主将特集(3)

2014.08.04
 今年こそ悲願を達成する。8月21~24日に戸田ボートコースで開催されるボートの全国大学選手権(インカレ)で、明大は男女総合優勝を目指す。昨年まで3年連続で男女ともに総合2位。その悔しさを胸に、1年間勝てるチーム作りをしてきた。ここでは全8回にわたってインカレに挑む端艇部を特集する。

 3回目は、荒木祐介主将(政経4=熊本学園大付)、女子主将の松岡結(文4=浦和一女)を特集します。最後のインカレに懸ける思いに迫ります。

荒木祐介(政経4=熊本学園大付)

 110年目の新たな歴史をつくる。角久仁夫監督に言われた「歴史は革新の連続」という言葉から「その年によって主将やコーチ陣の変えていこうという試みがはまっているから110年続いている。僕らの代も僕らのやり方で積極的にいろいろなものを変えていく」という姿勢を貫いてきた。
 冬季練習は昨年廃止された2部練習を敢行。陸上でのトレーニングを減らし、とにかく水上でこぐことに重点を置いた。チーム全体の課題だったレース序盤の出遅れを改善するため、スタートに特化した練習も取り入れた。シーズンに入ってから結果は表れ、ここまでの大会では例年以上の成績を残している。練習で行う6000mのタイムトライアルでも昨年から平均して1分以上タイムが伸びた。
 さらに今年の男子部は花形種目・エイトに力を入れた。インカレ総合優勝を達成するには戦力を分ける必要があったため、近年の明大は全日本級の大会で漕手が8人乗るエイトにメンバーをそろえることができなかった。それでも「チームにエイトのノウハウがなかったので、エイトでどこまでやれるのか試したかった」。5月の全日本軽量級選手権は社会人クルーも出場する中、決勝に進出すると3位入賞という快挙。「自分たちもエイトでいけるんだと思った」。インカレではこれまで通り他種目に力を入れるが、大きな手応えをつかんだ。
 心持ちにも変化を求めた。昨年は荒木がストロークとして乗った舵手なしフォアが男子部として実に9年ぶりとなる優勝。「昨年までは優勝を目指していても優勝できたらいいなぐらいだったが、自分たちもやればそこにいけるという思いになった」。そこから「自分たちは優勝しないといけない」と言う選手が増えたという。個人個人の行動基準や意識が上がっていることを実感している。
 昨年は優勝した喜びの一方で、こんなことも感じた。「どうせなら優勝した4人だけが英雄扱いされるんじゃなくて、総合優勝したら裏方の人も全員で写真が撮れる。ご飯をつくってくれているマネージャーがいて、そういう一つ一つを構成しているもの全てで総合優勝を成し遂げたい」。これまで男女同時に総合優勝した大学はない。今年明大が達成すれば、また一つ歴史をつくったことになる。

松岡結(文4=浦和一女)

 苦しい場面で粘り勝ち、明治魂を体現する。今年度は主将兼主務としての仕事をこなしながら、選手としても全日本軽量級選手権大会では女子舵手なしクォドルプルをクルーリーダーとして見事連覇へと導いた。輝かしい実績を誇るが、意外にも「今の自分は1年生の頃からは想像もつかなかった」という。
 明大端艇部という環境が松岡を変えた。入学当初は浦和一女との違いに戸惑い、寮での集団生活にもなじめなかった。ボートの成績も伸び悩み、1年次の公式戦への出場はほとんどなし。「真っ先に辞めると思っていたし、周囲にもそう思われていた」と笑って当時を振り返る。「でも中途半端は嫌だという負けず嫌いな性格で何とかやってこれた」。自分に負けたくないという思いで、見えないところで誰よりも練習を重ねてきた。
 モットーは「楽しくこぐこと」。尊敬する選手からの影響だ。浦和一女のOGで、北京オリンピック出場を果たした熊倉美咲(戸田中央病院)選手が角久仁夫監督の知り合いであると知り、会わせてほしいと頼み込んだ。レストランで会うとボートについて質問を投げかけ、アドバイスを求めた。その真剣さが伝わり、熊倉たっての希望でペアを組み、1年次に国体ダブルスカルに出場。熊倉選手の現役引退試合だった。「自分の伝えられるものを全部教える気持ちでいると言ってくれた気道に応えたかった。楽しんでこぐことを教えてもらった」ボートの楽しさに改めて気づいた。
 女子部主将になってからは、部員の実力を引き出すことに尽力した。一年を通じて陸上の筋力トレーニングに力を入れ、例年よりも多くの乗り合わせを試すなど新たな方法を試みた。結果、例年よりも筋力が上がったことでエルゴの平均数値が伸び、互いのこぎを理解できるようになり新しいクルーでもこぎが合わせやすくなるなど成果が表れた。また、選手の意見を選考に取り入れ、メンバーの選定の理由を説明して風通しのいい環境をつくってきた。「一人一人と向き合って、ボートを楽しめる環境をつくることを心掛けてきた」指導方針にも松岡の思いが表れている。
 嬉しかったことがある。女子部主将を決める会議で松岡の名前が挙がった時、松岡が一番明治魂を体現しているからと言われた。「自分の努力が認められた気がして嬉しかった。最後はうれし涙を流したい」最後の大舞台で明治魂を見せつける。