延長戦の末、関東王者に惜敗/全日本大学選手権

2013.12.23
延長戦の末、関東王者に惜敗/全日本大学選手権
 初戦となった2回戦では後半から地力の差を見せつけ快勝した明大。準々決勝は関東リーグ戦を3連覇した専大との大一番になった。前半20分ごろから雨が降り始める悪条件の中、関東王者と互角の戦いを見せた。後半にオウンゴールで先制を許したが相手GKのミスを見逃さず同点に追い付く。だが延長前半に一瞬のスキをつかれ追加点を許してしまい、ベスト4進出を逃した。

 夏の総理大臣杯ではあと一歩で逃した優勝。選手たちはインカレでのリベンジに燃えていた。今季専大にはリーグ戦で1敗1分け。圧倒的な力を持つチームから勝ち星を奪えていなかったが、優勝のためには越えなければいけない相手だった。
 試合開始直後から一進一退の攻防を繰り広げる。専大に何度も危ない場面をつくられるが守備陣が集中したプレーで相手を抑えると、攻撃陣も相手ゴールを脅す。しかし試合途中から一気に天気が怪しくなり、前半20分ごろにはひょう混じりの雨が降り出す悪コンディションになった。40分にはゴール正面で相手にFKを与えるピンチに。しかしシュートがクロスバーに弾かれると逆に明大がカウンターのチャンスを迎えた。42分には差波優人(政経2=青森山田)のFKを相手GKが弾くがこのボールには詰められなかった。両チームともにチャンスをつくるが得点は生まれず前半を終える。
 後半には雨が激しさを増し、選手のプレーの精度を落とさせた。しばらくは互いに譲らない展開が続く。だが後半20分、相手のシュート性のクロスが明大DFに当たりゴールに吸い込まれた。不運な形で先制点を許すが、今年の明大は諦めなかった。粘り強くゴールを狙い続けた。そして後半36分、高橋諒(文2=国見)のクロスを相手GKが弾くと、途中出場の苅部隆太郎(商3=川崎フロンターレU-18)がこぼれ球を押し込んだ。Iリーグから這い上がってきた選手の「泥臭い、明大らしいゴール」(神川明彦監督)に、雨の中濡れながら応援し続けた明大応援団も盛り上がりを見せる。
 試合は10分ハーフの延長戦に突入。追い付いた勢いで逆転を狙う明大だったが延長前半5分、ゴール前でのパスワークから抜け出され冷静にゴールに流し込まれた。再度追い付きたい明大はゴール前のFKでGK三浦龍輝(商3=FC東京U-18)も前線まで上がるなどパワープレーで得点を狙った。しかし2度目の歓喜の瞬間は訪れなかった。試合終了の笛が鳴り響くと、ゲームキャプテンを務めた水野輝(文4=市立船橋)は天を仰ぎ、主務としても選手としてもチームをけん引した秦和広(文4=広島皆実)はその場にしゃがみこんだ。
 「プレーの精度が専大の方が上だった」(神川監督)。シュート数は互角だったが、フィニッシュの精度が勝敗を分けた。しかし神川監督は「いい試合だった」と目を細めた。9月のリーグ戦で専大に惨敗を喫してから3カ月。チームは互角に戦えるまでに成長した。「4年生が抜ける穴は大きい」(三浦)が、今年は多くの下級生が試合に出場し経験を積んだ。特にDF陣は来年も全員が残る。攻撃の中心だった和泉竜司(政経2=市立船橋)ら2年生への期待は大きい。
「来年こそは優勝を」(小川大貴主将・営4=ジュビロ磐田ユース)。4年生が残した思いを胸に、チームは来年も奪冠への挑戦を続ける。

 専大戦が転機に
 今年は前期リーグ戦こそ不振だったが、6月のアミノバイタルカップで優勝、8月の大臣杯で準優勝とチームは上昇気流に乗っているように見えた。しかし9月の専大戦で惨敗し実力の差を見せつけられた。「明大が地に落ちた日」と神川監督は振り返る。それから練習方法を見直し、1対1の対人練習や4対4といった数的同数の状況での守備練習を積み重ねた。この日は結果的に2失点したものの「守備は今季の試合の中でも一番よかった」(秦)と選手たちも手応えを感じているようだった。

 チーム一丸で
 初戦の宮崎産業経営大戦のアップ後、ロッカールームに戻った選手たちを待っていたのはサプライズのプレゼントだった。小川主将が発案者となり、ベンチに入れなかった部員たちがインナーにスプレーで背番号と寄せ書きを書いた。1日3~4時間をかけて一人ひとりに向けて作られたプレゼントがピッチに立つ選手たちの背中を押した。
 また専大戦では試合途中から天候が悪化。雨が降り屋根の下にいても体が芯から冷えてしまいそうな寒さだった。専大応援団は屋根の下に避難したが、明大応援団は各自がレインコートを着て応援を続けた。濡れながら声援を送り続ける姿に「今年のチームの一体感を感じた」(苅部)。チーム一丸の姿勢が今年の明大の強さの原動力になった。

[高山舞]

試合後のコメント
神川監督

「いい試合だった。今年のチームの成長を見た。9月のリーグ戦で専大に負けてから練習を見直した。3カ月前に比べ本当に成長した。ただプレーの精度が専大との差。パスだったり、フィニッシュだったり。そういったところを一からやり直したい。今年は山あり谷ありの1年だった。前期リーグは低調で、アミノバイタルを戦う中で徐々に上向きになって、総理大臣杯では優勝こそできなかったが、手応えをつかんで終えることができた。けど9月の専大戦でメッキが剥がれたというか。そこで1回チームとしてどん底まで落ちた。練習を変えたことでそこから徐々に上がってきた。今年は4年生が本当にしっかりしていた。去年と比べてチームとしてのメンタルが強い。点を取られても崩れない。ただ黄金時代はまず点を取られなかったから、そういった点ではまだまだ。それと今年は3年生が本当に頑張ってくれた。夏のあたりから意識が変わっていい感じになってきた。下級生に力がある選手が多いから来年以降もチームとしてすごく楽しみ。もう少しでまた黄金時代が来ると思う」

小川主将
「悔しい気持ちもあるけど、みんなすごく精一杯やってくれた。見ていて伝わってくるものがあったゲームだった。悔しいのもそうだけど、達成感というか。1年を振り返ってみてもいい思い出しかなかったし、すごくいい1年だった。結果はベスト8で終わってしまったが、それ以上のものが得られたなというのが今の率直な気持ち。僕がキャプテンになってから、ずっとサッカーに対してどれだけ真剣になれるかということを強く言ってきた。今までは部には所属しているが本気じゃなかったり、覚悟が決まってなかったりした人もいた。
このままじゃだめだってことを、いろんな形で選出たちに伝えてきた。結局は気付いてくれて良かったけど、気付いてくれるのが少し遅かった。夏の総理大臣杯で準決勝に行ったあたりからみんな変わってきたと思う。そこから3カ月間勝つために、厳しいトレーニングを積んできた。そして専大戦に臨んだけど、負けてしまったということは実力が足りなかったということ。この悔しさをバネに下級生も4年生ももっと頑張っていけたらいいなと思う。
守備はすごく成長したし、2失点はしてしまったが粘りのおかげで延長戦までいくことができた。(下級生が多く試合に出ていたが)個人個人が高い意識をもってやってくれていたので、特に何もいうことはなかった。専大には3連覇されてしまったので、なんとか倒して優勝してほしい。今年はチームの目標を奪冠と掲げていたので、来年はインカレ、リーグ戦、総理大臣杯といったタイトルを取ってほしい。ぜひチーム一丸となって頑張ってほしい」

水野
「悔しい。勝ちたかった。それが今の率直な気持ち。失点シーンは気持ちで持っていかれたところがあったかなとは思う。攻撃も悪くはなかったけど、欲を言えばあと数点取れるチャンスはあった。そこを決められるかどうかが、結局は専大との差。技術的には差があるとは思わなかった。9月に専大に負けてから守備の練習をひたすら見直した。対人練習や数的同数での練習を増やした。今日のDFはすごく安定していたと思う。今年通じてみても一番良かった。前まではズルズル下がっちゃうところがあったけれど、今ではしっかりラインを保てているし高い位置から相手にプレッシャーをかけてボールを奪いにいけるようになった。
この1年間キャプテンが試合に出られないことが多くて、その中でどうやってチームを引っ張っていくかをずっと考えてきた。自分は試合の中でプレーで伝えるのが理想だと思ってきたけれど、自分が考えていた以上に下級生がしっかり考えてプレーをしてくれていた。
プレーの中では球際の強さや切り替え、運動量といった見ていて熱くなれるものが伝わればと思ってやってきた。生活の面では寮長を務めているのもあって体調管理とかそういったところで手本になれるようやってきた。今年は下級生がたくさん試合に出て経験を積んでくれた。頼りになる後輩も多い。この経験をどうやって下に伝えていくのか一人ひとりが考えてくれれば、それが来年のチームの強さにつながっていくと思う」


「基本的なところが専大の方が上だった。特に攻撃面。2点目はゴール前であれだけ正確につないで入れることができる選手がいてこそのプレーだし、逆に自分たちはそこの技術が足りなかった。守備はほぼ完璧だった。今年の試合で一番良かったと思う。この4年間、いろいろなことを経験できたし成長できた。特にこの1年間は主務も任してもらって、選手としてもよりチームを全体的に見られるようになった。高校の時はもっと自分中心でプレーを考えていたけれど、上級生になってプレースタイル的にも立場的にも人を生かすということを学んだ。今年は小川がいないことが多かったけど、スタッフとしてチームを支えてくれたから一緒に戦っているという印象がすごく強かった。(水野)輝や(矢田)旭(法4=グランパスユース)はプレーでチームを引っ張ってくれた。常に何ができるかを考えた1年だった」

三浦
「予想していた通りのゲームになったが、技術的に相手の方が上だったなと思った。メンタル面では全然問題なく明大らしくできたが、精度の部分をもっと上げていかなければいけないなと思った。チャンスはたくさんあったので、そこは決めていかないといけないし、逆に失点を抑えていれば勝てない試合ではなかった。確実に成長はしてきているとは思うが、やっぱり結果で残してかなくてはならないと思う。僕はまだ3年なので来年は同じことを繰り返さないようにしていきたい。(寄せ書きのインナーをもらった時は)より責任感が増したというか、勝たなければいけないなと思った。4年生は全体的にすごく真面目で去年にはない色だったので、そういうのはサッカーの取り組み方も変わってきた。チーム内の話し合いも積極的に行われたので、そういう部分は続けていきたい。今年はすごくいい刺激を受けたというかいいものをもらったので来年もそれを続けていきたい。今年はタイトルを取れなかったので、一つでも多くタイトルを取りたい。まとまりだったり、明大らしく戦っていったりを意識していきたい」

苅部
「前半0ー0で耐えたので、後半同点に追い付いて明大の流れになった時に点が取れて勝ち切れたのかなと思う。決めるチャンスが2、3回あったので決定力の差が出てしまった。(得点シーンは)飛び込んでいって、見たらボールがこぼれていたのでびっくりした。後は入れるだけでした。あれは1年間みんなが一生懸命やってきた結果がこぼれることにつながったと思うのですごくうれしかった。リーグ戦出始めて一点も取っていなかったので、来年につながるゴールだったと思う。これを機にもっとどん欲になっていければと思う。去年までは気持ちがふらふらして手がつかない状態だったが、今年はやっと真剣に向き合ってここまで来ることができた。もっと上を目指して真剣にやっていくべきだと感じた。今日のゴールは1年間真剣に向き合ってやってきた結果が出たゴールだと思う。(真剣に向き合おうと思ったきっかけは)プロになるという覚悟ができたこと。そのためにポジションも変えて、Iリーグもやってきたので意識も変わってきたと思う。僕は(小川)大貴くんとペアで、ずっと言われ続けてきていた。その言われてきたことがやっと理解できた。(インナーは)試合前にロッカーに戻ったら全員分があってみんなびっくりした。初戦のアップから帰ってきた時ですね。名前入りだったのですごくうれしかった。絶対、他の部にはない結束が明大にはあると思う。応援もみんな雨に濡れながらやるのはなかなかやることはできない。(ベンチに3つ出られない4年生のユニフォームがあるのも)今年のチームまとまりがあることだと思う。そのことが成績にも結びついた一番の要因だと思う。来年は三浦を中心に僕が支えていきたい。今年は下級生が多くでているので来年も継続して同じようなサッカーを貫いていけば優勝も見えてくると思う」

山越康平(法2=矢板中央)
「とてもお互い気持ちが入っていて白熱したゲームとなったが、最後は勝負弱さというか相手の方が一枚上手だった。決めるところで決められなかったことと、相手はチャンスをきちんと決めていたことが明大と専大の違いだったと思う。9月の専大戦で負けてそこからもう一度基礎の部分とかを鍛え直してきた。その試合で力の差を思いしらされた。前、負けた時よりは戦えるようになってきたとは思うが、最後は負けてしまったので来年はリベンジしたいし、タイトルを取りたい。今日の守備はある程度問題はなかったが、失点の場面での競り合いでかぶったりするところやワンツーに付いていかないという基本の部分ができていなかったのでそういう部分を突き詰めていきたい。(水野)輝さんだったり、(小川)大貴さんだったり4年生の存在はとても大きいので抜けた穴は大きい。今度は僕たちがしっかり自覚をもって、中心となってやっていけたらなと思う。インナーにみんなの寄せ書きがあったし、今日も雨の中、専大は屋根のあるところで応援していたけど明大は雨の中みんな一体となって応援していた。みんな一体となって戦っている本当に素晴らしいチームだと思う。インナーはとても感動した。今年、専大に一回も勝てなかったし、日本一になることもできなかったので来年は一から鍛え直してすべてのタイトルを取りたい」