央の時も思ったんですけど。取組の面では、運が良かったですね。運が良かったとしか言えないです。個人も団体も、地力はついているんですけど、ここまで行けたのも運が良かったです。みなさんのおかげで。(個人戦決勝は体格差もある中だったが)あそこで戦えたっていう、ベスト32以上で戦えた時点で、あの緊張感の中でできたことが良かったです。(連日の取り組みに)全然意識はしてなかったですけど、最後8人に選ばれて、自信は持っていましたね。今日ここで負けちゃいけないとは思っていました。流れを大切にしました。来年はレギュラー3人が抜けて、新チームとしてやるんですけどまだまだ若い力があんまり強くないので、また一からやり直しです」

名和
「大将として、予選で2回とも2-2できたときに勝てて良かったです。意地でも勝とうと思っていたので。今日はプレッシャーとかもなくて、とりあえず中央の相手が高校の同級生で、絶対負けられないと思って、ケガしてでも何してでも勝とうっていう気持ちが強かったです。拓大も2-2できたら絶対勝つと思っていたんですけど、負けが決まっていて。それでも気持ちは切らさず、来年につなげるために勝ちました。最近ベスト8以上がないっていうのは聞いていて、ここまで来たんだったらもう1つ、2つ行こうと思っていたんですけど、今の僕らの力はベスト8。来年、ベスト8の壁を越えて。またこの冬頑張りたいと思います」