(4)DL・LB・DB編

 第4回の今回は守備陣のDL・LB・DBの3ポジションについて特集する。「強豪と対戦するときはロースコアゲームになる。守備が機能するかは生命線」(岩崎恭之監督)との言葉通り、守備は攻撃以上に勝利に欠かせない。今季の注目は最前線で守備を引っ張るDL#99長谷川周平主将(商4=桐蔭学園)とDL#10石渡怜雄(商4=法政二)。長い故障から復帰したLB#8小林輝明(営4=明大中野)、そしてDB#19諏訪部大地(法4=法政二)の4人だ。

 他の球技で守備と聞くと“地味”や“堅実”などの言葉を連想しがちだ。しかし、アメリカンフットボールにおいては試合の流れを瞬時に変える華やかさと、格闘技のような激しさがある。観戦の際は、守備という言葉の先入観を捨ててもらいたい。

DL(ディフェンスライン)…スクリメージライン上にセットする選手の総称で、フォーメーションにより異なるものの4人前後で構成される。OLのブロックを破ってQBにプレッシャーを与え続ける事が主な仕事である。内側に位置するDT(ディフェンスタックル)、外側に位置するDE(ディフェンスエンド)から構成される。
LB(ラインバッカー)…DLの後ろに位置して通常3~4人で構成される。守備陣全体のちょうど真ん中に位置するポジションであるため、ディフェンスの司令塔的なポジションとも言える。相手の攻撃に対し、どのように守るかの指示(プレーコール)を出す。
DB(ディフェンスバック)…LBの後方に位置するポジションで、一般的に4人で構成される。相手のパス攻撃によるロングゲインを阻止することが主な役割であるが、それ以外にも止めきれなかったラン攻撃を止める役割をも担っている。相手WRと1対1でマッチアップするCB(コーナーバック)、守備陣最後方で陣地を守るSF(セーフィティ)から構成される。

チームが第一、扇の要 長谷川周平
 「とにかくいいやつ。物腰がやさしい」(石渡)という長谷川主将。練習中に声を荒げることは少ない。
 名門・桐蔭学園ラグビー部出身で、一般入部ながら1年次から試合に出場。2年次からはスターターを務めてきた。「先輩や同期の石渡から教わりながら何とかやってきた」(長谷川)。印象に残る試合については「負けた試合全部」と語った。

 日大について「昨年戦って力的に勝てない相手ではないと感じた。今年も本当にそうで、今までやってきたことを出せるかどうかにかかっている。徹底してたたきつぶしたい」。守備が0点で抑えればどんなに強い相手でも活路は見出せる。最高の形で攻撃にバトンを渡したい。

剛柔自在の守備ライン 石渡怜雄
 今年はじめの取材時「先輩たちが早大を倒してくれたので、もはや自分たちが(先輩達の代が負けた)日大に勝つことは至上命題」と強い口調で語った。試合中はベンチからチームを鼓舞するように声を出し続ける。「自分たちが下級生だったころ、先輩たちが盛り上げて伸び伸びやらせてくれた。だから自分たちもとにかく後輩に伸び伸びやらせたい」

 1年次の法大戦、法政二高出身ということもあり打倒法大に燃えていたが、最初のシリーズでTDを取られベンチは沈みかけていた。しかし、4年生が中心となってベンチを盛り上げもう一度チームは息を吹き返した。結局その試合には負けてしまったものの「4年生が自分たちで試合を盛り上げなければ始まらない」(石渡)ということを学んだ。

 
 「最後はスキルなどではなく気持ちの問題」と石渡は常々口にしてきた。チームメイトをして「日本一にかける思いはチーム1」(諏訪部)と言わしめる。誰よりもその気持ちは強い。日本一へまずは日大を撃破したい。

復活誓う野生児 小林輝明
 プレーは本能のおもむくまま――チームメイトから彼はこう評される。自らを省みない攻撃的なタックル、リーグダントツトップの長髪はヘルメットに収まり切らない。「何で今の攻撃に反応できたの?というプレーが結構ある。聞くと『何となく来る方向が分かった』という答えが返ってくる」(石渡)とフィールドでは勘の鋭さも発揮する。まさに“野生児”だ。

 しかし、ここまでは決して順風満帆ではなかった。一般入部で明大グリフィンズの門をたたくが、1年次は高校生の時に前十字靭帯を切断した影響で試合経験はなし。2年次に復帰も、ブランクは大きく出番はあまりなかった。3年次は脚の故障で満足いくシーズンを送れなかった。それでも「死に物狂いで追いついてやる」。気持ちは前向きだった。

 「高橋さん(高橋輝前主将)を少しでも安心させたい」。小林の原動力はそこにあった。2年次の復帰直後の練習試合で、まずいプレーをして落ち込んでいるときに高橋氏に相談した。その日から全体ミーティング後、夜中まで試合のビデオを見ながら動き方を教わった。「感謝という言葉じゃ表わせないくらいお世話になった」。今でも教わっている最中だという。

 「去年負けてるので、日大には勝ちたい。あと、ずっとケガばっかだったので後輩のLBの人とかにも迷惑掛けてきた。だからその分すこしでも役に立てるように。少しケガしてもものともせず最後までピッチに立っていたい」

守備陣最後の砦 諏訪部大地
 パスディフェンスは毎年課題であると言われてきた。特に今年は「DBの戦力ダウンは否めない」(岩崎恭之監督)という声があった。そんな中で、DB陣を引っ張ってきたのが諏訪部だ。ケガによってチームに貢献できない時もあった。だからこそ「自分が最前線でどれだけ泥臭く、明治らしいフットボールができるのかを後輩に見せたい」

 印象的だったのは一年次の法大戦。「今たまにビデオ見ても思うが、うちの攻撃・守備ともにかなりのメンバーがそろってたのに負けたから。あのメンバーがそろってても負けるのなら、自分たちは何をすればいいのかっていうのを考えさせられた試合だった」

 ここまでチーム最多タイの2インターセプトを記録している。日大戦でも躍動できるか。