インカレ注目選手インタビュー リーグ後半転機に調子上げる 森山翔太主将
2009年に1部昇格を果たし、10年から3シーズンを1部で戦った。これまでは「チームの成長のシーズン」と口にしていた塚本清彦ヘッドコーチも「上を狙っていく」と一つの画期を迎えている。
1対1を仕掛ける森山
今季の1部リーグ戦で明大は中断期間明けから4連勝。終盤で勝ち星を伸ばし、3位に入賞した。中断期間明けの青学大戦では、主将の森山翔太(営4=市立船橋)が積極的な姿勢を見せて勢いがつくと、明大は青学大に快勝。ここにきて、森山主将は調子を上げてきている。
今回は最後のインカレを迎える森山主将に好調の要因を聞いた。さらに主将としての1年間や入学してからの4年間をさまざまな話題とともに振り返った。
「自分にとって言ってほしかった言葉が聞けたのがうれしくて」
――今季のリーグ戦、中断期間以降何かをつかんだように見えましたが
「リーグ戦というか、今季ずっとだったんですけど、自分の中で自分の役割というのがはっきりしていなくて、試合に出ても何をやっているんだろう、自分の出ている意味は何なのだろうともやもやした中でプレーしていました。中断期間に入って、その中で自分は何をしたらチームにプラスになるのだろうと考え込んでいて…。(中東が東アジア選手権に出場してチームに遅れて合流したため)中断期間明けの試合の前に、スタートは自分を出すと言われていて、そのときヘッドコーチが「お前に求めていることは得点を取ることだ」と言ってくれて、光が射したというか、自分にとって言ってほしかった言葉が聞けたのがうれしくて。この言葉は今でも一番心に残ってます。それから、得点を取りにいくという姿勢が変わって、リングを見ることで、周りが見えて1対1を仕掛けていくこともできるようになりました。何よりもプレーを楽しめています。やっぱり得点を取りに行くというのは楽しいです」
――塚本ヘッドコーチの中での自分の立ち位置が分からなかったということですか
「なんで出ているんだろう、何を評価してくれているんだろうとずっと思っていて…。その中でヘッドコーチの言葉があって、自信がついたというのも変ですけど、自分が変わったきっかけになりました。何のために、何で明治に来たのかというのもいろいろ考えなおして、原点に帰ることができたというか、自分がバスケをやっていて楽しいのは点を取ることだし、それで自分の存在を示すことができて、そういうことを思い出すことができました」
――「なぜ明治に来たのか」というお話がありましたが、明治に決めたきっかけというのはなんなのでしょうか
「高校の1、2年のときから大学バスケを観る機会があって、その中で明治のバスケは面白いなと感じました。直観的なものだったんですけど、明治はどこからでもシュートが打てるというチームでした。その一員になって、観てて面白いと思われるようなバスケをやりたいなと思って、他の大学からも話は来ましたけど、もう明治に行こうと決めていました」
――高校の早い段階で決めていたんですね
「高校のときの尊敬している先輩が明治に行っていたし、自分が大学1年のときの4年生だった金丸(晃輔・平23政経卒=現アイシンシーホース三河)さんっていうすごいスター選手もいて、自分もスター選手になりたいという気持ちで明治に入りました」
――とても高い目標を持って入ったんですね
「夢はけっこうでかく明治に入ってきました(笑)」
「みんなそれぞれ、自信を持つタイミングがあったんだと思います」
――1年生のころはどうでしたか
「実力も無かったんですけど、自分が大学に入って一番学びたかったのは得点の取り方でした。でも、下級生の時に一番成長したと感じているのはディフェンスです。高校時代は全然できていなかったんですけど、何度も何度も細かいところから教えてもらったので、今はそう簡単にやられないという自信があるくらいになりました」
――昨年を見ていても明大はディフェンスのチームというイメージが強いですが、高校時代はそう感じていましたか
「自分が高校時代見ていた時は金丸さんが得点を取っているイメージが強くて、今も安藤(誓哉・情コミ3=明成)のような選手がいるから、そういうイメージが強いかもしれないけど、実際中に入ってみると明治はディフェンス中心のチームですね。高校生のときに見ていたイメージとはギャップがありました。でも、それが自分にとってプラスになっているし、ディフェンスの魅力というのに気付かされましたね」
――明治に入学して1年が過ぎて、安藤らが入学したというのはインパクトが大きかったのではないですか。
「負けないという気持ちで最初はいたし、最初は自分に1年間やっているアドバンテージがあるはずだと思っていたんですけど。けれど、1つ下は能力も高いし、なにより自分が駄目だなっていう期間が長くて、去年の1年間もプレータイムはもらっていたけど、思うような結果が残せないことが多かったし、(今季のリーグ戦の)最後の4試合まで自分の理想のプレーができていなくて、チームの力になれていないなと考えてしまっていました。切り替えたいと思っても、なかなかできなくて…」
――3年生の時には「自分たちが2年生を支えたい」というような言葉もありましたが
「昔はそうでしたね(苦笑)。自信がなくなっている時期でしたし、まだ3年生ということもあって、(明大は昨年4年が不在だったため、3年が最上級生だった)最上級生の大切さに気付くことができていなかったし、うまい人ががんばれば勝てるみたいな考え方もあって。でもいまはそういう気持ちじゃないんですよ。自分たちが引っ張っていこうという気持ちがいつかは分からないんですけど、出てきて。みんなそれぞれ、自信を持つタイミングがあったんだと思います」
――昨年のインカレ以降にその意識が感じられる部分が多くあったように感じますが
「自分たちが引っ張っていこうと4年生の中でも話し合いましたし、成也(田中)が最初から活躍してチームを引っ張ったり、それでもそういうのを自覚したのは自分が一番遅かったと思います(苦笑)。そうやって、引っ張ろうとする人数が増えていったというのがけっこう大きいですね」
――昨年は森山さんが精神的にチームを引っ張って、安藤がゲームキャプテンを務めるという形で、今年はキャプテンを務めました
「どうやって引っ張っていったらいいんだろうというのはありました。キャプテンっていうのは口で言いながらもプレーでも見せるものだと、自分の中で感じていました。でも自分はそれにはほど遠いと感じていたし、ケガも多かったですし。自分の言葉に重みをもたせたいとしてもなかなかできなくて、伝えたいことを伝えるタイミングも難しかったですね」
――プレーだけでなく、自分以外のことで考えることが多かったんですね
「そうですね。自分の立場もあって、なかなかプレーだけというわけにもいかないですし。自分の立場だと下がミスをしても、上級生が怒られてしまう。最初は俺のミスじゃないのに何で俺が怒られるんだと感じていたんですけど、やっていく中でそれが上級生の役目だと思うし、自分が下級生の頃は先輩にカバーしてもらっていたなと思い出しましたね。やっと4年生らしくなれてきたのかなと感じてます」
「分かってきたんだと思います、塚本さんのバスケットが」
――その中で今季はリーグでは3位になりました
「毎年リーグ戦では苦労して入替戦に行くか行かないかというところでやってきたけど、今年はそういうのはなかったし、特に最後なんかはいろんな選手を試合に出してもレベルが下がらない。試合中に選手を変えても、流れが変わらないし、選手を変えても力が下がらないというのはチームの力が高いということだと思います」
――そこまでチーム力を上げることができたのはどこに要因があると思いますか
「練習の雰囲気が格段に良くなりましたね。質が上がりました。みんなが試合に出るようになって、モチベーションが上がったのが大きいですね。練習の質が上がったので練習試合になっても、相手のプレッシャーもあまり感じなくなって、試そうと思っていることをできる余裕がありますし、試合でも立て直すのが早くなりました。しっかりするやつがしっかりするというか、なかなか崩れないんですよ、大きくは。ちょっとここはやばいなとなったらすぐに(来季主将の)小山(耀平・文3=光泉)を中心に集まったり、試合だったら5人が集まったり、それぞれ意見がある中でそれを相手に伝えられるようになったことも成長の一つだと思います」
――試合中に集まって話すことがかなり増えましたね
「気付くことがあれば、集めて話すようになりましたし、今まで選手だけでやっていたけど、監督やコーチにも確認するようになったところが、去年よりも良くなったとこですね」
――ベンチも盛り上げてくれるようになりました
「最初は意識してやっていたんですけど、いまは意識しなくてもベンチが盛り上げてくれますね。それは多分意識していたことが根付いたってことなんだと思います」
―― おととしはあまり声を出して盛り上がるようなチームではなかったですよね
「自分が下級生のときは一回流れが悪くなると沈んでしまって、そのままになってしまうことも多かったんですけど。勝てない試合が続いて、空気もピリピリしていたのもあります。でも今はベンチの雰囲気も変わりましたし、下級生に明るいやつが多いんで、今は田中井(紘章・政経1=山形南)とか小谷(拓哉・文1=育英)がベースに下がってしまって、抜けてあいつらの存在感の大きさを感じますね。インカレに向けて最初の練習は静かなものになって、少し重くなってしまって、それは小山が変えていこうとしてくれました。今日(20日の練習)はゾーンのディフェンスの練習だったんですけど、まだ完成していないですし悪いところがあればすぐに話すようにしました。修正のスピードが速くなりましたね」
――塚本ヘッドコーチの言う「自立」ができていきているように感じますが
「去年1年の経験がありますし、分かってきたんだと思います、塚本さんのバスケットが。間違えたら自分で気付くし、まだまだ甘いところも多いですけど、ああここが間違っていたなと、仲間が先に言ってくれることもありますし、そういうところでは『自立』できてきたのだと思います」
――塚本さんに教わったことも多いですか
「塚本さんはすごくはっきりしていて、言われたことができれば使うし、できなければ使わない。前までは悪いことをしないようにと考えてプレーをしていたんですけど、今まで意識していたおかげで、いまは自然と悪いプレーっていうのをしなくなってきていると思います。悪いプレーをしないようにではなく、どうプレーすればよいのかという考え方に徐々に変わってきました。」
――塚本さんに以前お話を聞いたときは「選手に恨まれても構わないから、プレーヤーである前に社会に出ても大丈夫な人間を育てたい」とおっしゃっていました。それを感じることはありますか。
「今になってですけど、ここまで言うかというくらい怒られたこともたくさんあって(笑)でも、そこまで言ってくれる大人がいるというのはとても貴重なことなんだと思います。これは自分が上に立つとすごく実感することで、上にならないとなかなか感じられないと思いますね。それに塚本さんは選手に自分で考えることを求めますね。選手に考えさせてどうするのかを求めていると思います」
――ほかにも塚本さんの影響というのはありますか
「すごく長い時間話されるので、長い時間相手の話を聞いていても集中できるようになったことですかね。ずっと集中できるようになりましたよ。これは就活していて役立ちました(笑)」
――社会に出るのに役立っていますね(笑)
「塚本さんは社会でやっていくために、特にプロに行こうとしている選手にバスケだけじゃなく社会人として送り出せるように厳しくやっていると思います。就活をやっていて周りの話を聞いても、こういう環境でやっている人はほとんどいないですね」
――佐藤前主将(卓哉・平24法卒)はプライベートでも塚本さんと飲みに行くと言っていましたが森山さんもよく行きますか。
「自分もよく誘われていきますね。プライベートになると、お酒が入っているからこそ言えることもありますし、塚本さんも飲みの場ではまたいつもとは違う話をします。すごくメリハリのある人ですよ」
「ベスト4が目標じゃファイナルにはいけないですし、でも今年は必然と目標にするレベルが上がりました」
――話を戻します。森山さんにとって最後のインカレがあと1週間(20日現在)に迫っていますね
「そうですね、今までは考えられなかったファイナルに行きたいとみんな思っていると思いますし、それでも、そこでもやることは今までと変わらないです。今まで積み上げてきたものはもうそんなに変わらないですし、変えられるのは気持ちくらいだと思います。自分は力むと力を出せないタイプなので、あまり最後だからとか思わないで、リラックスしてやりたいです。4年目になってやっと見つけたことなんですけど、最後だからと気負うとそれが重荷になってしまいそうなので、あまり考えず思ったままにやりたいです。自分の武器はスピードだと思います」
――八ヶ岳の合宿では選手だけで集まって、優勝を目標として設定したというお話を聞きましたが
「今までは目標には上がってくることはなかったですし、昨年はベスト4という目標でした。ベスト4が目標じゃファイナルにはいけないですし、でも今年は必然と目標にするレベルが上がりました。自分たちだったらそこにチャレンジする資格があると思うので、そういう目標にすると決めました」
――自分自身明大を見てまだ3年目ですが、年ごとに成長しているのを感じますよ
「そうですよね、中にいる自分たちもそう感じてるので、観てくれている人ならなおさらだと」
――1年目とは見違えるようなチームになりました
「ほんとに毎日ピリピリしていて、もうバスケットどころじゃなかったというか(笑)ミスしたらおしまいだっていう気持ちは大事なんですけど、それが悪い方向にいっていたんですよ。いまならミスしても取り返せる、という気持ちがあるので。オフェンスでダメでも、ディフェンスで取り返そうというような。それがいい雰囲気になっていると思います」
――選手層が厚くなったことも大きいのではないですか
「ほんとにそれはあると思います。自分なんか、そんな長く出られる選手じゃないので(苦笑)自分がミスしても同じポジションのやつはいますし、そのときで調子のいいやつが出ればチームとしては成立しますからね」
――とはいえ、森山さんも調子を上げています
「そうですね、ほんとに余裕ができたのが大きいですね。3年生までは全部一生懸命やって、全部に力が入っていたんですけど、そういうのがなくなったので。それが自分の選択を広めていますね。これは4年生にならないとわからないんじゃないんですかね。下級生に持てと言ってもなかなか難しいと思いますし」
――4年生になったからこそ感じることも多いと思いますが
「全然違ったバスケットが見えてきました。ずっと一生懸命やってたのが、4年生になって良くなってきたんだと思うんです。自分を追い込んで追い込んで追い込んでやってきたのがその反動で自由にやろうという気持ちからいろんな発想が生まれたり。こんなふうにも見えるんだ、こうすればこうなるじゃんというふうにイメージが湧いてくるというか、やっと4年生になって分かってきました」
――4年生になってやっと成果が出てきたんですね
「自分でもなんでなんだろうと思いますし、なんであんなに焦ってやってたんだろうと。もっとゆっくりやれば、もっと自分に生かせる部分に気付いたんじゃないかと思います」
――個人とは異なると思いますが、チームとしてのインカレでの目標は
「自分たちらしさっていうほどの力はまだないと思いますけど、自分たちの力を出せるように、一番大事なのはコミュニケーションだと思っているので。不利な状態になっても修正できるような力もついてきたので自信持ってやるだけですね」
――数字として、1位ということで
「そうですね。それは間違いないです」
――ありがとうございました
明日のインカレは、代々木第二体育館で15時トスアップです。
明日の試合前には、瓦版をアップします。お楽しみに。
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