悔い残るも、収穫多き試合に/講道館杯全日本体重別選手権
[1日目]
2回戦から登場した六郷は初戦から厳しい戦いとなった。序盤に場外際で有効を取られ、ポイントで劣勢になってしまう。しかし、「とにかく攻めようと思った」と大内刈りや大外刈りで攻め続け、指導2つで有効を奪い返す。その後も、自分の柔道を貫き通し残りわずか数秒のところで技ありを奪い逆転勝ち。見事3回戦に駒を進めた。3回戦では、「組み手の遅さ、甘さがでてしまった」(猿渡琢海監督)と課題の組み手で苦しんだ。激しい組み手争いをするも、試合の中盤で技ありを取られてしまう。何とか反撃したかったが、最後は相手の内股をさばき切れずに一本負け。3回戦で姿を消した。
4年間の集大成を見せた。菅原の初戦の相手は今年の警察王者。苦戦が予想されたが「研究した」(菅原)と相手に対応した。相手の釣手はしっかり潰し、技もひらりとかわす。スキを突いた大内刈で有効を奪い優勢勝ち。警察王者から金星を挙げる。快進撃の様子を見せたが、2回戦の相手は4回目の対戦となる下和田(日体大)だった。「(下和田は)苦手なタイプ」(猿渡監督)と話す通り過去3回は1勝2敗。大舞台での緊張もあったのに加え「(相手が)1枚上手だった」(猿渡監督)と、開始25秒に大外刈で一本負けを喫した。全日本学生の同じ相手に同じような敗戦となってしまった。
「絶対に勝てる試合だった」(兒玉)。全日本学生3位という実力を引っ提げて挑んだ兒玉。試合序盤から試合を支配し、大外刈で技有のポイントを得てリードする。しかし「技を受け過ぎてしまった」(兒玉)と一瞬のスキから相手に大外刈を食らい、こらえ切れず一本負け。勝利への道が見えていただけに悔しい敗戦となった。
社会人の強さも味わうことになった。90㎏級で出場した高橋昂は「力の差があった」(高橋昂)と序盤から組み手でいいところを持てず、受けに回らざるを得ない展開となった。「逃げてしまった」(高橋昂)と指導を受けてさらに小外刈で有効を取られる。得意の背負い投もしっかりと入ることができず、後半にもう一つ指導が入り優勢負け。何もできなかった。
「いいところなし」(猿渡監督)と監督が酷評だったのは上田だ。1回戦の相手は両襟を持ちつつ奥も取ってくる変則的な組み手で「いいところを持たせてくれなかった」(上田)と苦しめられた。それでも「思いっ切りやろうと思っていた」(上田)と、技に果敢に入ろうとする。しかし組み手が不十分。「自分の持ち味を出せなかった」(上田)と判定勝ちしたものの満足には程遠いものであった。2回戦も組み手のつらい試合となった。相手との体格差もあってしっかりとした姿勢を保てず、指導2つで優勢負けを喫した。
3回戦までに全ての選手が姿を消した明大。この悔しさをバネにさらなる進化が期待される。学生最後の試合となった4年生だが、社会人の世界でも柔道を続け「まだ上を目指していきたい」(兒玉)と飛躍を誓った。来年は中心としてチームを率いる六郷も「ケガが痛くてあまり練習ができていなかった」(六郷)とケガの影響がまだ残っていた今大会。ケガを早く治し、練習していけばこれからの大会での好成績が期待できる。上田は4年生が抜けた後の重量級で主力としての活躍が期待される。「ポイントゲッターに育てたい」(猿渡監督)と監督の期待に応え、今年よりレベルアップしたチームを来年見せてくれることに期待したい。
[毛利允信・四ッ谷健太]
試合後のコメント
猿渡監督
「4年生はお疲れさま。3人出て菅原は2回戦まで行ったけど全日本で負けた時と同じ。3人とも柔道は続けていくから、菅原・兒玉は負けた原因を見直して社会人として取り組みなさいと伝えた。あと3カ月ちょっとある。4年間と俺から1年学んだことを後輩に伝えていくことと、その中でまた自分の中で復習していきなさいと伝えた。(上田について)今日の試合いいところなし。攻めの遅さ、組み手の遅さ。原沢(日大)戦は手数と技数で負けた試合。原沢は全日本で優勝した奴だが、(手数・技数があれば)どうにか戦える試合内容だった。4年生がいなくなったら重量級がいなくなる。僕としては上田をポイントゲッターに育てたい。(菅原について)組み手を重点的に対策した。伝えるのは難しいが、組み手争いの中でいかに自分の組み手を持つか。それをどれだけ徹底していけるか。気持ちというより技術。下和田(日体大)の方が1枚上手だった。全日本で優勝したことで自信が付いていた。東京学生で菅原に負けたことも関係しているのではないか。(菅原は)勝った時のいいイメージを引きずり過ぎている。いいイメージを持ちつつ新しいことをやっていかないと下和田に勝つことはできない。(1回戦は)相四つで力勝負だった。気持ちで負けないこと。負けたくないという気持ち。(相手は菅原にとって)苦手じゃないタイプだった。下和田は苦手なタイプ。今は自分のステージで戦えれば力を発揮することができる。(六郷について)最初はいつも通り(動きが)硬くて、相手に先取されてしまった。去年までだったらそのままで負けていたと思う。だけど、そこから追い付いて最終的に技ありで勝てたのがあいつの成長だと思う。気持ちで負けていなかった。きつい練習をしてきてあいつの進歩が見れる試合だった。3回戦は、組み手の遅さ、甘さがでてしまった。相手が内股が得意なのは分かっていたので、注意しろと言っていた。途中まではさばけていたが、一つのミスが負けにつながってしまったと思う。目標は一つ勝つことだった。優勝を目指してとか言うよりも、一戦一戦自分を出し切ることを目標にやらせた。調子はだんだん上がってきていると思う。今日は良いところもあったし、悪いところもあったからきちんと復習して来年につなげていけばもっと成績が上がると思う」
菅原主将
「悔しい。(1回戦は)相手が警察チャンピオンだったので研究してきたので、勝てて良かった。(具体的には)瞬発力が高いとのことで、技の避け方とか、担ぎがあると聞いていたので、それを防ぐ組み方など。(2回戦は)4回目で3回負けた。対策はしていたが、大舞台の緊張で飛んでいた。実業団でも続けるので、家に帰ってすぐ復習して、悔しさをバネにこれからも頑張りたい」
高橋昂
「自分の得意なところを持てなかった。逃げてしまった。(背負投は)ちょっと逃げている感じに入ったのでかからなかった。力の差で有効を取られ、指導も2つ。力の差があった」
兒玉
「勝っていたのに負けて残念。絶対に勝てる試合だった。(敗因は)調子が良いと思ってしまって技を受け過ぎてしまった。(最後の試合となったが)明治に入って良かった。柔道は続けると思う。就職先はまだ決まっていないが、明治の卒業生として講道館杯で勝ちたい。まだ上を目指していきたい」
六郷

劣勢から逆転勝利を収めた六郷
「(2回戦について)後半はわりと自分の柔道ができたかなと思う。ポイントを取られてからは、まず追い付こうと思った。指導2つでも有効は有効なので、とにかく攻めようと思った。(3回戦について)相手のペースにさせないようにやろうと思ったが、内股をまたいでしまう癖がでて負けてしまった。自分の柔道をすることはできなかった。組み手が全然できてなくて、組み勝つことができなかった。ここまでケガが痛くてあまり練習ができていなかったのでまた一から頑張る。来年はレギュラーもレギュラー以外も全員が頂点目指していけるようなチームにしていきたい」
上田
「格上だったのでまだ自分はジュニアなので思い切りやろうと思っていたが、いいところを持たせてくれなくて、自分の持ち味を出せなかった。力が出し切れなかった。課題が分かった。シニアの大会で結果を残してシニアの強化に上がれるように頑張っていきたい」
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