朝日新聞 GLOBE×明スポ~1年生記者の声~⑫

朝日新聞 GLOBE×明スポ~1年生記者の声~⑫
「最良の方法を探る」(『突破する力』GLOBE122号、G-14)

 絵を描くことでこの世に作品を生みだす画家が多く存在する。その一方で、傷つき劣化した作品を元の状態に復元し保存する修復家も存在している。決して有名ではないが、美術界を裏から支える重要な職業だ。現在、日本で修復家として活躍する女性がいる。岩井希久子さんだ。

 最初から修復家を目指していたわけではない。東京芸大を目指し浪人したが、短大の美術部に進んだ。その後、在学中に知り合った芸大生と結婚。同じ絵の道を目指していたが、夫のほうが才能があると判断し、食べていくためにも自分の夢はあきらめた。それでも絵のそばにいたくて、浪人時代のバイト先であった修復の会社を選んだ。

 絵画の修復は、元の絵に直接描き加えるだけの単純な仕事などでは決してない。まずは目の前の作品と向き合い「会話」をする。作品の、そして作家の表現・思想を伝えるために最良の方法を探り「治療」する。しかし自分の修復の方法が正解かどうかは分からない。常に究極の選択を迫られる。

 これは絵画の修復に限った話ではないだろう。人生においても、この先何が起こるのかは誰も分からない。まずは目の前の出来事に向き合い、小さなことから重要なことまで決断を下し、手探りで進めていくしかない。そのような判断を、日々仕事として行う岩井さんに、勇気をもらった気がした。

[板橋洋子]

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