有村がリベンジを果たす区間賞、チームもシード権確保/全日本大学駅伝

2012.11.05
 出雲惨敗のリベンジを果たした。3大駅伝の第2章である全日本大学駅伝が4日に開催された。有村優樹(商2=鹿児島実)が5区で自身初の区間賞を獲得し、チームは総合5位。6位までに与えられる来年のシード権を確保し伊勢路を締めくくった。

 悔しさは伊勢路で爆発した。「中継所のラインに立っても不安はあった」と振り返る有村。よみがえるのは先月の出雲駅伝1区での大ブレーキだった。区間最下位の大失態でチームは総合11位。何としてもリベンジしたい有村は7位で襷をもらうと序盤から区間新ペースで突っ込み、前を走る中大、山梨学大を捕らえた。終わってみれば自身初の大学駅伝区間賞。1秒差で区間記録を逃したものの、チームをシード圏内に押し上げ、出雲での1区区間最下位の借りをきっちりと返した。

 レースを組み立てたのは2年生だった。1区、2区を文元慧(政経2=洛南)と大六野秀畝(政経2=鹿児島城西)の2年生コンビがそれぞれ区間5位で走り、順調なスタートを見せた明大。だが、3区では今シーズン初の公式レースとなった北魁道(商3=世羅)が不発の区間8位。唯一の1年生木村慎(商1=浜松日体)も、準エース級の選手が集まった4区で健闘したものの、順位を2つ下げた。有村が5位に押し上げた襷はそのままの順位で最終8区へ。アンカーを務めた大江啓貴(政経4=須磨学園)は、唯一の4年生。後輩たちがつなげた順位をそのまま死守し、5位でゴールした。

 結果的にシード権は確保したものの、三大駅伝優勝を狙うチームとしては決して喜べる順位ではない。ただ、新勢力の台頭と層の厚さは今の明大の強さである。今回つなぎ区間を走った6区の松井智靖(営2=世羅)と7区の山田速人(商2=西脇工)がその象徴だ。ハーフマラソンを得意とする松井は、初の大学駅伝で区間4位とロードの適性をアピールした。また、昨年は寮のテレビでチームの応援をしていたという山田も、今シーズンに入ってから頭角を現した選手の1人。出雲に続き、連続での起用となったが「もっと力を付けないと使ってもらえない」と貪欲な姿勢を見せた。今回はメンバー入りしなかった八木沢元樹(商2=那須拓陽)や前野貴行(農2=須磨学園)も含め、現2年生は特に強力な布陣がそろう。10人で襷をつなぐ箱根駅伝ではこの層の厚さが武器になってくるだろう。

 「今のチームは明大史上最強」と西駅伝監督をうならせる今シーズン。64年ぶりの箱根路制覇へ向け、紫紺の襷は確実に軌道修正をした。大砲頼りのチームから全員駅伝へ。新生明治からまだまだ目が離せない。

[奥村佑史]

レース後のコメント
遠藤和生監督

「順番は定位置から脱却できたと言える。大砲はいないけど、まんべんなく力を発揮できたと思う。総体的に見れば箱根に向けて良いステップを踏めたんじゃないかな」

西弘美駅伝監督
「うーんまあまあ。区間2ケタはいなかったけど、3、4、7区あたりはいまいちだったかな。(シード権獲得は)まず一つ。一段落だけど、これで安心じゃなくやっぱり次に向けて。一つ一つ修復しながら、また箱根に向けてというところ。最終目標は箱根なので。1区文元から良い流れで行けたけど、木村が4区に行くようじゃ駄目。木村に期待しているのもあるけど、本来なら北あたりが走らないと。9.5kmで北は快走しなきゃいけない。今まではアンカーで良くないというのがあったので、大江で手堅くいくというのは考えにあった。区間7位だったけど59分36なら良い方。次の上りには良い練習になったんじゃないかな。(有村の区間賞は)出雲から4週間で、立て直して。変なこと意識せずに開き直れということだったけど、彼はそれがきちんとできたということ。(上位3校の結果については)あそこに食い込まなきゃいけないんだけど、まだそこまでの地力がない。出雲からは持ち直してきているけど。シード権とったことでまずは一段落。だけど、これで満足してはいけない。今は箱根の結果を求めていかないといけないところだから。(下級生を多く起用することに不安は)まったくない。そんなことを言っていたら何もできない。若い子をどんどん使って、どういう結果を残すか」

山本豪コーチ
「シードが取れて良かった。まず、1、2区の文元、大六野のすべり出しが良く、流れをつかんだ。良い位置でレースができた。3、4区で流れが途切れるかと思ったが、5区の有村の走りで流れを引き戻した。(有村は出雲から挽回したが)これで油断するタイプではない。調子に乗ったりすることはなく、これからもっと良いレースをしてくれるだろう。(シードを取れたことは)大きい。6月の予選会に、出るかどうかで来年の練習の仕方はずいぶん違ってくる。メンバー争いも激しくなってきているが、今回もれた選手は、次は自分が走るんだという気持ちで取り組んでほしい」

1区文元
「区間賞を狙っていたので、もう少し前で勝負がしたかった。でも現時点での力は出し切った。もうちょっと体が動けばと思う部分もあったが。(西監督からは)リラックスしていけという指示があった。具体的な順位などの指示はなかった。昨年は走れなかったが、今年は1区で出られた。1区は得意な区間で、長い距離は得意だと自分では思っている。今日は田口(東洋大)が5㌔で出てから、苦しくなった。体が重かった」

2区大六野
「エースの集まるところだったけど、リラックスすることができた。文元がいい流れで来て、『勝負していけ』とも西監督から言われていたし、前も見えていて。自分では100%の走りではないけど悪くもなく。もう少し戦えたらなと思った。出雲で惨敗したけど、ここでちゃんとシード権が取れて良かった。流れをつくらないといけない中で最低限の走りは出来た。少しずつ自分の力を出し切れるようなそんなチームになりつつある。個人としては、チームの主力になってきて、役割を果たさないといけないと思ってる。エースにならないといけないとは言われる。自信はないけど、ならなくちゃいけないと思っている」

3区北
「シードが取れて良かった。自分はつないだだけの走りになってしまった。チームに求められている走りができなかった。(西駅伝監督からは)前に駒澤、東洋あたりがいるだろうから、落ち着いていけという指示を受けた。(2年前と同じ区間を走ったが)その時は前に駒澤の選手がいて、着いていけなかった。今回も前に早稲田がいたが、付けなかった。同じ展開で、同じ走り。1年時の反省を生かしきれなかった。(昨年走れなかったが)走れたのは素直にうれしい。ただ、走るからには上級生として結果を残すような走りがしたかった。今日は自分の弱い部分しか見せられなかった。2年前に比べて区間順位も悪いし、タイムも恐らく悪い。調整はできていたが、合わせすぎてしまった。体が軽すぎた」

4区木村
「走る前は、区間5位以内になるように走りたかったが、調子があまり良くなくて最後失速してしまって自分の持ち味を出すことができなかった。上り下りが結構あるコースだったので、リズム意識して、ピッチで上り切れれば良かったが、日体大が後ろから来た時に焦ってしまって、そのペースに対応することができなかった。今の実力は出し切ることができたが、調子を合わせていくことができなかったのが残念。今回の走りは60点。残りは、調子が上がらなかったこと、周りのエースの流れに対応できなかったこと。西監督からは、前に早稲田がいるから前を向いて着いていけと言われた。4区という自分の走ったことのないような距離の区間を任されたので、すごく緊張した。西監督の期待に応えられるようにしたいと思っていた。流れを読める選手になるには、やっぱりそれをできるための実力がないと。ここぞという時に、勝負に勝つことができないと、波に乗れない。今回の自分の走りは波に乗れなかった方。出雲より距離が長くなって、どんな感じになるかなと思っていた。出雲はきつくなっても距離が短い分粘れたが、全日本はきつくなっても長い距離がある。そこを調整しきれなかった。レースは毎回緊張する。でも、それはいい緊張。2戦目を走り終わって、だんだん明治の勝利パターンがわかってきた。昨年はテレビで見て、シード落ちはしたが今の2年を中心に出ていて、いいチームだな、来年は強くなると思っていた。夏合宿で経験のない長い距離を何回もやったことで、距離にも対応できるようになってきた。でも、今回の走りは微妙。エントリー唯一の1年生として、1年生らしい、ハツラツとした走りができればと思っていた。これからのレースも、ビビらないで、最初から突っ込んでいけたら。上級生も走ったが、引っ張ってくれる存在がいたことによって、今回まとまってシード権をとれたと思う。箱根は本当に走りたい。今回の教訓である、距離への対応能力を高めたい」

5区有村
「とりあえずほっとした。自分が襷をもらったときシード争いのラインにいたので、後ろの人たちに安心してもらおうと思って走り出した。正直今日、中継所のラインに立っても、不安はあった。それでも1年生の木村も14キロを苦しい思いで走ってきたので自分が逆転してやろうという気持ちになった。本当は日体大まで行きたかった。出雲のリベンジはできたと思う。周りからもしっかりやれば結果を残せると言われてきて、今回やっと証明できた。特に調子が良かったわけではないが、出雲では調子が良かったのに失敗した。その意味では経験的にプラスになった部分もあるし、まだまだ調子のコントロールができないことも分かった。記録を持っていても結果が悪いことはある。(出雲の失敗も)どう生かすかが大事だと思う。今回自分を使ってくれた西監督に感謝したい。つなぎ区間で自分にできる最低限の結果だと思う。今回の結果に満足してはいけない。箱根に向けてこの感覚を忘れないでやっていきたい」

6区松井
「前に選手がいて、抜いてやろうという強い気持ちで走っていたが、抜けなくて残念、悔しい。憧れていた駅伝だったし、思い入れはあった。リラックスして走ることができた。区間4位と言っても、3位の人と結構差があったので、まだまだ力は足りない。3分切るくらいでずっと押していくということを心がけて走った。まだ自分の力を出し切れた感じはない。点数つけるなら70点。もっと早いペースで押していける力をつけないと。西さんからは、自分のペースを守って落ち着いていけば絶対うまくいくから、と言われた。シード権については、最低目標がシード権だったからホッとしてる感じ。今回の3位までは3強が独占だが、箱根でぜひ3強を崩したい。もっと1人1人が力をつけて、層を厚くしていかないと。駅伝はチームで戦うので流れも必要。仲間が頑張ったら、自分もやってやるぞという気持ちになれる。今回、いい流れで襷をつなぐことはできた。出雲は、自分がスピードがあるタイプではないので、メンバーに入れればいい方だと思っていた。そんなに悔しいというのはなかった。でも、来年は走りたい。単独走に少し苦手があったが、今回よく走れたので良かった。単独で走るレースの機会が今まであまりなかったので、慣れがなかった。去年は走れなくてすごく悔しかった。でも、自分を鍛えるいい期間だと思って地道に頑張っていた。今回は上級生も走ったが、区間の中に先輩がいることでやっぱり心強いなと感じた。伊勢でしっかり走って、西さんにアピールしようという気持ちはあった。多少アピールできたのではないかと思う」

7区山田速
「日体大が10秒ちょっと前にいて、絶対に追い抜かす、と思っていたので抜かせなかったことはまだまだ弱いということ。前の6人の流れが良くて、襷をもらったときはやってやるぞ、という気持ちだった。西監督には『前にいる選手を追いかけて走れ』と言われていたのに出来なかった。自分の区間はつなぎ区間で、西監督からはつなぎ区間で稼げるようにと言われていたので区間5位という結果は全然だめだった。(今日の走りは)60点。40点はタイムが後半落ちてしまったこと。課題は山積みだと思う。去年は寮でテレビで(全日本を)見ていて、走りたいなと思った。走れてうれしかったが、結果は残せなかったので(3大駅伝)最後の箱根では頑張りたい。始めから行くって決めていたので突っ込んだ。自信を持っていたところでダメだったので始めから突っ込めるようにしたい。有村が5位に上げたので、やってやろうという気持ちになった。大江さんは同部屋で、少しでもいい位置で渡そうと思った。今回の結果だと西監督に使ってもらえない。もっと力をつけて西監督に信用されるようになりたい」

8区大江
「後半は落ちてしまったけど、最低限の走りはできたと思う。1km3分くらいのペースで59分越えくらいを見ていた。アンカーを走ることにプレッシャーは当然あったし、シード権争いしていたから、走る前は緊張していた。でも走り始めたら長い分楽しく走れた。7人の汗が染み込んでいて、こんなに重い襷は受けたことがなかった。シード権を取ったのはうれしいが、本当は3番以内くらいには入りたかった。自分としては渡会橋付近でペースを切り替えられればと思っていた。全体として1、2区がいい流れで来て、みんな経験もあまりない中で、それがいい方向につながった。経験の薄い中で結果を出せたのは自信にもつながると思う。4年生はケガとかでしっかり走れていない中で、今回1人走れたのは良かった。最低限の走りはできたと思う。箱根まで残り2カ月、4年生がしっかり走れたらいいなと思う」