室屋がアジア大会へ向け持ち味発揮/強化試合(U21日本代表対全日本大学選抜)
9月14日より始まる仁川アジア大会に出場するU21日本代表が全日本大学選抜と強化試合を行った。大学生で唯一本大会のメンバーとしてU21に選出され、注目を集める室屋成(政経2=青森山田)も右SBで先発出場した。一方、神川明彦監督率いる全日本大学選抜には明大から髙橋諒(文3=国見)、藤本佳希(文3=済美)、山越康平(法3=矢板中央)の3選手が出場。両チームとも前後半でメンバーを入れ替えたゲームは0-0で両チーム譲らずドローに終わった。
日の丸を背負った室屋が持ち味を発揮した。右SBでU21の先発に名を連ねた室屋は、序盤からボールを引き出し得意のオーバーラップを果敢に試みる。招集後初の福岡合宿後には「周りはプロとリスペクトしてしまった。もっと自分のプレーを出さないといけない」と振り返ったが、今回は違った。室屋の上げたクロスがチャンスを生み出す場面もあり「周りがちょっとずつ自分の動きを理解してくれているなと感じた」と代表の中でも室屋らしさを表現した。手倉森誠U21日本代表監督は室屋に対し「両サイドできるユーティリティさがあるし、フィジカルが強い」と大きな期待を寄せる。徐々にチームになじんできた室屋のアジア大会での活躍に注目だ。
神川JAPANの明大3選手もU21代表相手に堂々のプレーを見せた。
前半に出場したのは髙橋と山越。左SBで室屋とマッチアップした髙橋はカットしたボールを自ら持ち込みシュートを放つなど、存在感を見せた。「通用する部分を磨いていけば代表でもプレーできると思う」と髙橋は代表への思いを強めた。
また、明大の守備の要である山越もプロで活躍する鈴木武蔵(アルビレックス新潟)や野津田岳人(サンフレッチェ広島)を相手に得意の競り合いで互角以上に渡り合った。「個人的にある程度やれたことが自信につながった」(山越)と確かな手応えを得た。
後半から右SHでの出場となった藤本は裏へ抜け出し、ボールをキープするなど随所で持ち味を出した。「シュートまで持っていけなかったら意味がない」と厳しく自分を評価する藤本だが、プロとの差については「それほど感じなかった」と自信を深めた。
結果的には0-0のスコアレスドローだったが、両チーム共に気持ちを前面に出し、非常に引き締まった好ゲームとなった。「火付け役がアギーレ監督」と手倉森監督が言うようにアギーレ新体制となったA代表でも柴崎岳(鹿島アントラーズ)や武藤嘉紀(FC東京)といった若手を起用し、その活躍が注目される中リオ世代に懸ける期待も大きい。代表相手にそん色のないプレーを見せた大学選抜に対して「間違いなく彼ら(全日本大学選抜)も五輪候補」と手倉森監督。神川監督も大学選抜のメンバーに対して「ここじゃなくてU21を目指せ」という言葉をかけ、さらなる高みを目指させる。五輪代表争いも激しさを増していくだろう。まずは9月14日からのアジア大会で連覇を狙うU21日本代表で躍動する室屋の姿に期待だ。
[鈴木拓也]
試合後のコメント
手倉森監督
「U21代表として試合できたことが良かった。点を取りすぎても良くないし、取られ過ぎても良くないゲームで、気の締まるゲームの終わり方だった。大学選抜でやっていた選手たちだって引き上げれば、今も高いだろうけど相当モチベーションも高くなる。火付けがアギーレ監督。先日の柴崎や武藤のA代表での活躍を見れば自分たちの同世代の選手たちがと思って触発される。だからこの上なくモチベーションの高い試合になるだろうとU21代表には話していた。そんな中で天皇杯で大学生がプロを破ったというのもあった中で自信をつけているのは感じた。間違いなく彼らも五輪候補。今日はそれをものすごく感じた。間違いなくJリーガーにもっていないものを持っている。本当に競争は激しくなる。(室屋については)両サイドできるユーティリティさがあるし、フィジカルが強いので期待している」
神川監督
「みんな諸事情がある中で持っている力を出し切ってU21に立ち向かってくれたので良かった。結果はスコアレスドローだが、内容も充実していて、6月のゲームと比べても非常に成長が見られた。6月に比べ、圧倒的にボールを持つ時間が増えた。それが大きな収穫。その分問題点が明確になった。最後の一本のパスとか、更にその一個前のパスの精度。まだまだ連携に不満はあるが、ユニバーシアードは来年の6月なので。ちょっとずつちょっとずつやっていければ。課題を明確にしていくことが大事。基本的には何回も集まる中でチームを熟成させていくだけだと思う。基本的にはメンバーを固めながら。セットプレーなんかは2月の宮崎キャンプで完成させられればと思う。(前半の室屋と髙橋について)やっぱり室屋はいいなと。周りがいいから室屋の良さが引き出されているなと。髙橋に関してはもうチームの中心ですから。室屋に対しては上を目指せとしか言っていない。十分やれる力はある。むしろやってもらわないと」
髙橋
「普段は一緒に明治で練習していて、お互い知っているんで少しやりづらい部分はあった。一応先輩なので、負けたくないという気持ちでプレーしていた。簡単に飛び込んだりせず、一瞬のスキというか、やっているときの様子を見て、むこうも簡単にはボールを失ったりしないのでミスの一瞬を狙うのを意識した。(一度パスカットからドリブルで持ち込み、シュートを放ったシーンがあったが)あそこは決めたかった。ああいうところで決められる選手が上に行くんだと思う。自分も努力して、チャンスをつかみたい。(個人として成長した点は)この前に比べれば試合の中で存在感とか自分の持ち味は出せたと思う。(今日見えた課題は)低い位置でボールを回している時、つまらないミスでボールを失うことがあった。あとはゴール前の精度。オリンピックの代表に対する思いはあって、今日やって通用すると思ったので、通用すると思った部分をしっかり磨いけば代表でもプレーできると思う。(室屋に対して一言)ケガしないで帰ってきて」
藤本
「(プロとの差は感じたか)プロの上手さ強さを感じる部分はあったが、そこまでではなかったと思う。(自分らしさは出せたか)裏でキープなどはできたが、シュートまで持っていけなかったら意味がない。このレベルで点が取れるような選手になりたいと思った。(追加召集の話は)栗田助監督から水曜日あるから、行ってこいという風に言われた。前日も神川さんから話があり、求めるプレーなどを聞いた。(求められたプレーとは)右サイドをやるということは聞いていた。特別なことをするのではなく、自分の持ち味を出したり、守備の部分だったり。突破してシュートに持っていくプレーを言われていたが、それはできなかった」
山越
「(今日の試合を振り返って)前回勝っているとはいえ相手は格上なので、まず気持ちで負けないように。チーム一丸となってU21に勝ってやろうという気持ちで臨んだ。(鈴木武蔵とのマッチアップは)動き出しやオフの動きは普段の大学サッカーでは、味わえないもので、改めてプロだなと思った。(手応えは)チームとしてもある程度は抑えられたし、個人的にもいいプレーができたと思う。(引き分けという結果は)最後のところでやらせないという部分ではU21の方が上だったのかなと思う。(この試合での収穫は)個人的にある程度やれたことが自信につながった。そこが一番の収穫だと思う」
室屋
「相手チームの監督が神川さんで、マッチアップも髙橋諒君で、明治の選手が多くて、全日本選抜の選手も全員知っていて新鮮だったというか。その中で無失点に抑えられたというのと、個人としては福岡合宿のときよりもチームとの連携とかも良くなってきている。(アジア大会)初戦に向けてプラスに捉えられる。攻守の切り替えであったり、裏に抜ける攻撃参加は多く出せた。だけどまだまだ固くなってしまう部分もあった。まだまだ自分を出さないといけないなと思う。前回に比べたら良くなっているなと思うし、周りが自分の動きをちょっとずつ理解してくれているなと感じたので非常にいいゲームができたなと思う。守備の1対1というのはもちろんだけど、それだけではなく、攻撃参加のところでクロスや1対1での仕掛けをもっともっと出していけたらいいなと。(マッチアップした髙橋さんは)お互い知っていて、ドリブルが上手なので縦を切るイメージでいたら、結構中にいたので、知っているというのは有利だなと。向こうも自分の特徴を知っていたので、縦を切られた。お互いやりづらかったのだろうなと。全日本でサッカーしたり大会がある度に、『ここじゃなくてU21を目指せ』と神川監督も言っていて、全日本の選手たちも行きたいと言っている。だからこそ、大学選抜側には勢いがあったと思う。自分もここにいるのに満足するのではなく、上を目指さないといけない立場。全日本の選手がU21に来てくれることで、自分にもすごい刺激なる。とてもいい環境だなと感じる。ここに選ばれて、メンバーに残っていかなければならないし、このメンバーに残るだけではなくチームとして五輪に出場するだとか上を個人としても意識していかなければならない立場だと感じているので、個人としてレベルアップしていきたい」
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