GWS戦の末、中大との激戦制す 2年ぶりの大会制覇!/関東大学選手権

 息詰まるGWS戦を制し、2年ぶり24度目となる関東大学選手権の頂点に立った。3年連続で同カードとなった中大との決勝戦。先制を許すも第2ピリオド、DF松金健太(法2=釧路江南)のゴールで追い付くと、第3ピリオドにFW北島幹久(文3=武修館)のゴールで勝ち越した。一時は2点をリードするも終盤に追い付かれ、勝負はGWS戦に。2人目のFW上野峻輔(政経2=北海)、3人目のFW大津晃介(法3=日光明峰)が連続でゴールし、激戦に終止符を打った。また、7名の選手が個人賞に輝き、チームの優勝に花を添えた。

 ついに、待ちに待った歓喜の瞬間が訪れた。大津がGKとの駆け引きを制しパックをゴールへ沈めると、観客は総立ち。割れんばかりの歓声の中心で、選手たちはリンク上の大津のもとに集まり、重なり合って喜びを爆発させた。DF梶原聡人主将(政経4=北海道清水)は「うれしいの一言」と優勝の味をかみしめた。2年ぶりの大会制覇。選手・スタッフは試合後、共に優勝の喜びに浸った。
 昨年、あと一歩手が届かなかった頂点の座。関東学生選手権では決勝戦で中大に0-1と敗北。インカレでも決勝までコマを進めたが、GWS戦で1点の差に泣いた。悔しさが残った昨年から、迎えた新シーズンの初戦である関東大学選手権の決勝の舞台。決めたら優勝という状況で大津がパックへ向かう。実は昨年のインカレ決勝、同じくGWS戦で敗北が決まったPS(ペナルティーショット。リンク中央に置かれたパックをドリブルで持ち込み、GKと1対1でゴールを狙うもの)を放ったのも大津だった。大津は「自分がヒーローになってやる。自分も決めてやると強い気持ちを持って挑んだ」と、過去の悪いイメージを勝利への気持ちで振り払った。学生トップレベルのGKである小野田(中大)との駆け引きを制し、パックをゴールへ沈めた。「みんなが自分のところに寄ってきてみんなで喜びを分かち合えたのは最高だった。一生忘れられない思い出になった」と大津。エースが優勝を手繰り寄せた。

 決勝戦にふさわしい激戦となった。序盤から息をつかせぬ激しい攻防が繰り広げられ、一進一退のシーソーゲームに。第1ピリオド終盤、GK佐藤永和(文4=軽井沢)の押さえたパックがラインを割っていたという微妙な判定を受け、不運な形で先制を許す。シュート数でも中大に上回れ、やや劣勢に立たされた明大だったが、準決勝から復帰した松金がチームを救った。0-1の第2ピリオド11分。この日、唯一となったパワープレーを確実にモノにする。ゴール前の混戦から、大津が後方で構えた松金へバックパスを送る。「コースは見えなかったが、届いてくれと言う気持ちで打った」と松金。DFのスティックの網を縫うように放たれたシュートは、ゴール右隅に空いたわずかなスペースを逃さなかった。同点に追い付き、試合終盤に差し掛かっても足が止まらない明大FW陣。第3ピリオド7分。FW高橋佑輔(政経4=武修館)が放ったシュートは一度弾かれるが、そこに北島が飛び込む。シュートストップで右に流れたGKの左側を突き、逆転のゴールを挙げた。さらに15分、リンク中央付近で相手のミスからパックを奪った大津がドリブル突破。GKとの1対1を難なく沈め、2点差まで突き放した。
 勝利は一度、明大の手からこぼれ落ちた。残り5分での大津の追加点で2点差とし、勝利を決定付けたかに見えた。しかし、そこは昨年、関東大学選手権・関東大学リーグ戦と二冠の中大。簡単に勝たせてくれる相手では無かった。2点差としたわずか1分後にミスからパックを失い失点すると、残り2分というところでまさかの同点ゴール。流れは中大に傾きかけたが、選手たちの心は折れなかった。「2失点した後に集中が途切れずに、PSまでいけたのは良かった」と藤井匡智監督。60分では決着がつかず、5分間の延長戦へ突入。その延長戦は氷上スケーター4名ずつとなるサドンデスヴィクトリー方式で、普段以上に運動量が求められる厳しい戦い。同点とし勢いに乗る中大の猛攻を浴びるが、最後まで集中を途切れさせなかった。「チームは折れなかった。勝つという目標にチームが一つになっていたからだと思う」と北島。フィールド4名とGKの体を張った守備で守り切り、GWS戦での勝利を呼び込んだ。

 今季のスローガンである「全力」を体現した。練習から常に「全力」で取り組んだ成果が、大一番で結果として表れた。梶原主将が「出たら全力プレーをして、出られなかった人も全力でサポートしてもらっていた」と話した通り、出場できなかった選手も含めた明大の選手全員の力が一つになった。決勝の65分間、途切れさせなかった「全力」プレー。シュート数31本の明大に対して、中大は44本だった。劣勢に立たされても、昨年の関東大学選手権、そしてインカレと、昨年二度も決勝で敗れた悔しさが選手達を奮い立たせた。藤井監督も試合後に選手を称えた。「全力プレーなどのやろうとしていることができた。それが結果につながったことで、選手たちもホッとしているだろうし、やってきたことは間違いでなかった」。

 この優勝には大きな意味がある。最後の優勝は2年前、同じく関東大学選手権。現3年生が1年生だったころのことだ。2年生は昨年、優勝を経験することができなかった。FW大椋舞人(法3=白樺学園)は準決勝後「今の1、2年生は優勝したことが無いので、ぜひ経験させてあげたい」と話していたのに対して、「自分たちも1年生も優勝を味わえて、またこの気持ちを味わおうと優勝を目指せる」と松金。先輩の思いが後輩に伝わった。ベスト6の上野、松金をはじめ、昨年出場が多くなかったDF高木俊吾(政経2=駒大苫小牧)、DF相木健太(政経2=駒大苫小牧)も今大会は全試合を通して貴重な戦力に。彼らの自信につながれば、さらに頼もしい選手となるはずだ。優勝の系譜を受け継ぐ、チームにとって大きな優勝となった。

 7名が個人賞に輝いた。大会最優秀選手は大津が受賞。スピード抜群のドリブルで何度も相手DFを置き去りにするなど、個人技からチャンスを作った。昨年インカレでの得点王、ベスト6受賞から、年度をまたいで2大会連続での個人賞受賞となった。「すごく光栄。これを皮切りに、さらにステップアップしていきたい」と大津。エースがさらなる成長を遂げれば、これ以上頼もしいことはない。
 ベスト6には5名が選出。6名中、5名を明大の選手が占めた。ベストGKには佐藤永が選出。昨年まで不動の守護神だった伊藤優人(平成26商卒=現東北フリーブレイズ)が抜けたGK陣だが、その穴を埋めて余りある活躍。決勝でもファインセーブを連発した。そしてGWS戦では2本のシュートをストップ。チームを優勝へ導く原動力となった。ベストDF2名に選ばれたのは梶原と松金。梶原は新主将として、チームを一つにまとめ上げた。松金は故障の癒え切らない中で準決勝からの強行出場だったが、周囲にケガ人とは思わせないプレーを見せた。大学入学後、初めての欠場を味わった今大会。しかし改めてその存在感を示した。
 ベストFWには大椋と上野が選ばれた。大椋は副将が高橋のみという中で、全試合で各チーム2名ずつのアシスタントキャプテンとして出場。準決勝では値千金の逆転ゴールを挙げるなど、1セット目のセンターとして準決勝、決勝で4得点に絡む活躍。それ以外にも随所で観客をうならせるプレーを見せた。上野は今大会、準決勝まででチームトップの7得点。そして決勝のGWS戦では、2人目で出場しゴールを決めた。上野は「チームと個人で、タイトルを二つ獲りたいと言っていた」と素直に喜んだ。
 そしてもう一人。最優秀新人にDF大場大(政経1=駒大苫小牧)が輝いた。1年生ながら梶原とともに1セット目に出場。DF面で梶原とともにチームを支えた。梶原も「気持ちの強いやつ。もともとスキルが高い選手なので、すごくやりやすかった。新人賞は当たり前かな」とルーキーを褒め称えた。攻撃面でも初ゴールをゲットするなど、充実の大会となった。

 まずは一冠だ。新体制となり挑んだ最初の大会で優勝を果たし、絶好の船出となった。そして、三冠への挑戦権も獲得することが出来た。二冠目となる関東大学リーグ戦の開幕は9月。「目の前の一戦一戦に照準を合わせて、全力で一戦一戦やっていきたい。そうすれば結果は付いてくる」と梶原主将。明大の悲願である三冠へ「全力」で挑む。

[高田悠太郎]

試合後のコメント
藤井監督

「自分たちが悪い中での失点ではなかったので、同じことをしていればいいと思っていました。スコアに繋げるためには、特にFWの運動量とゴールに向かう姿勢が大切だと言いました。2ピリは特にチェンジが出来ず体力的にも厳しい中で、動きが落ちず、3ピリ勝負で先に動いていけたのが2得点につながったと思います。あのまま逃げ切っていればよかったのですが、向こうも運動量が落ちませんでした。それでも2失点した後に集中が途切れずに、PSまでいけたのは良かったと思います。そこで勝ち切れたのはインカレの経験も生きたかと思います。いいゲームを出来て、全力プレーなどのやろうとしていることがほぼ全員できたと思います。それが結果につながったことで、選手たちもホッとしているだろうし、やってきたことは間違いでなかったと。春で勝つと毎回三冠と言いますが、おごりがでて秋はさっぱりということもあるので、浮かれることなくやりたいと思います。個々のスキルやチーム力をアップさせなければ、秋はないと思います。今季のスローガンである「全力」を練習中から、なかなか出来ることではありませんが、やっていかなければいけないと思います。優勝を常に狙っていきたいです」

梶原
「うれしいの一言。このチームのキャプテンで良かったです。正直不安もありましたが、今のみんなが普通のプレーをすれば、負けることは無いと思っていました。不安もあって、試合はじめると自信も出てきました。苦しい展開にもなり、最後のPSも自分は祈ることしかできなかったですが、自信持って任せられたので良かったです。(1ピリ終了間際での失点)昨年と全く同じ展開で、不運な形で1点を入れられて、1ピリ終わってみんなに言ったのですけど、2年生以上は昨年のことを思い出してもらって、昨年はその1点で負けたので、思い出してもらって2ピリから(入れました)。昨年は卒業した4年生たちが残していってくれた1点の重みを教えてもらっていたので、それが生きて2ピリからいい動きで良かったです。(3―1から追い付かれたが)ちょっともう3―1になった時点で正直もらったなと思ってしまったのですけど、それがみんなのプレーに出てしまったので、やはり中大なので、強い相手で簡単には勝たせてくれないなと今日も思わされました。これからもいい勉強になったしみんなにいい刺激になったので、どんな展開になっても気を緩めず試合終了までプレーするといういい刺激になったと思います。(ベスト6は)まあ良かったです。初めてなので。(ここまで勝ち進めたのは)チームみんなすごい仲が良くて、それがいい意味で試合につながっている。みんなが勝ちたいという気持ちを、後輩たちは4年生と仲がいいので、4年生のために勝ちたいだとか、4年生は4年生で後輩たちのために勝たせたいとか、そういう気持ちがうまく一つになった形で最初から大会に臨めたので良かった。(ケガ人も多かったが)そういう部分もありましたが、いる人はいる人で、いない人も含めて気持ちは一つで、出たら出たで全力プレーをして、出られなかった人も全力でサポートしてもらっていたので、いい底上げになったと思います。(三冠に挑戦できる唯一のチーム)最終目標は三冠なので、去年とか、秋とか長い期間にわたって大会があって、ちょっともったいない形で試合を落としてしまったり引き分けたりして優勝を逃してしまっているので、今年は三冠はもちろん、秋の大会の優勝もですけど、目の前の一戦一戦に照準を合わせて、全力で一戦一戦やっていきたい。そうすれば結果は付いてくると思います」

大津
「GWS戦のときは、この前のインカレで外したのが頭の中に残っている状態でした。でも、自分がヒーローになってやる、という思いを持って、上野が決め、自分も決めてやるという強い気持ちを持って挑みました。あの決め方でゴールを決めようと思っていました。GWS戦で自分が決めて優勝し、みんなが自分のところに寄ってきてみんなで喜びを分かち合えたのは最高でした。一生忘れられない思い出になったと思います。MVPについては、すごく光栄です。これは自身の自信につながりますし、これを皮切りにステップアップしていきたいと思います。トーナメント戦は、勝ったチームが強いチームですが、リーグ戦では強いチームが勝ちます。今よりも強いチームになってリーグ戦では優勝したいです。欲を言えば、全部勝って優勝したいです」

北島
「準決勝の早大戦からいい流れで勝てていたので、決勝は絶対に勝ちたいと思いました。あと、部屋長の(佐藤)永和さんを胴上げしたかったので、何としても勝ちたかったです。2点目を決めたときは、すごく嬉しかったです。自分の中でも、今日はいけるんじゃないか、という思いがありました。2点差を追いつかれましたが、チームは折れなかったです。勝つという目標にチームがひとつになっていたからだと思います。リーグ戦に向けては体重を増やすことと筋力増加です。リーグ戦では得点王を目指したいです。選手層、システムに関して昨年より上だと思うし、一戦一戦を大事にして優勝したいです。笑って終われればと思います」

上野
「やっとタイトルを取れました。とりあえず優勝の味を味わえてよかったです。また獲りたいという気持ちが生まれますし。優勝した瞬間は解放というか、最高というか。昨年は春もインカレもいけそうでいけず、二つ逃していたのでようやく切符をモノにできたと思います。明大にとっても久しぶりの優勝ですし、チームとしてもいいことだったと思います。これで勝ちグセがつけば。中大は慣れたせいか、そこまで怖さは感じませんでした。延長も足して65分で点を決められなかったことは、チャンスもあったので詰めの甘さだと思います。(ベスト6について)チームと個人で、タイトルを二つ獲りたいと言っていたので。貪欲にゴールを狙った結果だと思います。」

松金
「最高にうれしいです。昨年と同じ中大との対戦ということもあり、スペシャルな優勝になったと思います。昨年は0-1で負けていましたし、中大も準決勝でいい動きをしていたので、気合を入れていきました。まだケガが完治しておらず折れている状態でしたが、また折れても良いという気持ちで試合に臨みました。踏ん張ったときに多少の痛みはありましたが、気になりませんでした。2年目ということで、いい緊張感で臨めたと思います。(得点については)あとから見れば最初で最後のパワープレーで、(大津)晃介さんからパスが来たときは、コースは見えていませんでしたが届いてくれという気持ちで打ちました。ここで負けたらチームとしてPSに苦手意識を持ってしまったかもしれませんが、勝ちをモノにしたことは非常に大きかったと思います。(ベスト6については)準決勝から出て、そのままの流れで取れたかなと。直前にケガをするまでは狙っていましたが、試合中には意識していませんでした。1、2回戦と出場できずチームを外から見て、得るものもありプラスになったと思います。早大戦では満足のいく動きが出来なかったのですが、それでも準決勝、決勝とある程度のプレーは維持できていたと思います。自分たちの代は優勝できていなかったですが、自分たちも1年生も優勝を味わえて、またこの気持ちを味わおうと優勝を目指せると思います」