
「チーム明治」の強さを見せつけ単複制覇/全日本大学総合選手権大会(個人の部)
シングルス決勝では、相手が打ったボールが台に入らず、丹羽の優勝が決まった。緊張からの解放からか笑みがこぼれ、観客席で見守るチームメイト、そして両親の声援にこぶしを高く突き上げて応えた。ハードスケジュールな海外遠征から、数日前に日本に帰国。「時差で少し体が重く感じられた」(丹羽)と万全の状態ではなかったものの、大会を通して圧倒的な技術力の高さを見せつけた。自身もヤマ場だったと語ったのは準決勝の吉田(愛知工大)との一戦。第1セットを16―14で制すると、第2セット以降もジュースの接戦となるが、着実に得点を重ね4―0のストレートで勝利した。また女子は姉の美里(淑徳大)が優勝したため、姉弟そろっての全日学制覇となった。「明大が単複どっちも勝てたことと、両親の前でお姉ちゃんと優勝して、それを見せられたことがうれしい」(丹羽)と笑顔をのぞかせた。
ダブルスは平野・有延組が決勝での同士討ちを制した。4回戦で昨年度優勝の森本・吉村組(愛知工大)をストレートで破ると「流れに乗ることができた」(平野)とその勢いはとどまるところを知らなかった。決勝で当たった丹羽・町飛鳥(商1=青森山田)組とは実力は互角。第1セットは15―13とジュースの末、平野・有延組が先取するが、第2セットは有延のサーブミスから一気に逆転される。続く第3、4セットも互いに取り合いとなったが、最後は「思い切ってやるだけだった」(平野)と平野・有延組に軍配が上がった。
岡田はランク決定戦で大島(早大)をフルセットの末に下すと、勢いそのままに鹿屋(法大)も破り、ベスト4。準決勝では第3セットまで11―13、10―12、9―11と接戦を繰り広げるが、あと一歩届かず相手に王手をかけられる。ここから追い上げたいところであったが、第4セット6―6と同点の場面で「我慢することができなかった」とミスが続き、セットカウント0―4で敗戦。「決勝で丹羽とやりたかった」と叶わなかった決勝での対決に悔しさをにじませた。
単複ともに明大が制覇。一人一人がレベルの高さを見せ、明大の強さを全国に見せつけた。その背景には個人戦ながら「チーム明治」(田崎監督)としての精神が根付いていた。なお今大会の結果により、岡田、神、平野、松下海、有延は11月23、24日に日野市市民の森ふれあいホールで開催される全日本学生選抜選手権に出場する。
[板橋洋子]
試合後のコメント
田崎俊雄監督
「スタッフとしては2つ勝てたのがよかった。個人戦だけど、チーム明治でやろうといっていた。実力もあったけど、バックアップしようというチームとしての意識が勝因。丹羽については)レベルが高かったし、負けてもおかしくないと思っていた。本人も気を引き締めてやっていた。全日学に出ることは自分で選んだ。大学生の試合だってやらなきゃいけないこと。ハードスケジュールでも、言い訳はしないで、意識を高く持っていた。勝とうと思わないと、この大会は勝てない。ひょうひょうとしてるけど、話してみると自分の意見を持っている。メンバーにも溶け込んでるし、仲間がいることは大きい。吉村くんだったり、みんな色んな技術は持っている。相手の弱点を見抜いて、どう攻めるか選択できることが他の選手との差かな。あとは相手がついてこれないようなテンポの速い卓球。(ドイツでの生活は)一人で遠征に行ったり、一人でやらなきゃいけないことが多くて、たくましさが身に付く。丹羽がいるところは日本人選手も結構行ってるかな。クラブでの練習と試合が中心」
川口コーチ
「(丹羽は)試合の入り方とか、準備の部分で意識高くやっていた。技術は抜群にあるから、それをどう引き出すかが大事だったと思う。上手く入れて、いい状態で臨めていた。6月のインカレでは相手の勢いに圧倒されてしまったけれど、今回はスタートダッシュから良かった。海外生活がメインなのは高校からだから、そんなに変化はないと思う。ハードなスケジュールの中でも一つ一つの大会で優勝したいという思いを持っている。今回プレッシャーはあったと思う。インカレで負けた吉村とかも出ていてレベルが高いし、全日本チャンピオンとして臨むというプレッシャーも感じていたのではないか。明大から多くのランク入り選手が出たのは一番の収穫。日頃から意識も高く練習していて他大より評価できるし、日頃の行いが結果に結び付いた。岡田、神、有延なんかは厳しい戦いもものにしたし、今後にも期待できる。これからまたさらに1ランク上を目指していく」
好成績にも表情を引き締めた岡田
「(今大会は)プレーとしては、いつもより相手より前で打てた。そういった技術面に関しては思ったようにできた。しかし準決勝で1、2本取らなくてはならないところでミスしたりと我慢することができなかった。(ベスト4だが)取れたのはよかったが、悔しい思いもある。決勝で丹羽とやりたかった。もう少し上に行きたかった。(前大会と比べて)ベスト4に1年3人残るなど、新しい戦力の台頭が目立った。若い力が育ってる。そういった選手は思いきったプレーをするので今後脅威になる。また自分に関してはこれまでと比べ追い込まれた場面で固くならず踏ん張れた。一本、一本取ればいいという気持ちで冷静にプレーできた。(全日本では)強くなってる自分をアピールしたい」
手応えを感じ、冷静に今後も見据える神
「シングルスはいいところまできたな、というのが率直な気持ち。対戦したかった吉村とやって勝てたのが大きい。ただ、相性が悪い高校の後輩の吉田に競って負けてしまったのは悔しい。あれは勝たなければいけなかった。1年のときは水谷さんや松平健二さんの海外組は出場していなかったから優勝できたのもあった。今年は丹羽や吉村、吉田の海外組が出場している。そういうレベルの高い中で内容のいい卓球ができたところは評価したい。守備も自分の持ち味である攻めも上手くなっているし、精神的にも強くなれている。1年のときは勢いで勝っていた。今年は調子もそこまで良くはない中でよくやれた。成長した部分だと思う。ダブルスは海輝(松下)と組むのは関東学生に続き2回目。ベスト4に入りたかった。結果だけ見たら満足はできないが、次につながる大会になった。今大会は第一シードが負けたり友樹(平野)が負けたり波乱が多かった。次は自分がやられないようにしたい。ポーランドでのワールドツアーは21歳以下の部で準優勝した。世界でも安定して勝てるようになってきている。この調子で選抜でも頑張りたい」
手放しには優勝を喜べなかった平野
「ダブルスでの優勝はうれししかった。決勝は明大同士の対決だったが、思いきってやるだけだった。有延とのペアは何も問題なかった。いつも通りできた。第1シードの吉村・森本組を倒したところがターニングポイントでそこから一気に流れに乗ることができた。技術どうこうというよりかは流れで勝った。できすぎな部分もあるけど本当にうれしい。シングルスは試合の途中で去年負けたことを思い出してしまい全然だめだった。緊張しすぎていたのもある。勝つ自信はあったけど勝ちたいという気持ちよりも負けられない、負けたくないという気持ちが強く出てしまった。反省すべき点は多い。選抜は地元枠で出ることができるので失うものは何もないという気持ちで結果を出したい。開き直って思いきってやるだけ。心も技術もまだまだ成長しなければいけない」
新たな課題にも真摯に向き合う松下海
「(今大会は)満足の行くプレーはあまりできなかった。具体的には4セット先取制で試合時間が長くなった分、最後の最後で体力が無くなってしまった。動き、集中力、判断力が終盤まで持たなかった。結果としてはベスト16だが、もっと上に行けたと思う。(前回大会と比べ)レベルが上がった分苦しい試合が多かった。メンタル面に関しても弱気な部分が出てしまった。(今大会での課題)連打を打てるようにすること。また台上での技術も上げる必要がある。(来年は)表彰台目指したい。(今後)全日本が控えてる。前回はベスト32に入ることができた。そのときは実力以上の力を出せた。今回もそのような力を出せるよう全力を尽くし、表彰台目指したい」
単複の好成績に顔をほころばせた有延
「シングルスでは練習では勝つこともあったので、思い切ってやろうと思った。サービス、レシーブが試合で使える状態じゃなかったのが敗因。森本さんには前に負けてた。1セット目取れたのが大きかった。それでのびのびできた。ダブルスは満足している。友樹さんとは組みやすかったし自信があった。森本・吉村組に3―0で勝てたのがよかった。2人とも気持ちを高めて試合に臨めた。友樹さんが台上がしっかりしてるので、崩してくれて僕が打てた」
今後の目標も力強く語った坪金衛(文1=野田学園)
「全国の強さを改めて知った。今大会は全員が勝ちたいと思ってて雰囲気が張りつめていて、ピリピリしていた。緊張した。ダブルスはもともとランク入りを目標にしていて、ベスト8に入れたのでうれしい。組んでまだ半年だし、一本一本全力で声を出していけたのが良かった。(準々決勝の丹羽、町は)全てが上だったからぶつかっていく気持ちで臨んだ。シングルスでは、試合になるとレシーブのミスが多くなってしまう。安定感のあるプレーができるようにミスを減らしていきたい。ダブルスはランク入りして来年も出られるのでベスト4を狙っていく。シングルスでもランク入りしたい」
自身の優勝に笑顔を見せた丹羽
「自分の優勝はうれしいですけど、両親の前でお姉ちゃんも優勝して、それ見せられたことと、明治が単複どっちもかてたことがうれしい。レベルの高さを実感した。シード選手も早いラウンドで負けていた。自分の調子がよくても、負ける可能性もあった。学生大会だと独特な雰囲気あるし、前半は少し競っていた。最終日は問題なかったが、時差で少し体が重く感じたり、万全とはいかなかった。ヤマ場は準決勝の吉田選手ですかね。僕と同じブンデスリーガで腕を磨いていますし、青森山田で一緒なので、僕のこともよく知っている。勝因は出だしをきちんと取れたこと。4ー0ですけど、内容的には競っていた。ドイツでもみんなと変わった練習をしているわけではない。試合感覚が良くなってきたことは感じる。勝負どころで得点できたり、プレーよりはメンタルの方が良くなった。小学校の時から、卓球が早いとは言われているし、何かやっているわけではない。プレースタイルは完成されているので変える必要はない。全日本では単複連覇を狙っていく。明治にいる間は勝ちたいですね」
思うような成績を残せず悔しさをにじませた町
「ダブルスは2位で、シングルスは3回戦敗退で、悔いの残る結果だった。ダブルスは決勝で勝ちきれなかったのが悔しい。準々決勝でも同士討ちだったけれど、実力的にもこっちが上だったし自信はあった。決勝では練習量で差が出たと思う。実力は互角だったけれど、あっちに勢いがあった。シングルスは負けた瞬間はショックだった。相手がラリーに強くて、それに付き合ってしまった。相手と同じテンポに合わせてしまった。相手の嫌なところに打って、厳しいコースを狙ったりしたら勝ててたかもしれない。冷静に試合メリハリをつけて、強打するところと、つなぐところと、使い分けができれば良かった。今回、レベルが高い大会の中で明大が活躍して、ダブルスでは4ペアがベスト8だし、シングルスでランク入りもしていて、チーム明治として良かった。これからは基礎を見つめ直す。また1からスタートする。両親には励まされました」
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